換金スキルとショップスキルでバグ技大金持ち〜無限に増える1円玉でスキルを買いまくる～

スライム道

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病院から出て学校に戻れば何もない、指をさされる日常に戻ると思っていた。
だけど換金スキルの中に気になる文章があった。

呪い
牛の獣鬼一族の祝《呪》い
換金額　不明
材料費　不明
技術費　ザーハック王国ミスリル貨10000枚

買い取り不可能な商品と鑑定、査定いたしましたので換金スキルの使用は不可能となります。
ここから先は買い取り可能貨幣のある世界に赴き直接買い取りしていただきますことをお勧めいたします。

またザーハック王国ミスリル貨の日本円との為替はショップスキルでご確認ください。

「ザーハック王国とはなんだ？」
「ん？刀赤君はザーハック王のことを知っているのかい？」

帰りの車内で思わず呟いていたのだがその単語を教頭先生が拾っていた。

「ザーハック王ですか？」
「その様子だと知らないみたいだね。ああ、病院の子から聞かされたのかな。」
「ザーハック王って言うのはペルシャ、今のイランの場所でササン王朝で伝えられてきたお伽噺に出てくる王様の名前なんだよ。
　いわゆる悪役の王様でね実際に存在したかは定かではないんだけど歴史は濁して覚えるのもいっぱいあるからね。」

ということは買い取り可能貨幣のある世界は別にある。
そして俺は別の世界が存在していることを意図せずに知った。
これもあの鬼の策略のなのかはわからないがある意味で好都合かもしれない。

少しこことは違う世界を見てみたいと思ったからだ。

もうこの日本では受け入れてくれる人を探すのはとても難しいと思う。
だから世界各国を見てみたい気持ち、希望はまだ微かに残っていた。
この容姿ではアルバイトも下手にできないので何とかして異世界に行って見れるか調べてみようと思う。

いざとなれば換金スキルで旅行費ぐらいは稼げるが１円でしか換金できない可能性が高い。
銀行に頻繁に言っていたら不審がられる、通報されること間違いなしだ。

「世界か…………」
「自分探しの旅にでも出かけたいのかい？」
「教頭先生もそんなことを考えたことがあるんですか？」
「もちろんあるよ。実家が嫌で飛び出して呼び戻されないように勉強して留学なんかしていたからね。」

教頭先生はまるで昨日のことのように楽しそうに話していた。

「留学したころは自分の見識の浅はかさにとても苦労したよ。
　それだけ日本で学んできたことなんてお遊びのようなものなんだって実感したし知らない文化に触れるのも楽しかったよ。」

「なら何で日本で教師をやろうと思ったんですか？」

「それはね。文学というものにずっとはまっていたからかな。
　文学というのは面白いものでね。
　その国の言葉でしか伝わらないものがいっぱいあるんだよ。」

「それくらいは知っていますよ？なら尚更その言葉の意味を知るために知らない文化を知るべきではないのですか？」

「いくら翻訳しようとしてもその国の言葉を知らなければ理解できない。
　でも僕は経験にも限界があると思っているんだ。
　留学して経験と知識、両方からの想像をする。
　僕には刀赤君のような境遇にはなったことは無い。
　でも人生の最低限の経験から想像できてしまうもんのなんだよ。」

最低限の経験から想像するというのはどういった表現なのだろうか？
文学は嗜む程度には読むけれども最低限の経験から想像するというのは聞いたことが無かった。

「最低限の人生から想像するですか？」
「そう、例えば数学とかが分かりやすい例だね。」
「数学ですか？」
「数学の公式のほとんどは四則演算だけでもやろうと思えばできたりすることなんだよ。
　私が中学の時はまだまだ詰め込み教育って言うのがあってね。
　効率だけを突き詰めた教育なんだろうけども納得のいかない教育だったんだよ。
　そこで私は教師に対する反抗をしてね。
　四則演算だけで解く行為をしていたのさ。」

確かに言われてみれば公式に対しては覚えた方が良い程度のことでしかない。
数を大きくしたときに大変になることには変わりないが四則演算だけでもなんとかなる。
それに日常では四則演算しか使うことが無い。
反抗期の考えそうな無駄なのに覚えなくてはいけないのかを問われているように感じた。

「そんなことをしていた私が世界に行ったら通用すると思う？」
「とても通用するとは思えません。」
「うん事実通用しなかった、だから教師に成ろうと思ったんだ。生徒をきちんと通用させられるような人間に育てたいと思ってね。」
「…………」
「刀赤君には押し付けに聞こえるかな。でもね南米だと君の病気はさほど珍しいものでもないんだよ。」

その言葉を聞いた時、ほんの少し、距離にして1ｍｍにも満たないかもしれない心の扉への距離が縮まったような感じがした。

この世界とは異なる世界に行ってみようと心の中でひそかに決意するのだった。

『ショップスキル発動』

異世界への無料パスポートが送付されました。

「…クス…………」
「今笑った？」
「何でもありませんよ教頭先生。」
「気になるじゃないか。」
「まあいいじゃないですか。今日の面談に来たんですから。」
「もう、男女の話し合いとか聞いてみたいけど刀赤君すぐに出て行ったんだから、明日香さんのお父さんはとても感謝していたけど何を話していたの？」

行きに散った桜の花弁は無くなり既に次の花を咲かせるべく葉を生い茂られせていた。

「さあ、少しばかり人生が楽しくないことを教えただけですよ。」

教頭先生は苦笑いを浮かべるのだった。

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