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第5章 落穽下石
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しおりを挟む「・・・なんで? なんで? やっぱりこんなめんどくさいやつだから? いろんな人にあちこち触られてあんなことしてる汚いやつだから? ほんとは僕のことなんか嫌いなんでしょ」
自分で言ってて肯定されたらどうしようと、怖いのに口が止まらない。
めんどくさいやつだって、汚いやつだって、分かってる。
それでも求めずにはいられないんだ。
ここで静先輩に拒否されたら、もう僕は生きていけない。
「そんなわけあるか。俺の問題じゃないんだ、弥桜お前のためだから。もう少しな、その考え方が変わるまで待ってくれ。・・・・・・ほら、今日はもう薬飲んで寝ろ」
違うって言ってくれるのに、いいよとは言ってくれない。
僕のためとかなんとか言ってるけど、僕がして欲しいって言ってるのに、もうわけわかんない。
「やっぱり僕のことなんか嫌いなんだ」
「はいはいそんなことないから、ほら薬取りに行くから、ちょっと待ってろ」
そう言って僕をおいていこうとするから、離れてやるもんかとその首に縋りついた。
「弥桜、な。・・・・・・しょうがないな」
粘り勝ちで、結局僕を抱えたまま洗面所の救急箱まで薬を取りに行って飲ませてくれた。
抑制剤と風邪薬は一緒に飲めないから今日は抑制剤にして、明日から風邪薬にするって言ってた。
「どこにもいかないから。大人しく布団に入りな」
「・・・・・・ぅん」
もう体が熱くて辛くて、起きてられなくなってた。
静先輩の手を握ったまま眠った。
「・・・おう、弥桜‼︎ 落ち着け、大丈夫、大丈夫だから」
ひどい夢を見た。
静先輩がいなくなる夢。
知らない人に囲まれて、たくさん手が伸びてきて。
お前は汚いからいらないって、言われた。
怖くて怖くて、いっぱいいかないでって言った。
それでもおいていかれた。
「大丈夫。俺はずっとそばにいるよ」
それからも何回かうなされて、その度に静先輩が抱きしめてくれる。
それでなんとか少しは寝れたけど、結局熱は下がらなくて朝になっても38度ぐらいまでしか下がらなかった。
あんなことがあった後で、悪夢にも魘されて、もう静先輩に帰れなんて言えなかった。
静先輩がいるのが嫌なんてもう思えない。
今はひと時も離れられなかった。
「今日明日は大人しく休んでしっかり治せ」
先月風邪引いた時は静先輩会いたさに大学まで行ってたけど、今はずっと隣にいるし家から出る気にはなれない。
だから今日明日は最初から大人しく静先輩と家に引きこもることにした。
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