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第5章 落穽下石
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しおりを挟む結局あの後、こんなの持ってても気分良くないだろ、と手紙は静先輩が持っていってしまった。
ついでに、次からは何かあったらちゃんと俺にも話せと口すっぱく言われたが、わかったと口では言いながらも今でさえどうしても言えないことが何個かあることに、心の中でごめんなさいと謝った。
そしてこの脅迫状の送り主については、静先輩と結永先輩がなんとかしてくれる、ということになった。
まあ送り主も分かりきっているし、静先輩の問題でもあるからと言われて反論出来なかったのもあるけど。
こんな状態で自分に何かが出来るとも思わなかったから、今回は素直にお願いすることにした。
ただ、こんなものが届くぐらいに何があるか分からないから、絶対に一人で家を出ないこと、自分の身を守ることだけはしっかりやってくれと言われた。
それから結永先輩は発情期明けで何があるかわかったものじゃないこの部屋に、長居する理由もなくなって早々に帰っていった。
もちろんそれは静先輩も同じで、僕がだいぶ落ち着いているから一旦帰るということになった。
一人でどうしようも出来ないほどひどい症状だったから、何かあったら困ると付き合ってくれたが、元々僕が静先輩と関係を持つことを避けていることを知っているから、一人でどうにかなるうちは距離を取ってくれるということだった。
僕に対して出会った時からずっと気持ちを向けてきてくれて、告白されたあの女性も断って、発情期にも付き合ってくれて。
静先輩からしたらきっと、早く番になって自分のものにしてしまった方が安心だと思う。
それでも、僕の気持ちを考えてうまい距離を保ってくれている。
この自分の厄介な考え方と気持ちの折り合いをさっさと付けられればいいのだろうが、やっぱりそれにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
こんな状態の自分にまたずどんと気分が落ち込む。
自分が歪みきっている現実に打ちのめされて、なんだか体の調子まで悪くなりそうだった。
幸い、あれだけ抱かれたから発情期明けのように調子は良くなっていて明日からは大学に行こうと思っていたが、やはり時期としては本来だったらあと4日は発情期なわけで、静先輩と結永先輩によればまだ完全にフェロモンがなくなったわけじゃないらしいから、最低でもあと2日は家でおとなしくしているように言われた。
その間に体調も良くなってくれればいいけど。
それから2日。
発情期の状態を確認するためにさっき静先輩が来た以外に、特に何もなく大人しく家にいた。
元々用事もなければ、あったとしてもよっぽどのことじゃない限り一人で外出する気にはなれないから、困ることもなかったけど。
静先輩によれば、もうほとんど匂いはなくなっていて、期間的に本来ならあと2日家にこもっていなくてはいけないところだが、もう大丈夫だろうということだった。
こんなこといちいち人に聞くようなことじゃないんだろうけど、何分あんなにひどい症状も発情期中に抱かれたことも今まで一度もなかったから、イレギュラーすぎて自分の体がどうなっているのか自分じゃ判断のつけようがなかった。
これで何かあって他人に襲われるようなことでもあったら、今の自分じゃ耐えられるとは到底思えない。
なんで今まであんなことが出来ていたんだろう、と思うぐらい自分の中の気持ちが変わっていた。
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