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 モノはコンロを買いに行くことだが、なんと町も良く知らないのに待ち合わせをすることになった。
 危険だから携帯電話代わりに錬金生物は持たせたが、いよいよデェートゥっぽくなってきた。

「デートっていうのかねえ。
 若いころは女性との出会いを求めていなかったしねえ。」

 自分たちの良いところも悪いところをも知っているのに今更デェートュを行う必要があるのかと言われれば、要は気分の問題だろう。
 互いに意識を改めてしあうことで悪いところ良いところの両方を発見していこうというのが目的だ。

 もちろんデェートュは良いところを見てもらいたいと努力するのが特徴だが、私はそうは思わない。
 良いところをずっと見せ続けなければいけないのは辛い。

 良いところも悪いところも受け入れ改善してこそのいい夫婦。
 理想の夫婦像はそれだ。
 互いに喧嘩しあっていても、最後は笑って仲直り。
 独身歴の長い二人が意思を尊重し合うのは非常に難しいかもしれない。
 一ファンとしてでも限界がいずれ訪れる。

 だからこそ互いをもっと知ろう。
 
「お待たせ!」

「こっちこそお待たせ。
 今日は眼鏡をかけてるんだね。」

「だってリアルだもん。
 リアルっぽく眼鏡をかけてみたよ!
 エレンツォはなんでスーツなの?
 ここではそれがトレンド?」

「大抵の男性は、庶民ならスーツが街に出かけるときの正装と言われているね。
 あくまでも外出用の服だから、これから行くのはそれなりの格式をもっているから敬意を評すという意味で来ている感覚かな。」

「あーフランス料理のレストランとかだとフォーマルを求められるのと同じってこと?」

「概ねあってるよ。」

 フォーマルを求められるのはそれなりの格式と権威を示す場所である。
 町の市場程度なら、普段の服装。
 それこそ、マスターとしてのエプロン姿でもよかった。
 今から行くのは王族御用達のお抱え商人が店を構える場所で格式と権威が高い。
 スーツもギリギリなところに行くので、女性はともかく男性はしっかりとした服装で居なくてはならない。

「だから服も買いに行くよ。
 アンズさんのをね。」

「うへー。」

「着飾るのは嫌?」

「嫌。
 正しい姿勢を余儀なくされている気分が嫌。」

 フォーマルはその通り正装なのだから正しい姿勢を保ちやすいように作られている。
 カジュアルな服と違い、伸びもしなければすぐに皺ができる。
 ドレスにしてもそう。
 きちんとしたものは着るのも大変だった。

「ウエディングドレスとかも着たくないの?」

「うん!」

 ちょっと心が傷ついた気がした。
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