忘れられた手紙

空道さくら

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第42話:再会を誓って

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 合宿の最終日。結衣たちは楽しい思い出を胸に、帰り支度を整えていた。朝日が差し込む宿のロビーには、名残惜しさと暖かさが入り混じった空気が漂っている。

 陽斗が少し照れくさそうに、「みんな、ほんとありがとう。ここでこんな賑やかな時間を過ごせたのは初めてで、すごく楽しかった」と笑顔を見せると、河西がすかさず「えー、陽斗君があんまり騒がしいの得意じゃないの、バレてたよ?」とからかった。

「うん、ちょっと賑やかすぎるなって思う瞬間もあったけど、それ以上に楽しかったよ」と陽斗は照れくさそうに笑いながら答えた。

「そりゃ、島倉君とあんな本気の喧嘩した後だったら、何でも楽しく思えるでしょ!」河西がわざと明るく言うと、島倉が「それを言わないで!僕が悪かったんですから!」と慌てた。

「いや、あの時は俺が悪かったんだ。本当にごめんなさい」と陽斗が素直に頭を下げると、島倉がすかさず「いやいや、そんなに気にするなって!僕もつい笑っちゃったのが悪いんだから」と苦笑いしながらフォローした。

「でもさ、その後、ちゃんと仲直りできたのがすごいよね!」と平山がフォローするように言うと、陽斗は少し照れたように「まあ…みんなが雰囲気良くしてくれたおかげかな」とつぶやいた。

「うん、でも陽斗君、思春期っぽくて面白かったよね!」と河西が笑うと、陽斗は「ちょっ、それ言うのやめて!」と顔を赤らめながら抗議する。

「ほらほら、またそういうところが可愛いってなるんだよ!」と河西がからかうと、陽斗は「だからやめてってば!」とさらに赤くなり、みんなはその様子に笑い出した。

「ほんと、賑やかで楽しかったな」と島倉が感慨深そうに呟くと、結衣が「うん、こういう時間、普段なかなかないもんね」と頷いた。

「でも、次はもっと陽斗君に頼るからね!観光名所とかもっと教えてよ!」と河西が明るく言うと、陽斗は「え、俺に任せるの?」と困ったような笑顔を浮かべた。

「だって陽斗君、頼りになるし!次はもっとパワーアップした案内してもらわなきゃ!」と平山が追い打ちをかけると、陽斗は「なんでハードル上げてくるの…」と肩をすくめたが、どこか嬉しそうだった。

「さて、そろそろ時間だな」と生田先生が声をかけると、陽斗が「また絶対来てね!待ってるから!」と手を振った。その言葉に、結衣たちも笑顔で手を振り返し、「またね!」と声を揃えて応えた。

 朝日に包まれた小道を進みながら、彼女たちは思い出話を交わし、笑い声を響かせていた。陽斗の姿は小さくなるまで見え続け、心の中に温かい記憶として刻まれていった。



 バス停に到着したところに、ちょうどバスが到着した。メンバーたちは振り返り、遠くで手を振る陽斗君に応えながらバスに乗り込んだ。車内では、窓の外を流れる景色を眺めながら、自然と合宿の思い出話が始まった。

「庭園での陽斗君、ほんとかわいかったよね。伝説の石灯籠があるって信じて、一生懸命探してたのがめっちゃ純粋でさ!」と河西が笑うと、平山も「うん。先生の話に一番真剣に引っかかってた、あの素直さがまたいいよね」とくすくす笑った。

 河西が思い出したように、「そうそう。あの庭園の灯籠全部確認してたよね。池の方まで探しに行ってたし」と苦笑すると、結衣が「いえ、私たちだって本気で探してたんですから、陽斗君ばっかり言えないですよ」と弁護するように笑う。

「でも、あの後で先生が『私が作った話なんだよ』って言ったときの陽斗君の顔!『嘘だったの!?』って、信じられないって感じだったもんね」と河西が笑いをこらえながら言う。

 結衣が微笑みながら、「たしかに驚いてましたけど、あの素直な反応が陽斗君らしいですよね」と返すと、平山も「ほんと、びっくりした顔がそのまま素直に出てたよね。なんだか見ててほっこりした」と笑った。

 そのまま話題が移り、河西が「それにしても、島倉君と陽斗君の喧嘩、あれも忘れられないよね」と振り返る。

「うっ、それはもう勘弁してくださいよ!」と島倉が両手を振って慌てると、平山が「でも、仲直りしたから良かったよ。陽斗君も、最後に『これからも仲良くやろうね』って言ってたし」とフォローする。

「まあ、僕が悪かったのは間違いないですから。本当に反省しました」と島倉が苦笑いすると、結衣が「でも、陽斗君、ちゃんと自分の気持ちを伝えられたから、その後は素直に楽しめたんじゃないかな」と優しく言った。

「そうだね。陽斗君が言ってた『すごく楽しかった』って言葉、私も嬉しかった。また会いたいな」と河西が付け加えると、全員が静かに頷いた。

 話が一段落したところで、平山がふと思い出したように、「そういえば、遠藤さんからのメッセージ、まだ来てるの?」と河西に尋ねた。

「あー、来てたけど、もう既読スルーしてる。『遊んでばっかりじゃなくてちゃんとやってよ』とか言ってたけど、ここでのこと教えたら絶対に嫉妬されるしね」と河西が肩をすくめる。

「そりゃそうだよ。こんなに楽しい合宿の話なんて、遠藤さんには絶対秘密だよね」と平山が笑うと、結衣も「だって、遊んでるんじゃなくて、ちゃんと創作のための活動ですからね」と笑顔で続けた。

「遠藤さんには内緒にしておいた方が平和ですよ」と島倉が冗談っぽく言うと、全員が笑い出した。

「ほんとだよね。まあ、この思い出は私たちだけのものってことで」と河西が楽しそうに言い、窓の外の景色に目を向けた。



 バスを降り、駅のホームに向かうと、冷たい風が頬を撫で、朝の空気が心地よく広がっていた。線路の向こうから電車が近づく音が響き、特急電車が静かにホームへ滑り込んできた。

「じゃあ、乗ろうか」と生田先生が促し、全員が頷きながら電車に乗り込んだ。席に着くと、それぞれが荷物を整えながらほっと一息ついた。

 電車がゆっくりと動き出し、窓の外の景色が流れ始めると、自然とこれからの予定について話が始まった。

「なんだか、あっという間だったね」と結衣が窓の外を見つめながら呟いた。

「ほんとね。でも、この合宿でいろいろアイデアがまとまったし、小説の完成が近づいてるのが実感できるよ」と河西が明るい声で応じる。

「うん、完成が見えてきた分、最後の仕上げに力を入れたいよね」と平山も頷く。

「次に部室に行くときは、最後の調整ですね。仕上がるのが本当に楽しみ」と結衣が微笑むと、島倉が「完成したら、どんなふうになるかワクワクするよね」と期待を込めた表情を見せた。

「でも、最後のチェックが一番大事だから、気を抜けないね」と平山が言うと、河西が「そうだね。完成間近だからこそ、みんなでじっくり見直していこう」と応じた。

「あと、タイトルとか表紙の案も考えないとですね」と結衣が思い出したように言うと、生田先生が「そうだね。部室なら資料もあるし、しっかり話し合えるはずだよ」と頷いた。

「それにしても、今回の合宿で出たアイデア、絶対に作品に活きてくるよね」と河西が窓の外を見つめながら話す。

「はい、観光で見た景色とか、みんなで過ごした時間とか、そのまま物語に繋げられる気がします」と島倉がしみじみと言うと、平山も「特に、庭園の静けさとか、あの壮大な建物とかね。どれも印象に残ってる」と頷いた。

「こうやってみんなで話し合いながら進めてきたからこそ、完成したときの達成感が大きいだろうな」と河西が言うと、結衣が「本当にそうですね。楽しみです」と微笑んだ。

 電車が速度を上げ、流れる風景が次々と変わっていく。いつもの街並みが近づいてくると、誰もが鞄を手に取り、静かに席を立った。

「あっという間でしたね。もう終わりかと思うと、ちょっと寂しいですね」と結衣が微笑みながら言うと、河西が「うん。でも、こんなに充実した時間を過ごせたから、満足感もすごいよね」と頷いた。

「本当にね。この合宿で得たもの、これからもずっと大事にしていきたいな」と平山がしみじみとした声で続けると、生田先生が「この時間がみんなの中で特別な思い出として残るなら、先生としても嬉しいよ」と穏やかに微笑んだ。



 電車がホームに滑り込み、扉が開く。結衣たちは席を立ち、鞄を手にしてホームへ降りた。頬に触れる風は少し冷たいが、どこか柔らかさを感じさせる。見慣れた景色が広がり、ほっとした空気が彼女たちを包んだ。

 「帰ってきましたね」と結衣が静かに口にすると、河西が「うん、やっぱりこの雰囲気が安心する」と微笑んだ。

 平山は遠くの空を見上げ、「合宿は楽しかったけど、やっぱりここに戻ると落ち着く」と穏やかに言い、島倉も「ホッとしますね。本当にいい時間を過ごせました」と頷いた。

 駅の出口へ向かいながら、結衣が「本当に充実した時間でしたね」としみじみ言うと、河西が「うん、次の部室での作業が楽しみだね」と応じた。

 外に出ると、少し傾いた陽射しが建物や道を優しく照らし、長い影を作り始めていた。空気は澄んでいて、ふと立ち止まると午後の清々しい空気が心に静かに溶け込むようだった。胸に広がる合宿の思い出と、これからの期待が入り混じり、彼女たちは新たな一歩を踏み出す準備を感じ取った。

 「それじゃあ、またね。次は部室で続きを頑張りましょう」と平山が声をかけると、結衣たちはお互いに頷き、笑顔を交わした。



 家路を歩きながら、結衣はふと足元の小石を蹴り上げた。その石が軽やかに弧を描いて地面に跳ねる様子を眺めていると、合宿での一コマ一コマが心に蘇る。みんなで笑い合い、語り合ったあの時間が、胸の中でじんわりと形を成していくようだった。

「あの時のあの言葉が、私たちの次の一歩を支えてくれるんだ」と結衣は小さく息をつき、思わず笑みをこぼした。視線の先にある道の続きに、これからの物語の新しい一歩が待っているように思えた。ポケットに手を入れて握りしめた手帳の感触が、そんな気持ちをさらに確かなものにしてくれるようだった。
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