8 / 8
epilogue
しおりを挟む
「イライアス殿下、それは例の取り調べ報告書ですか」
「『当て馬ヒューと結婚したい』か。セドリックはこの話信じるか?」
エリソン領へ避暑に来ていた私は、夏休みも半ばでリアーナを連れて王都まで戻ることになった。ポロックの第三王子ルパート殿下がフラメル伯爵令嬢に出した求婚の手紙をリアーナが故意に破って捨て、ルパート殿下の求婚に支障をきたしていたというのだ。
しかも「フラメル嬢との誤解は解けて2人は無事婚約出来たが、ルパート殿下がフラメル嬢に近づく度に妨害していたリアーナ嬢と、そのリアーナ嬢を囲っている王太子殿下からしっかりとした説明が欲しい」と、ポロック国から正式に訴えられているらしい。
フラメル嬢が婚約したことにショックを受け泣くヒューバートと、泣いてるヒューバートを見てショックを受けているリアーナと一緒の馬車はまるで地獄のようだった。ヒューバートのことに構わず、リアーナへ手紙の件を聞き出そうとするも「あれは私宛の手紙だ」と埒があかない。そもそもリアーナ宛の手紙だとしても他国の王族からの手紙を破り捨てるなどしていい訳がない。
10歳の頃から王城に住むようになり仲良くなったエイミーに「小さい頃からリアーナに虐められていた」と言われ、簡単にそれを信じリアーナに辛くあたってしまった過去が私にはある。バンクス侯爵夫妻と折り合いの悪い前バンクス侯爵夫人と同じ赤髪赤目、それだけの理由で家族から疎外されかわいそうだと同情もしていた。
その2点だけで無条件でリアーナは純真無垢なのだと思い、リアーナの言う事を信じ込んでいたのだ。エイミーに嘘を吐かれていた時から成長していない自分が嫌になるな。
冤罪をかけられたから、かわいそうな生い立ちだから、それらは別に本人の人格を保証するものになり得ないのだと思い知る。
王城へ戻ったリアーナは尋問を受けるも、支離滅裂で埒があかず、自白剤を投与された。通常、重犯罪を犯した訳でもない貴族が強い副作用のある自白剤を飲むなどあり得ない。それでも投与が決まったのは、国民が熱望していたクライン麻疹の特効薬をもたらしたポロック国を怒らせていることと、リアーナがバンクス侯爵夫妻から見捨てられていたために強く止めるものがいなかったためだ。
自白剤の抜けたリアーナは、副作用により記憶障害を起こし幼児退行してしまったらしい。
「『ここは前世で読んだ物語の中で、自分はドアマットヒロインで、ヒーローのルパート王子と結婚するよりも当て馬ヒューと結婚したいからヒューと結婚する幼馴染からヒューを奪いたかっただけ』ですか。人は狂っていても案外普通に見えるのだなとびっくりしてます」
そう返すセドリックは、生まれ変わりや物語の中の世界だとは一切信じていないようだ。
私も信じてるわけではないのだが『ヒロインが隣国に行った後に先王が死んで、ヒロインの家族は王様に王城を追い出されて、侯爵家は没落して物語はお終い』という部分が引っかかっている。
口外していないが、病を患っている祖父上はもって数ヶ月と言われているし、祖父上が亡くなったら父上はあの叔母家族を追い出し没落させかねない位には腹に据えかねているからだ。
「どっちにしろ、ヒューバートを慰めないとな」
「あいつはかわいそうな女が性癖なのでしょう。現実の女にそれを求めるのは不毛です。かわいそうな女が出てくる小説でも紹介してみます」
------------------------------------
作者の近況ボードでリアーナのネタばらしをします。
所々で匂わせていたリアーナの悪事の答え合わせがしたい方はぜひ。
(匂わせの裏を想像する楽しみが無くなるので、自分で想像したい方や雰囲気を壊したくない方は読まない方がいいと思います)
「『当て馬ヒューと結婚したい』か。セドリックはこの話信じるか?」
エリソン領へ避暑に来ていた私は、夏休みも半ばでリアーナを連れて王都まで戻ることになった。ポロックの第三王子ルパート殿下がフラメル伯爵令嬢に出した求婚の手紙をリアーナが故意に破って捨て、ルパート殿下の求婚に支障をきたしていたというのだ。
しかも「フラメル嬢との誤解は解けて2人は無事婚約出来たが、ルパート殿下がフラメル嬢に近づく度に妨害していたリアーナ嬢と、そのリアーナ嬢を囲っている王太子殿下からしっかりとした説明が欲しい」と、ポロック国から正式に訴えられているらしい。
フラメル嬢が婚約したことにショックを受け泣くヒューバートと、泣いてるヒューバートを見てショックを受けているリアーナと一緒の馬車はまるで地獄のようだった。ヒューバートのことに構わず、リアーナへ手紙の件を聞き出そうとするも「あれは私宛の手紙だ」と埒があかない。そもそもリアーナ宛の手紙だとしても他国の王族からの手紙を破り捨てるなどしていい訳がない。
10歳の頃から王城に住むようになり仲良くなったエイミーに「小さい頃からリアーナに虐められていた」と言われ、簡単にそれを信じリアーナに辛くあたってしまった過去が私にはある。バンクス侯爵夫妻と折り合いの悪い前バンクス侯爵夫人と同じ赤髪赤目、それだけの理由で家族から疎外されかわいそうだと同情もしていた。
その2点だけで無条件でリアーナは純真無垢なのだと思い、リアーナの言う事を信じ込んでいたのだ。エイミーに嘘を吐かれていた時から成長していない自分が嫌になるな。
冤罪をかけられたから、かわいそうな生い立ちだから、それらは別に本人の人格を保証するものになり得ないのだと思い知る。
王城へ戻ったリアーナは尋問を受けるも、支離滅裂で埒があかず、自白剤を投与された。通常、重犯罪を犯した訳でもない貴族が強い副作用のある自白剤を飲むなどあり得ない。それでも投与が決まったのは、国民が熱望していたクライン麻疹の特効薬をもたらしたポロック国を怒らせていることと、リアーナがバンクス侯爵夫妻から見捨てられていたために強く止めるものがいなかったためだ。
自白剤の抜けたリアーナは、副作用により記憶障害を起こし幼児退行してしまったらしい。
「『ここは前世で読んだ物語の中で、自分はドアマットヒロインで、ヒーローのルパート王子と結婚するよりも当て馬ヒューと結婚したいからヒューと結婚する幼馴染からヒューを奪いたかっただけ』ですか。人は狂っていても案外普通に見えるのだなとびっくりしてます」
そう返すセドリックは、生まれ変わりや物語の中の世界だとは一切信じていないようだ。
私も信じてるわけではないのだが『ヒロインが隣国に行った後に先王が死んで、ヒロインの家族は王様に王城を追い出されて、侯爵家は没落して物語はお終い』という部分が引っかかっている。
口外していないが、病を患っている祖父上はもって数ヶ月と言われているし、祖父上が亡くなったら父上はあの叔母家族を追い出し没落させかねない位には腹に据えかねているからだ。
「どっちにしろ、ヒューバートを慰めないとな」
「あいつはかわいそうな女が性癖なのでしょう。現実の女にそれを求めるのは不毛です。かわいそうな女が出てくる小説でも紹介してみます」
------------------------------------
作者の近況ボードでリアーナのネタばらしをします。
所々で匂わせていたリアーナの悪事の答え合わせがしたい方はぜひ。
(匂わせの裏を想像する楽しみが無くなるので、自分で想像したい方や雰囲気を壊したくない方は読まない方がいいと思います)
145
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
王太子殿下と婚約しないために。
しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ベルーナは、地位と容姿には恵まれたが病弱で泣き虫な令嬢。
王太子殿下の婚約者候補になってはいるが、相応しくないと思われている。
なんとか辞退したいのに、王太子殿下が許してくれない。
王太子殿下の婚約者になんてなりたくないベルーナが候補から外れるために嘘をつくお話です。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いのだけど、他の読者の方が言ってるように、飲み物がコップ8分目のところを6分目しか入ってない物足りなさを感じました。
テンポはいいのだけれど、終わりはここまでしか書かないだって感じで、ヒューバードの反応もサラッと数行で終わらせてるのが残念です。主人公を苦しめただけに。
リアーナは、廃人になる可能性のある劇薬を使われたけれど、ヒューバードや王子達に庇って貰えなかったのかなと思いました。
ヒューバートは元の小説では、アイラからリアーナに心変りして、失恋したからアイラと結婚した。という解釈であってますか?
はい、そうです。
元の小説では、本当にかわいそうな薄幸美人だったリアーナだったので、ヒューバートはリアーナの方がアイラより好きでした。第三王子とリアーナを取り合う恋のバトルに敗れてアイラと結婚しました。
転生者のリアーナからは薄幸感がなくなってしまっているため、元祖薄幸少女のアイラが好きなままなのです。
薄幸感がする女ほど好きになる嫌な男です。
話が長ければ良いというものではないので難しいのですが、もう少し続きが読みたくなる作品だなと思いました。
良い意味でも後味が残るし、その後が気になってクセになる感じですかね…。
それが作者さんの個性でもあると思うので。
凄く好みの作品だったので感想を載せてしまいましたが、このお話も連載中のお話も、かなり楽しんで読んでいます。
返信までありがとうございます。
すごい褒め言葉ばかりで恐縮してます。
地の文で設定をどばっと説明してしまってるのも自覚してるので、なるべく読者の人に楽しんでもらえるように人物描写の中で設定を表せるようにがんばります!
連載の続きも楽しんでもらえたら幸いです。