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「はやくコンロを買いに行こうよ。」

「そうだねえ。
 狸型ロボットになりたくないもんねえ。」

「僕は悪魔だぞ!
 ヤギさんかウシさんか、ヒツジさんだぞぅ!」

 可愛く怒った顔を見せる。
 これが本気で怒っているらしく可愛い姪っ子を見ている気分だ。
 悪魔だから、動物の角を持っているのは当然。
 ドラゴンだって牛の角を模したものとされているし、鬼もそうだ。
 山羊や羊の角は昔から知恵や宗教の悪魔象として有名。
 Vとして生まれたばかりの頃は中二病染みた感覚で崩れていくのが楽しみなリスナーたちの日常風景であったことを思うとしみじみ懐かしくなり涙が出る。

「また、昔の事思い出して。
 そんなにツルツルテカテカの頭が良かったの?」

「感性は他人によるしね。
 女子だって丸坊主が当たり前の地域や世代もあったらしいし、オシャレなのかどうかは別として。」

「遠回しに似合わないって言うな!」

「事実だしね。
 でも髪を短くすると印象がだいぶ変わるよね。」

 変わり過ぎて空回りした女子のような心境。
 グサッと刺さる心の心臓。

 髪が全て抜け落ちたことが判明したのは魔法を必死に練習し続けて数万回は行ってしまった一夜の後。
 朝に顔を洗うときに悲鳴と共に判明した。
 結局、エレンツォが持っていた王族御用達の毛生え薬とトリートメントを使って元の髪に戻すことが出来た。
 毛根が完全に死滅するタイプではなく本当に良かったと心底感謝しつつ、エレンツォにガスコンロに近いモノを頼んだのだった。

「この毛生え薬とかトリートメントって何の素材作っているの?」

「使っているのはカツラリホーっていうモンスターの涙が主成分になっている。
 彼らの涙には毛根を再生する機能や太くしたりする機能があり、ハリと艶も与えることから王侯貴族がこぞって手に入れようとする代物。
 他にも肉や内臓と言った物を食べれば綺麗な髪が一年は続くと言われている逸話もあるくらいだ。
 ただ、それで数を減らされてはたまらないからね。
 密猟者から取られないように私が生息域を把握と管理をしているのさ。」

「なんか地球も昔にそんなことあったよね。」

「ただねえ、カツラリホーは一時期絶滅しそうになった理由がどうにもしょうも無さ過ぎてね。
 見限ろうか本気で迷ったけど、貴族の人たちから熱く言われたからまだ生き残っているのが真相なんだよね。」

「なにがあったの?」

「餌のタンパク質不足。」
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