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スライムツイストドロー〜目指せ最速のその先へ〜

はじめての……

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あれから1時間未だに十の氣は微動打にしない。

「ユウゾウさん、ロレン君のギルドカード出来ましたよ。」
先程の受付の女性が呼びにきた。

「おう、じゃあロレン取りに行くぞ。」
父は立ち上がると受付に向かう。

「父さん待ってよ。」
十に氣を送ろうと集中していたロレンは受付の声に気付かず出遅れて父を追う。

「はいロレン君、これがギルドカードだよ。無くすと銀貨5枚はするから気をつけてね。」

ロレンは受付の女性から父とは違いRのところにF、プロのところにマライア王国所属と書かれたカードを受け取る。

「はーい。」

「じゃあロレンついでにいくつか依頼を受けていくぞ。あっちに依頼が沢山貼ってある提示版があるからそこから父ちゃんが取ったのを選んでみろ。」

そう言い父は受付の右手にある提示版から3枚依頼の紙を取った。

マライア岩イノシシの駆除
推奨ランクD

マライアゴブリンの巣の掃討(上位種の目撃情報あり、何の種かは不明だが戦士系と推察される。)
推奨ランクC

ジャイアントマライアビーの掃討
推奨ランクD

「ファニ、どれがいいと思う?」

ファニはマライアゴブリンの巣の掃討を触手で突いた。

「じゃあこれ。」
ロレンが取ったのはマライアゴブリンの掃討である。

「おう、じゃあ受付の人に渡してこい。依頼の場所からの行き帰りは送ってやるから依頼は自分で考えてやるんだぞ。」

「うん、わかった。はいお姉さんこれ受けたいからお願いします。」

「はい、ありがとう。説明するわねこの依頼は確かこの近くの町門から東の方の城壁沿いの森にゴブリンの巣ができたことから来た依頼で数は少なくとも6匹は確認されていたわ。お父さんが居るとはいえ相当慎重にいかないと死にかねないから状況把握と装備の確認はしっかりして挑んでください。」

「僕装備とか持ってないよ。」

受付の女性は驚愕の表情をすると父を睨み付けた。

「ユウゾウさん。こちらにお越し下さい。」

ニコリ(効果音:ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!)

笑顔だが目は笑っていない。

「なんだ。」

「毎度毎度言っておりますが。10歳も満たない子供達に無装備で群れの討伐の依頼をやらさないで下さい!しかもユウゾウさんが選ぶのは毎回上位種かイレギュラーが出てるじゃないですか。どうせ今選んだのにもいるんですよねイレギュラーで出るモンスター。」

「おいおい依頼にはゴブリンの奴しか書いてないじゃねえか。言い掛かりはよしてくれよ。」

「嘘ですね。」

「いやいや嘘じゃねえよ。」

「ええ、ユウゾウさんあなたは確かに知らない。しかしあなたは根拠の無い予想、所謂経験による勘でありそうなのを取ってきていますね。」

「う、バレたか。つーか本当に毎回上位種かイレギュラーが出るんだよな。俺の親父達の修行の賜物だな。ハハハ。」

「笑い事ではありません。全くユウゾウさんや貴方の兄のユウイチさんは世界に名を轟かせているのは元を辿れば親ですか。ロレン君達に付けるように馬鹿げた訓練をされていたんでしょうね。しかし、此処は町の冒険者ギルドです。貴方達の常識は捨てて下さい。」

「解った。修行の常識は捨ててくるわ。じゃあロレン行くぞ。」

父はスタコラサッサと逃げるようにロレンを引き連れて出て行った。

「ん、修行。いつも子供達には訓練と言っている。....ってことはあんの糞親父。」

しかし受付の女性は気が付かない。ユウゾウにとって修行とは訓練が天国に思えるくらいの地獄だと言うことに。

「じゃあロレン。ゴブリンの巣の手前まで行くぞ。」

案の定父はロレンに装備を買わずファニとロレンの素の力だけでやらせるようだ。

ロレンは心配になりながらも千に乗る。

門に着くと先程の兵士達が居た。

「もう登録は済ませたのですね。」
最初に父に話しかけてきた彼氏にいない歴イコール年齢の女兵士が言う。

「ああ、これからゴブリン退治だ。」

「ご子息の健闘を祈ります。」

「おう。」

「ロレン君、ファニちゃん頑張ってね。」
ロレンに話しかけた彼氏に振られた女兵士が言う。

「うん頑張る。」
ファニは触手でえいえいおーをする。

「じゃあ少し走って着くからゆっくり行くぞ。千」

先程とは打って変わりそこまで速くは無かった。

「うし、着いたぞ。もう少し進めばゴブリンの巣だ。気をつけて行けよ。」

「うん。」

父の気遣いにロレンは返事をして十を下ろしファニと一緒に行く。

「ファニ、どう戦えばいいと思う?」
まるで作戦を考えていなかったロレン。

それに対してファニは触手でシュパッと木を指差す。

「木登り?」

ファニは三角印を出す。

「木に登ってからから攻撃?」

ファニはまた三角印を出し、今度は複数の木を同時に指差す。

「木登りジャンプ遊び?」

ファニは丸印を出す。木登りジャンプ遊びは木登りで降りる際、だんだんめんどくさくなってきたロレンが早く降りるために編み出した他の木に飛び移りながら落下の衝撃を殺す方法である。

「木登りジャンプ遊びをしながらゴブリンを攻撃する?」

ファニは花丸印を出す。

「じゃあファニの分裂体をゴブリン達に投げつけてそれを繰り返すね。」

そう言いロレンはひょいひょいとそこにあった樫の木を登っていく。

「ファニ、触手でロープに成って。」

ファニは触手で敬礼し5メートルほどの触手を出す。

ロレンは触手ロープを別の木に向け投げる。しかし、ロレンの筋力では届かない。そこをファニが身体わ捻ることでサポートしクルリと狙ったところに括り付けた。

「ファニありがとう。」
ロレンはファニにお礼を言うとアレをやった。

ぴょん

ぶらーん

シュタッ

そうターザン的アレである。何故この時声を出さなかったというともう既にゴブリンの巣の近くということでなるべく自分の存在を知らせてはいけないと訓練の際父から教わったからである。

そして繰り返すこと3回、ゴブリン達が見えてきた。情報通り数は6匹で1匹ガタイの大きなのがいた。
 
「あれが上位種かな?」

ファニが三角印、丸印の順で出す。

「ファニも多分そう思う?」

ファニは丸印を出す。

「じゃあファニ分裂して。」

ファニはスーパーボールほどの大きさの分裂体を8匹出した。

ロレンはそれを受け取りゴブリンの目を狙い投げる。ファニの分裂体はロレンの狙い通りゴブリン達の目に当たる。

「グギャグギャギャギャ。」

「よし、ファニどんどんやっていこう。」
そう言いながらロレンとファニが次々と飛び移っていく。そしてまたファニの分裂体を投げていく。次々と直撃していくが上位種はそこらの倒木を持ち分裂体を弾いていく。

「アレは手強いね。とりあえずファニ[水分吸収]と[増殖分裂]」

ロレンの指示の元ファニはゴブリン達の目や口、鼻の体液を吸収し分裂してその入口を塞いでいく。ゴブリン達は呼吸と視界さらに水分を剥奪されもがき苦しむ。これはレナの研究とミソ・ナットウの論文を元にロレンが開発した技である。

「よしファニ。そのまま一気にやっちゃえ。」
ロレンはファニに畳み掛けるよう指示する。

「ッーーッー!?(呼吸のできないゴブリン達の苦しみ。)」

しかしロレンは攻撃に集中するあまり木々に移る動きをやめてしまった。それを見逃すほど上位種は甘くない。
ゴブリンの上位種は倒木の棍棒でロレンが登っている木を叩きつける。

「うわあ!!」
突然の揺れに堪らずロレンとファニは木から落ちていく。

「グギャギャギャ。」
ゴブリンの上位種は落ちてきた獲物に嬉しげな笑みを浮かべる。

「イテテ、ファニいくよ。」

ドカッ

ゴブリンの上位種はロレンに攻撃する。しかしロレンは寸でのところで避けるとファニの触手ロープで脱出する。

「ファニ、今だ!」

ロレンの指示でファニは絶命したゴブリン達の内部にいる分裂体に指示を出し集合させ本体と同じ大きさに成った分裂体は後ろからゴブリンの上位種を狙う。

「フゴッ!?」

ゴブリンの上位種は何が起こったのか分からず慌てた。その隙にロレンは隠れ石を数個拾い再び木に登る。

ゴブリンの上位種はファニの分裂体を振り払おうと倒木を捨て格闘している。

ロレンはそんな無防備なゴブリンの上位種に向いて再びファニの分裂体を投げる。

今度は命中した。しかしその分裂体をゴブリンの上位種はすぐさま取ってしまう。そしてロレン達を探す。

「ファニ、[パチンコ]」

ゴブリンの上位種を囲むようにに石飛礫が放たれる。その速さはファニの分裂体を投げた非ではない。

ゴブリンの上位種は棍棒である倒木を捨ててしまったために防御する手立てもなく傷を追う。また四方八方から放たれているためロレンを特定することができない。

ロレンが選んだ石は鋭さを重視したものではなくどちらというと手触りのゴツゴツしていてトゲの無い物を選んでいた。即ち、摩擦が大きいものが選ばれており、軽くとも速ければ肌を傷つけることが可能である。現にゴブリンの上位種は血こそ流していないものかなり皮膚が削れており、人間でいう皮質は剥がれていないが痛みをかなり感じて血が出るかでないかの境界線状にいた。

「グギャ…。」

ゴブリンの上位種は石飛礫の当たった場所をさすっている。

「ファニ、刺さっているところに体当たりして。」

ファニはパチンコの材料となった一部の分裂体をゴブリンの上位種が負った傷目掛け体当たりをした。

今度もまた見事に命中。ゴブリンの上位種はあまりの痛みに悶絶している。血が出ていなかった傷も悪化してほぼ全ての傷から血を中いる。

「[腐食]」

先程放たれた分裂体がゴブリンの上位種の傷口に入り込んでいく。

「グ、ガゴッ。グギャーーー!!」

ゴブリンの上位種はこれ以上にないほど苦しみ出す。スライムの腐食速度はチーズを作る過程で見た通り凄まじく速い。そのため一瞬にして組織を破壊していく。ゴブリンは苦しさをどうにかしようと身体を素手で傷つけ腹を裂く。その様子は阿鼻叫喚《あびきょうかん》の図(意味:亡者がもがき苦しみ泣き叫びながら救いを求めるさまのこと。地獄絵図とは違い個人に対して用いられることが多い。)であり、ゴブリンの内臓が飛び出してしまっていた。

「う、ゲホッ。」
ロレンは堪らず吐いた。ロレンは母が食材となるモンスターを締め殺すところは見たことがありその時も吐いたが今では平気である。しかし締め殺す際はなるべく苦しまないように一瞬で殺すため現在ロレンが行なっているような苦しみながら死んでいく光景は見たことが無かった。

「ギャ、ッ……。」

ゴブリンの上位種は事切れた。

「ロレン、どうやら討伐はしたようだな。だけどお前は色んな意味で失ったものもあるし戦い方が間違っているとも言えない。だがロレンの戦い方は自分の身を守るためだけの戦い方だ。生き抜くための戦い方じゃあない。そこんとこよーく考えろそれが今日の訓練だ。」 
見守っていた父が話す。

ロレンは未だに吐き続けている。ファニも背中をさすってはいるが一向に良くならない。

そんなロレンを担ぎ上げゴブリン達の討伐証明となる右耳を取っていくと父達は町に戻って行った。
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