転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第177話 メイスはやっぱり凄い猫

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 無事契約を済ませ、鍵を受け取った私達が真っ先にしたのは大掃除だった。
 長年空き店舗となっていたようで、扉を開けて中に足を踏み入れた瞬間、埃が舞ったためだ。
 布をマスク代わりに口を覆い、各々掃除用具を手に扉の前に立つ。
 私はヒデさんに視線を向けて告げる。

「……随分と掃除がされていないようね。カビや細菌も繁殖しているはずだから、徹底的に掃除するよ」

 開け放たれた扉の向こうの状態を見て、ヒデさんが頬を引きつらせながら頷く。

「う、うん」

 気合いを入れて中に入ろうとしたらメイスの声が肩越しに聞こえた。

『そんな重装備をしなくても清浄魔法を使えば一発で済むだろうに。お前たちは回りくどいやり方を好むのだな』

 メイスに指摘されて私とヒデさんの声が重なる。

「 「あ……」 」

 一度、ヒデさんの魔法で家を綺麗に掃除してもらって以来、掃除はもっぱらヒデさんが造ってくれた魔道具に頼りきりだった。
 そのため、清浄魔法の存在をすっかり忘れていたのだ。
 今気がついたとばかりに声をあげた私達に、メイスは呆れたように大袈裟にため息を零す。

『はぁ……。忘れていただけか。なら、さっさと終わらすぞ』

 メイスの呆れた声に、私とヒデさんが顔を見合わせてはにかむ。

「へへ、ヒデさん、魔道具を使って掃除をするのもいいけど、ここは魔法でちゃちゃっと終わらせない?」

 恥ずかしさを誤魔化すようにへらりと笑いながらヒデさんに声をかけると、ヒデさんもぎこちない笑みを浮かべて返してきた。

「う、うん。これだけ広いと掃除が大変だしね。魔道具に頼りっきりだったし偶には魔法も使わないとだね」

 へらへらと笑いあっていると、痺れを切らしたメイスが言い放った。

『……お前たちはすぐに魔法の存在を忘れる。……もういい。俺がやる』

 そう言うなり肩から飛び降りたメイスは、とんと店の床に前足を下ろした。
 一瞬、店全体がメイスの魔力に包まれて淡く光ったあと、すぐに光が納まり店内の様子が視界に飛び込んできた。
 またまたヒデさんと私の声が重なる。

「 「え!?」 」

 埃が舞い淀んでいた空気が一瞬で消え、まるでプロの清掃業者を雇って掃除したかのように見違えるほどピカピカになっていた。
 ジッと目を凝らして見ても、塵一つ落ちていない。
 それにはヒデさんも驚愕の表情をして、目を大きく見開いて固まっていた。
 それから暫くしてヒデさんが弱々しく呟いた。

「……クリーン魔法にもレベルってあるのかな……僕の時とえらい違いでショックなんだけど……」

 いやいや、十分綺麗だったよ!
 ただ、メイスのクリーン魔法が凄すぎたってだけで。
 久しぶりにメイスの魔法を目の当たりにした私は、やっぱりメイスは凄い猫なんだと思い知らされることとなった。

 いや、実際は超絶イケメンの魔王様なんだっけ。
 忘れてしまいがちになるが、というか今の今まで忘れていたけどメイスは魔族の王様なんだよね。
 メイス自身が正体を明かした時に一度だけ目にしたけど、あまりにも印象が強烈過ぎて無意識のうちに記憶の片隅に追いやってしまっていたのだった。

 今思うと、これって凄くない?
 腕の中には愛らしい子犬のブロン。
 子犬の姿をしているけどブロンは伝説のフェンリルらしいし、ヒデさんはご先祖様であるしょうたさんの親友で、メイスは魔族の王様という普通では考えられない面々だ。

 私は神様に会った記憶がないから未だ半信半疑なんだけど、何だか神様の思惑が絡んでいるような気がするのは私だけ?

 悶々と悩み始めた私に、メイスが急かすように声をかけた。

『おい、早く荷物を片付けてしまおう。他にもしなければならないことがあるのだろう?』

 その声にハッと我に返った私は、慌てて返事をする。

「あ、うん。明日は領主様の紹介で人が来るから今日中に片付けを終わらせておきたいんだよね」

『なら、さっさと終わらせろ。間に合わなくなるぞ』

 メイスはそう言うなり、くあぁ~と欠伸をして目を閉じた。
 器用に肩でうつらうつらと舟を漕ぎだしたメイスを見て、私は苦笑いする。
 それからピカピカに磨かれた床にブロンを下ろして、亜空間に収納していた荷物をヒデさんと二人で片付けていった。


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