転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第16話 冒険者ギルド

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 そっと扉を開けて中の様子を窺う。
 ギルド内には数名の冒険者が居たが、意外にも清潔に保たれているようで、男性特有の体臭や酒の匂いはしなかった。
 ラノベでは、冒険者ギルドに酒を提供する食堂が併設されていたりしたのだが、どうやらこの冒険者ギルドは違うみたい。
 体を中に滑り込ませて後ろ手に扉を閉める。
 真正面奥にあるのが受付カウンタ―だろうか。
 数ヵ所設置されている中で唯一空いていたカウンタ―へ向かう。
 すると、カウンタ―で暇を持て余していた中年の女性がすぐに私の存在に気がついて、笑顔を見せて話しかけてきた。

「あら、おはよう。初めて見るけど冒険者登録に来たのかしら?」

 若干カウンターから身を乗り出すような形で話しかけられて、私は足早に近づいて答えた。

「おはようございます。はい、冒険者登録をお願いします」

 短く答えてペコッと頭を下げた。
 女性は柔らかく目を細めて感嘆の声を上げた。

「まぁ!そんなに幼いのにきちんと受け答えが出来るなんて偉いわねぇ。冒険者登録ね。それじゃあ、この用紙に記入してもらえるかしら?あっ!文字の読み書きは出来る?無理ならおばちゃんが書くわよ」

 この前十歳の誕生日を迎えたんだけど、彼女の目にはそれより幼く見えているのだろうか。
 まるで母親のように親身になってくれる女性の気遣いが嬉しくて、自然と笑顔になっていた。

「読み書きは出来ます。お気遣いありがとうございます」

 返事をした私に、女性の細められた目が一層細くなって向けられた。
 女性の視線が肩に移動したかと思うと、一瞬大きく目が見開かれた。

「うふふ。しっかりしているのね。あら?その猫ちゃんはあなたの従魔かしら?だったらここの欄に従魔の有無を記入しておいてね。綺麗な耳飾りを付けてもらって良かったわねぇ」

 女性に指で差された用紙に視線を向けた。
 そこには従魔の有無と、他の魔物とを区別するための首輪や腕輪を身に着ける義務があることが書かれていた。
 猫って従魔になるの?
 ペットじゃないの?
 内心首を捻りつつも、女性に言われた通りに記入していく。
 記入した項目は、名前、年齢、従魔の有無にチェックをつけたことくらいで、特に根掘り葉掘り聞かれることはなかった。
 何だか呆気ない手続きに、緊張で強張っていた体が一気に解れていく。
 カ―ドをカウンタ―に置いて女性が説明をし始めた。

「このカ―ドが冒険者カ―ドよ。登録したばかりだから最低ランクからになるけど、実績を積んで行けばランクが上がっていくわ。ランクが上がれば報酬も上がるけど、決して無理な依頼は受けないように。報酬より命の方が大事なのだから」

 真剣な眼差しを向けられて、了解したと言うように大きく首を縦に振った。
 女性は満足気に頷き返すと、話しを続けた。

「あと、カ―ドだけど、受け取った報酬を預けておけるから、どこの冒険者ギルドでも出し入れは可能よ。手数料は取られるけど、手元に置いておくよりは安全だし本人にしか使えないようにしてあるから安心して。冒険者ギルドと提携しているお店なら、カ―ドを提示するだけで宿泊したり買い物が出来るから上手く活用してね」

 なるほど、冒険者カ―ドは身分を証明するだけでなく、銀行のような役割もあるのか。
 確かに、大金を持ち歩くのは落ち着かないだろうし不安だろう。
 どんな仕組みかは知らないけど、本人にしか使えないと言うのならありがたく使わせてもらおう。

「はい、分かりました。ありがとうございます」

「うふふ。理解が早くて助かるわ。それじゃあ、最後にカ―ドに血を一滴垂らせば登録は完了するから手を出してもらえるかしら」

 女性はニッコリと微笑みながら、針のような物を手に取った。
 ……ああ、そういうことか。
 昔から注射が苦手だった私は、目をギュッと瞑って手を差し出した。
 一瞬チクッとしたが、次の瞬間には痛みが引いていた。

「……あれ?痛くない……」

 目を開けて刺された箇所を見るが、どこにも痕が残っていなかった。
 そんな私を見て女性は柔らかく微笑んで答えた。

「うふふ。針に治癒魔法を付与しているの。だから、思ったほど痛くはなかったでしょう?」

 治癒魔法!
 あれだけメイスに指導を受けたというのに、すっかり魔法の存在を忘れていた。
 チラッと肩に乗るメイスに視線を向けると、メイスは呆れたように鼻を鳴らした。
 恥ずかしさで顔を赤く染めながらも無事冒険者登録を終えた私は、早口で女性にお礼を伝えるとそそくさとその場を後にした。

 その手には、鉄錆てつさび色の真新しいカ―ドを握りしめていた。
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