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第2章 社燕秋鴻
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しおりを挟む僕の言葉に周りを睨むのは止めてくれたけど、納得いかないという顔をしながら尚も腕を掴んだまま足は止まらない。
「あのっ、どこに・・・っ」
「食堂だ。結永が待ってる」
「っ!!」
これだけ見られてて、でも見世物じゃないって静先輩は見られることを嫌がってるから、てっきり人の少ないところに行くものだとばかり思っていた。
だからちょうどさっきの講義室から近かったいつもの先輩たちに連れ込まれる建物と建物の間のデッドスペースに引っ張って連れ込む。
「ちょっ、おい、なにして・・・・・・」
「・・・・・・どうして、どうして静先輩は何も言わないんですか?」
「・・・なにを?」
「っ、僕が隠してたこと。Ω、の、くせに、今までそれを誰にも言ってこなかった、んですよ。おかしいでしょ!?」
こんなこと人のたくさんいる食堂なんかじゃ聞けない。
何て言われるか怖くて怖くて、顔も上げられず体中ガタガタ震えてるのに、聞かずには居られない。
静先輩にだけは言われたくないのに、静先輩にだけは言われなきゃいけない。
そんな矛盾を抱えたまま、今自分がどうしたいかも分からずにとにかく衝動にかられるまま口を開く。
「・・・何か、言ってよ・・・・・・」
「・・・・・・弥桜は、本当に何か言われたいのか?」
一呼吸置いて放たれた言葉に、ギリギリまで張り詰めていた心が崩れた。
本当の本当の本当は言われたいわけがない。
なんで早く言ってくれないんだ。
この気持ちを早く手放すために言われなきゃいけないってなけなしの覚悟をしてたのに、それすら失くなってしまった。
「っ!!」
答えられなくて静先輩の服をぎゅっと掴んでやっぱり顔を上げられない僕を、彼は何も言わずにそっと抱きしめてくれた。
この数時間だけで弱りきった心が静先輩の温もりに触れて、その優しさが、温かさがじわりと滲んでいく。
「大丈夫」
とどめとばかりに落とされた言葉に、どうしようもなく暴れ回るこの気持ちが、涙となって静かに溢れ出して止まらなかった。
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