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「コホン先輩についてはおいおい検査を受けてからお伺いいたします。
 それで本日の依頼についてのことをお聞きしたく存じますので詳しい内容を御教えいただきますか?」
「依頼内容は会社の退職で休職期間満了次第速やかに退職をするのを穏便に済ませて欲しい。」
「わかりました。
 依頼内容的には慰謝料請求は出来ればって感じで大丈夫ですかね。」
「うん、まあいらないと言えばいらないし法律違反が既にバレているからその分の未払い給料が出るだろうからね。」
「給料未払いは国の弁護で出ますからね。
 まあ良いでしょう。
 ではこちらの代行退職という形ですね。」

とんとんと書類をまとめて取り出していた。

「この契約内容で問題なければ印を押してください。」
「えっと……。」

あまり弁護系の契約に関しては詳しい方ではないのだが依頼料も代行一回に付き3万円と相場と同じくらいに思えた。

「それでじゃあ印を押すね。」

さっと印を押そうとした瞬間書類をすり替えた。

「ふふふ、これで先輩は私のモノです。
 最初からこうすればよかったんです。
 私の一生に一度しか使えないスキルをもってすれば先輩を私のモノにするなんて容易いことです。」

実花後輩のスキルは特に聞いたことも無かったがそんなにも強力なスキルなのだろうか?
改めて契約内容を見て要約すると俺は実花後輩と結婚することになっているのだが……。
しかもその際に仕事をせずに専業主夫になり妻の呼び声には即座に駆けつけることと書かれていた。

「こ、こんな契約不等だよ。」
「残念ながら私のスキル《一方的な契約アクセラレータ・コンダクター》をもってすれば全ての契約は私の思うままなのです。
 そしてこのスキルは一生に一度だけしか使えないスキル。
 あまりにも強力なために政府にも監視が及んでいましたがこれで晴れて監視も無くなり先輩とハネムーンへ行けますね!」
「葵お兄ちゃんは渡さない!」

みずきちゃんはもう何が何でも離すまいと必死にしがみついているが俺の身体はみずきちゃんを引き剥がそうとしていた。

「契約内容には私以外との異性との接触は私の許可なくして浮気。不倫と見られてもおかしくないと記載していますのでこの結婚という契約には不倫は契約違反に当たるため引き剥がすというのが成立するのです。」
「な、なんて恐ろしい能力。」

「無理矢理にまで俺と結婚したいって実花後輩って俺のことそんなに好きだったの?」

「今の今まで気づかなかった葵君も葵君だよね。」

苦笑いをする涼奈さんはどこか余裕を持っているように思えた。

「涼奈さんは余裕ですね。
 先輩が私のモノになりアドベンチャラーにも成れないというのに悔しくないんですか?」
「う~ん、実花さんには悪いけどすぐにその契約内容を撤回するか変更を求めると思うしね。
 それに葵君もそれで自覚を持ってほしいし賭けに近いけど葵君なら私を最終的に選んでくれるって信じているからね。」

今日中にそれは証明されることとなる。
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