上 下
30 / 62

しおりを挟む
「ちなみに、呼んだ人には異常とかは無かった?」

「アーモンドさんは特に、こちらの世界で有害になるような病原体も、自分の身体の抗体も滞りなく持っていたけど、マーキングされていたら消させてもらったよ。」

「マーキングは人間の奴?」

「どっちも、神と悪魔と人間ってところかな。
 天使を信仰している人は、察知力が薄くて面倒だね。」

「信仰って面倒なのよね。
 常日頃から信仰をしている人なんて殆ど居ないし、それできる人じゃないと聖人とか聖女とかになれないし。」

 教国の階位基準は如何に魔法を使えるかどうか。
 術式の都合上、より信仰心を捧げながら祭日を執り行ったものがそれに該当する。
 ようは毎日元気よくあいさつするみたいな学級目標を常日頃からやってる奴が強い。
 人々の模範となり尊敬の念を得ながら育っていけば行くほど術の効果が高まる。

 しかしながら教皇になってしまった女の子は、そもそも、信仰心は強くとも模範となる行動は一切してこなかった。
 彼女は、誰よりも神を信じているが、救いをもたらすのは神ではないと思っている。

「それ出来てる人が言うと、説得力皆無ですよね。」

「私だって神が救いをもたらす存在とか試練をもたらす存在とか、神話読んで信じてましたよ。
 でも、一回現実を見せられれば、そりゃあ、目が覚めますよ。」

「私も人のこと言えませんけど、信じ仰ぐのをやめなかったのはあなたの考えがあってのことでしょう。
 呼んだのなら責任持ちなさい。」

「神様、仏様、エレンツォ様。
 どうか忌々しい部下を御せなかった私目をお許しください。」

「神は別に居るだろ。」

「神は万物であり、いつも見守るだけ見守ってなにもしてくれないんじゃー。」

「うんうん、じゃあ頑張ってね。
 責任の所在は全部押し付けてあるから。」

「嫌———、鬼!、悪魔!、デビコン!」

「ディスッテルノカホメテルノカワカラナイナ。」

 熱い、暑いぞこのカップル。
 夏の激辛ラーメン並みに厚い辛さだ。

 反応全てを惚気に変えられるバカップルのオーラに当てられた教皇様は、泣く泣く帰ることとなった。

「あ、迷惑かけたお詫びにこれ挙げといて。」

 魔術を弱める効果が出るブレスレットを取り出していた。

「魔導具ですか、確かに今の彼女には必要かもしれません。」

「あの子の魔力あくまでも相当な量だからね。
 少しは制御しやすくなるといいね。」

 完全詠唱の魔術を使われたらどうしようも無いけど、他の事だったら弱められるとは思うし、彼女の役には立つだろう。
しおりを挟む

処理中です...