重なる世界の物語

えんとま

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初めての依頼

使い魔フィリィ

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「勉強会は終わったんですね、お疲れ様です」

下の階に降りるとアリスが鍛錬を終え椅子に座っていた。

「さて、これを覚えているかしら」

シリエはひらひらと紙をちらつかせる。
確かあれは…

「昨日ドーガンさんから受け取った依頼ですね」

「そう、武器の材料に魔物を狩ってきてほしいっていう依頼なんだけど、キースとクライン君で行ってきてくれないかしら」

初めての依頼!

ドクンと鼓動が大きくなるのを感じる。冒険者になって初めての依頼に緊張しているのだろうか。

「そんなに難しい依頼ではないし、何よりキースが付いているなら問題ないでしょう」

「そうだね。それにクライン君に渡した魔道具も試してみたいし、ちょうどいい」

「それでね、依頼をこなすにあたってやっておくことがあるの」

「やっておくこと…ですか」

「そう、私たちは専属武器の使用を禁じているけれど、使わざるを得ない状況に陥った時に離れていると許可することができないでしょ?そのための準備よ」

確かに気になっていた。許可もそうだがシリエの目が届かない所でどう管理するのか。

シリエはカウンターに置いてあった正方形の薄い紙を取り出した。何やら魔法陣のような紋章が描かれている。

「クライン君、手の甲を出してくれるかしら。右でも左でもいいわ」

??

いまいちよくわかっていないが、言われるがまま手を出した。

シリエは手の甲に先ほどの紙を乗せる。

「ちょっと痛いかもしれないけれど、すぐ済むから我慢してね。」

え?

「ᛟᚾ ᚲᛁᛋᚺᛁ」

バチンっと音を立てて一瞬手の甲が光る。

「イテッ!」

まるで手の甲を二本の指でパシンと叩かれたような痛みが走る。たまらず手をブンブン振るクライン。

「ごめんなさいね、痛いのばっかりはどうしょうもなくって」

手の甲を見ると何やらタトゥーのような印が付いている犬のような顔に猟犬の牙ハウンドファングの文字。

「これって…」

「それは僕が作った魔道具でね。僕らギルドに所属している証明にもなるんだが、召喚術式を組み込んでもあるんだ」

最初の紙の時は魔法陣が描かれていたが、どうやらあれのことらしい。

「式神、守護霊…似たような言葉はたくさんあるけど、魔術の分野で呼ぶなら"使い魔"ってとこかな」

「使い魔…。これ、もう呼び出すことができるんですか?」

「えぇ、でもその前に名前をつけてあげないとね。その子の名前を呼んで召喚するの」

名前か…

「呼びやすい名前がいいですよ。あと恥ずかしい名前もやめた方がいいです。よく呼び出すことになると思いますし」

アリスが助言してくれる。経験からくる警告だろうか…。

「んー、それじゃあ"フィリィ"。あなたの名前はフィリィです」

その瞬間、手の甲の黒い印がぐるっと動き、黒い影になって手の甲から出てくる。
それは一瞬で腕を駆け上がり、首の周りをくるっと回って肩に落ち着いた。

「うわっ!」

いきなりの出来事に驚くクライン。
自分の肩を恐る恐る見てみると、影の時には想像もできなかった真っ白な毛に覆われた生き物がそこにはいた。

「これは…イタチ?」

「か…可愛い…」

アリスの顔が緩んでいる。

「うまく行ったわね。これで術者の私は貴方達がちゃんとルールを守っているか、その使い魔を通じて伝わってくるし、逆にこちらから武器使用の許可をすることもできる。仲間の中で連絡をすることも可能よ」

「見た目は小動物だけどご飯はいらないよ。使用者のマナを消費するけど、気にならない程度さ」

アリスに抱きかかえられ、きゅうきゅうと鳴く使い魔に目を向ける。あれが僕の使い魔か。

「よろしくね、フィリィ」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


「キース、先ほどシリエが放った言葉は魔術言語ですよね。あれがトリガーというものですか?」

クラインの問いかけに微笑むキース。

「ちゃんと講義を理解してくれているようで嬉しいね。その通りだよ」

キースはクラインの首飾りを指差す。

「その首飾りもそうなんだけど、魔道具は魔術回路が道具に刻まれていて組み替えることができない。だけど回路は構築済みだから詠唱の必要はない、トリガーさえ口にすれば発動できるよ」

ふむふむ、クラインはコクコク頷く。

「本来は使用者のマナを使うけどそいつは特別製さ。さっきも言ったけど触媒に近いもので、道具そのものがマナを取り込んで使用するタイプだ。それに発動回数に制限がない永続魔道具。市場に出たら恐ろしい値段をつけられるだろうね」

盗賊に気をつけてね、とキースは恐ろしい忠告を笑いながらかましてくる。

「…キース。この魔道具のトリガーはどう言えばいいんでしょうか」

「あぁ、そうだ話してなかったね。本来ならこう発音するんだ」

「ᛟᛈᛖᚾ ᚷᚨᛏᛖ」

???

クラインはキースがなんと発音したのかうまく聞き取れなかった。

「そうなんだよね…。魔術言語って発音が特殊だから聞き取るのも言うのもちょっと慣れがいるんだ。だから僕は加工するときに

「物を入れるときは"イング"、取り出すときは"オルタ"、意識を魔道具に持って行き、こう発音すると起動するようにいじってあるよ」

さすがはキース、魔術の達人。早速クラインは試してみる。

「イング!!」

その瞬間何やら黒いモヤのような円形の影が現れ…

ストンと落ちそうになるクラインを慌ててキャッチするアリス。

「うわぁ!」

「危ない!」

なぜか慌てていないキース。

「キースさん、見てないで手伝ってください!」

「いや、落ちても大丈夫だよ。魔道具が持つ異空間に魔道具自身は入ることが出来ない。多分落ちたら違うところにゲートが出てきてそこから吐き出されるんじゃないかな」

「え?」

アリスは声を上げる。
キースを信じない訳ではないが若干不安のあるクライン。だが好奇心の方が勝ってしまった。

「アリス、手を離してみてください」

「えぇ…、知りませんよ?」

パッと手を離す。

ストンと穴に落ちていくクライン。落ちながらのが見えた。

げっ!!

どうやらゲートは一瞬で一階の天井と繋がったようだ。完全に落ちる前に気がついてよかった。クラインはなんとか着地する。

「なるほど…こうなる訳ですか…」

キースは予想どうり、と言った顔だ。アリスはというと…なんだかちょっと不機嫌そうだ。

「クラインさん、あまり危険なことはしないでくださいよ?怪我したりしたらどうするんです…。」

「…はい、ごめんなさい…」

パンっと手を叩くキース

「ゲートの位置を狙って出すには慣れがいるみたいだね。ちょうど依頼もあることだし、その中で訓練していこう。さ、依頼の準備に取り掛かろうか!」

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