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探索組と待機組
「ここはどこでしょうか」
私たちは今、見知らぬ浜辺にいます。
気温や日差しの角度から先ほどの船からそう遠い場所ではなさそうですが、そもそもあの陣紙は王城への転移の魔法陣だったはずなのに。なぜか失敗してしまったようです。
「皆、痛いところやおかしなところはないか。それと通信の魔道具などを持っていたら出して欲しい」
非常事態に戸惑っている私たちの中で、ハルトムート様が先導し一人一人の顔を見て安否を確かめてくれてます。さすがハルトムート様。頼りになります。
そんなハルトムート様に対してベティーナさんが甘えた声を出しました。
「ハル様、左手を捻ってしまったみたい」
「我慢出来ないほどに痛いか?」
「動かさなかったら大丈夫。それに痛くても我慢できるよ」
ベティーナさんが健気にも答えます。ベティーナさんは魔法陣の起動者ではなく連れ添いですので、起動者にはない負担があったのかもしれませんね。同じく連れ添い転移だった従者の方を確認すると私の手を見て顔を赤くしてます。私は繋いだまますっかり忘れていた手を慌てて離しました。
「そこの従者。私は君がカスパルと一緒に居るところを今まで見たことがなかったのだが、名はなんというのだ」
ハルトムート様が従者の方を鋭い目で睨み詰問します。彼には不愉快に感じるかもしれませんが、この非常事態、怪しいことは全て追求しないといけません。
「私はトラウゴット・クレムと申します。普段はカスパル様の弟君のアロイス様に付いてます。トット子爵夫人が私の叔母ということでこの旅だけカスパル様の従者に配置換えして頂きました」
「クレム男爵家の者か。たしかにトット子爵夫人はクレム男爵家出身だったな」
さすがハルトムート様。貴族末端の男爵の家名まで把握されてますし、視察先についても下調べ済みのようです。
「ハル殿下、トラウゴットは弟アロイスの従者で間違いありません」
「トラウは私の従兄弟だよ」
カスパル様とベティーナさんがトラウゴットさんの言葉に間違いがないと承認し身分が証明されました。トラウゴットさんはホッとした顔をしております。
「カスパルは顔色が良くなったな」
「はい、今は大丈夫ですが、船はこりごりです。もう二度と乗りません」
転移の陣紙が無い今、ここから王城に戻るにはもう一度船に乗るしかないと思います。普段は理知的で冗談などを嫌うカスパル様なのに、不合理な事を言ってしまうくらいには船酔いが辛かったようです。
「兄上、これは何かの陰謀かもしれない。あの陣紙、父上に手渡されたからと無闇に信用しないでちゃんと調べるんだったなぁ。起動して消えちゃったのが悔しいよ。誰かと手を繋いで転移してたら陣紙が余ったのに」
「あら、私は事前に魔法陣を読み込んで確かめたわよ」
「読み込んでいてもこの結果だったなら意味ないだろ」
「私の魔法陣の転移先は王城で間違いなかったし、おかしなところも見つけられなかったわ。私以外の陣紙が王城への転移を阻害するように作られていたのかもしれないし、それはちゃんと確かめてなかったエルヴィン様の分だったかもしれないわね」
エルヴィン殿下とアンネマリー様が言い争いを始めました。これが王宮の方々に“気安い仲”と濁されている2人の口喧嘩のようです。
あの陣紙についてですが、私も念のためにと読み込んでいたのでちゃんと伝えておきましょう。
「私も陣紙に書かれていた魔法陣を確認しましたが、私が分かる範囲で変な所はなかったと思います。移転先も王城でした」
「あぁ。私は父上が皆に渡す前の全員分の陣紙を確かめた。特に問題は無かったはずだ」
さすが、ハルトムート様。真面目で用心深くとても尊敬できます。
「兄上はいいなぁ。俺も可愛い婚約者にこんな風に尊敬の眼差しで見てもらいたいよ」
「可愛くなくて悪かったわね。私だってあなたが尊敬できるような人なら尊敬の眼差しの一つや二つするわよ!」
未来の義弟夫婦がまたもいがみ合います。少しは仲良くしてください。
「陣紙の発動の時、あの高い波と陣紙の魔法以外に魔法の気配は感じられなかったよ」
魔法師団長子息のクリストフ様が言うのですから間違いなさそうです。でも、そうなるとどうして王城へ転移出来なかったのかと謎が深まります。
「ここに魔法陣専用インクと紙さえあれば転移の陣紙を作れるのになぁ」
「クリス様は転移の陣紙を作れるの?すごぉ~い」
「勝手にクリスと呼ばないで。あと、僕がすごいことは僕自身が一番知ってるから」
優秀な魔法師でも何年も修行を積まないと取れないと言われている陣紙の作成免許。そんな陣紙を11歳ですでに作成出来ると言うクリストフ様の優秀さに私も思わず驚きます。
ベティーナさんがクリストフ様を褒めたのが気に入らなかったのか、ベティーナさんを素っ気なくあしらったクリストフ様が気に入らなかったのか、むっとした表情のテオフィル様が割り込みます。
「旅行前はこの転移の陣紙は作れないと言っていたじゃないか」
「僕は出血量・呼吸時間・無意識時間の条件付けが出来ないって意味で言ったんだ。この陣紙を作った魔法師は化け物なんだよ。王城へ転移するだけの陣紙なら僕でも作れる」
そしてあの転移の陣紙は、そんなクリス様が作った方を化け物呼ばわりするくらいのすごいものだったようです。さすが馬車1台買えるだけあります。
「クリス、作れたとしても免許を取るまで作ってはいけない。……とりあえず、この場所についての調査と、食べ物の確保、水場と寝床の作成をしよう。それと、避難信号を出そうと思うが反対意見はあるか」
「俺たちをここに飛ばした犯人がいるとするなら飛ばした先がわからないなんてことはないだろうし、“犯人に気付かれないように避難信号を出さない”って配慮はいらない気がするな。俺は賛成」
王子2人の意見に皆納得したようで反対意見は出ません。
「ベティーナ、トラウゴット、魔法属性を教えてくれ」
「氷だよ」
「私は水属性です」
「そうか。火属性はクリスだけだな。クリス、煙に色を着けられるか?」
さすがハルトムート様。私たち旅の仲間の魔法属性は把握されているみたいです。
「やったことないけどやってみる。狼煙をあげるんだよね?煙がまっすぐ上に登るようにも工夫してみるよ」
「あぁ、普通の煙とは違う色になれば嬉しい。……私とエル、カスパル、テオ、トラウゴットで探索し、食料を確保しよう。ロミルダ、アンネマリー嬢、ベティーナはここで待機し水場と寝床の作成を頼む。クリスは狼煙を上げた後は彼女たちの助けと護衛を頼む」
ハルトムート様が決めた役割分担に各々納得したのですが、ベティーナさんだけが異を唱えます。
「私、探索がいいな」
「ハルトムート殿下が適性を考えて分担を決めたのよ。女性のあなたが探索に付いていっても足手まといになりかねないってわからないのかしら」
「ひどぉ~い。暑い中歩くことになるハル様達を私の氷魔法で冷やしてあげたいだけなのに」
早くもここに不協和音が生じます。アンネマリー様が発言したせいか、エルヴィン殿下も口を挟みます。
「ベティは手が痛いんだし待機組の方がいいんじゃない?」
「手が痛いから水場や寝床を作る方が難しいと思う。それにエル様達と一緒の方が安心だもん。私も探索したらダメ?」
エルヴィン殿下が“ベティ”と言った時とベティーナさんが“エル様”と言った時、アンネマリー様が見たこともないすごい顔でベティーナさんを睨んでました。あのお顔を見ても動じないベティーナさん、肝の座り方がすごいです。
「“エル様達と一緒の方が安心”って、私たちと一緒では不安だって言いたいのかしら」
「ひどぉ~い。私そんなこと言ってないのに」
「もういい、ベティーナは探索組でよい。日が暮れるまでに戻りたい。もう行くぞ」
ハルトムート様は時間がもったいないと話を切り上げ、エルヴィン殿下、カスパル様、テオフィル様、ベティーナさんと5人で探索に行ってしまいました。残る待機組は私、アンネマリー様、クリストフ様、トラウゴットさんの4人です。ベティーナさんが探索に変わると待機組の負担が大きくなるからとトラウゴットさんは待機組になりました。
私たちは今、見知らぬ浜辺にいます。
気温や日差しの角度から先ほどの船からそう遠い場所ではなさそうですが、そもそもあの陣紙は王城への転移の魔法陣だったはずなのに。なぜか失敗してしまったようです。
「皆、痛いところやおかしなところはないか。それと通信の魔道具などを持っていたら出して欲しい」
非常事態に戸惑っている私たちの中で、ハルトムート様が先導し一人一人の顔を見て安否を確かめてくれてます。さすがハルトムート様。頼りになります。
そんなハルトムート様に対してベティーナさんが甘えた声を出しました。
「ハル様、左手を捻ってしまったみたい」
「我慢出来ないほどに痛いか?」
「動かさなかったら大丈夫。それに痛くても我慢できるよ」
ベティーナさんが健気にも答えます。ベティーナさんは魔法陣の起動者ではなく連れ添いですので、起動者にはない負担があったのかもしれませんね。同じく連れ添い転移だった従者の方を確認すると私の手を見て顔を赤くしてます。私は繋いだまますっかり忘れていた手を慌てて離しました。
「そこの従者。私は君がカスパルと一緒に居るところを今まで見たことがなかったのだが、名はなんというのだ」
ハルトムート様が従者の方を鋭い目で睨み詰問します。彼には不愉快に感じるかもしれませんが、この非常事態、怪しいことは全て追求しないといけません。
「私はトラウゴット・クレムと申します。普段はカスパル様の弟君のアロイス様に付いてます。トット子爵夫人が私の叔母ということでこの旅だけカスパル様の従者に配置換えして頂きました」
「クレム男爵家の者か。たしかにトット子爵夫人はクレム男爵家出身だったな」
さすがハルトムート様。貴族末端の男爵の家名まで把握されてますし、視察先についても下調べ済みのようです。
「ハル殿下、トラウゴットは弟アロイスの従者で間違いありません」
「トラウは私の従兄弟だよ」
カスパル様とベティーナさんがトラウゴットさんの言葉に間違いがないと承認し身分が証明されました。トラウゴットさんはホッとした顔をしております。
「カスパルは顔色が良くなったな」
「はい、今は大丈夫ですが、船はこりごりです。もう二度と乗りません」
転移の陣紙が無い今、ここから王城に戻るにはもう一度船に乗るしかないと思います。普段は理知的で冗談などを嫌うカスパル様なのに、不合理な事を言ってしまうくらいには船酔いが辛かったようです。
「兄上、これは何かの陰謀かもしれない。あの陣紙、父上に手渡されたからと無闇に信用しないでちゃんと調べるんだったなぁ。起動して消えちゃったのが悔しいよ。誰かと手を繋いで転移してたら陣紙が余ったのに」
「あら、私は事前に魔法陣を読み込んで確かめたわよ」
「読み込んでいてもこの結果だったなら意味ないだろ」
「私の魔法陣の転移先は王城で間違いなかったし、おかしなところも見つけられなかったわ。私以外の陣紙が王城への転移を阻害するように作られていたのかもしれないし、それはちゃんと確かめてなかったエルヴィン様の分だったかもしれないわね」
エルヴィン殿下とアンネマリー様が言い争いを始めました。これが王宮の方々に“気安い仲”と濁されている2人の口喧嘩のようです。
あの陣紙についてですが、私も念のためにと読み込んでいたのでちゃんと伝えておきましょう。
「私も陣紙に書かれていた魔法陣を確認しましたが、私が分かる範囲で変な所はなかったと思います。移転先も王城でした」
「あぁ。私は父上が皆に渡す前の全員分の陣紙を確かめた。特に問題は無かったはずだ」
さすが、ハルトムート様。真面目で用心深くとても尊敬できます。
「兄上はいいなぁ。俺も可愛い婚約者にこんな風に尊敬の眼差しで見てもらいたいよ」
「可愛くなくて悪かったわね。私だってあなたが尊敬できるような人なら尊敬の眼差しの一つや二つするわよ!」
未来の義弟夫婦がまたもいがみ合います。少しは仲良くしてください。
「陣紙の発動の時、あの高い波と陣紙の魔法以外に魔法の気配は感じられなかったよ」
魔法師団長子息のクリストフ様が言うのですから間違いなさそうです。でも、そうなるとどうして王城へ転移出来なかったのかと謎が深まります。
「ここに魔法陣専用インクと紙さえあれば転移の陣紙を作れるのになぁ」
「クリス様は転移の陣紙を作れるの?すごぉ~い」
「勝手にクリスと呼ばないで。あと、僕がすごいことは僕自身が一番知ってるから」
優秀な魔法師でも何年も修行を積まないと取れないと言われている陣紙の作成免許。そんな陣紙を11歳ですでに作成出来ると言うクリストフ様の優秀さに私も思わず驚きます。
ベティーナさんがクリストフ様を褒めたのが気に入らなかったのか、ベティーナさんを素っ気なくあしらったクリストフ様が気に入らなかったのか、むっとした表情のテオフィル様が割り込みます。
「旅行前はこの転移の陣紙は作れないと言っていたじゃないか」
「僕は出血量・呼吸時間・無意識時間の条件付けが出来ないって意味で言ったんだ。この陣紙を作った魔法師は化け物なんだよ。王城へ転移するだけの陣紙なら僕でも作れる」
そしてあの転移の陣紙は、そんなクリス様が作った方を化け物呼ばわりするくらいのすごいものだったようです。さすが馬車1台買えるだけあります。
「クリス、作れたとしても免許を取るまで作ってはいけない。……とりあえず、この場所についての調査と、食べ物の確保、水場と寝床の作成をしよう。それと、避難信号を出そうと思うが反対意見はあるか」
「俺たちをここに飛ばした犯人がいるとするなら飛ばした先がわからないなんてことはないだろうし、“犯人に気付かれないように避難信号を出さない”って配慮はいらない気がするな。俺は賛成」
王子2人の意見に皆納得したようで反対意見は出ません。
「ベティーナ、トラウゴット、魔法属性を教えてくれ」
「氷だよ」
「私は水属性です」
「そうか。火属性はクリスだけだな。クリス、煙に色を着けられるか?」
さすがハルトムート様。私たち旅の仲間の魔法属性は把握されているみたいです。
「やったことないけどやってみる。狼煙をあげるんだよね?煙がまっすぐ上に登るようにも工夫してみるよ」
「あぁ、普通の煙とは違う色になれば嬉しい。……私とエル、カスパル、テオ、トラウゴットで探索し、食料を確保しよう。ロミルダ、アンネマリー嬢、ベティーナはここで待機し水場と寝床の作成を頼む。クリスは狼煙を上げた後は彼女たちの助けと護衛を頼む」
ハルトムート様が決めた役割分担に各々納得したのですが、ベティーナさんだけが異を唱えます。
「私、探索がいいな」
「ハルトムート殿下が適性を考えて分担を決めたのよ。女性のあなたが探索に付いていっても足手まといになりかねないってわからないのかしら」
「ひどぉ~い。暑い中歩くことになるハル様達を私の氷魔法で冷やしてあげたいだけなのに」
早くもここに不協和音が生じます。アンネマリー様が発言したせいか、エルヴィン殿下も口を挟みます。
「ベティは手が痛いんだし待機組の方がいいんじゃない?」
「手が痛いから水場や寝床を作る方が難しいと思う。それにエル様達と一緒の方が安心だもん。私も探索したらダメ?」
エルヴィン殿下が“ベティ”と言った時とベティーナさんが“エル様”と言った時、アンネマリー様が見たこともないすごい顔でベティーナさんを睨んでました。あのお顔を見ても動じないベティーナさん、肝の座り方がすごいです。
「“エル様達と一緒の方が安心”って、私たちと一緒では不安だって言いたいのかしら」
「ひどぉ~い。私そんなこと言ってないのに」
「もういい、ベティーナは探索組でよい。日が暮れるまでに戻りたい。もう行くぞ」
ハルトムート様は時間がもったいないと話を切り上げ、エルヴィン殿下、カスパル様、テオフィル様、ベティーナさんと5人で探索に行ってしまいました。残る待機組は私、アンネマリー様、クリストフ様、トラウゴットさんの4人です。ベティーナさんが探索に変わると待機組の負担が大きくなるからとトラウゴットさんは待機組になりました。
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