30 / 180
第一章
第30話 カントーリの冒険者ギルド
しおりを挟む
「はふぅ……。熊肉があんなに美味しいなんて知らなかったわ。また食べたいなぁ」
ポッコリと膨らんだお腹を擦りながら、肩にメイスを乗せて通りを歩く。
メイスも熊肉には満足したようで、顔や前足を舐めながら相槌を打つ。
『ああ。ブラッディホーンベアがあんなに美味いとはな。雑魚だと思って相手にしなかったが、これからは食材の目録に加えておこう』
メイスが何か恐ろしい事をサラッと言ったが、私は敢えて無視をした。
さて、今日はこのまま街を発つ前に寄っておきたい場所がある。
私達はその場所へ足を進めた。
ある看板が目に入り足を止めて見上げる。
ロージスの街でも見た剣と盾と動物が描かれており、その下には冒険者ギルドの文字が刻まれていた。
「ここだ。メイス、入るよ」
それだけをメイスに伝えて冒険者ギルドの扉に手をかけた。
冒険者ギルドに来るのは二度目となるが、やはり未だに緊張してしまう。
そっと扉を引いて中に足を踏み入れると、そこには冒険者達が多く集まっていた。
ほとんどの冒険者は成人を迎えているようで、皆背が高く見上げていると首が痛くなって辛い。
精神は大人だけど、体は十歳を迎えたばかりの子供にすぎない私には、彼等が大きな壁のように見えて前に進むにもひと苦労だ。
彼等の間を縫うように進み、受付カウンターへと向かう。
「おはようございます。あのぅ、買い取りをお願いします」
私が声をかけると、受付で作業をしていた女性が声に気がついて顔を上げた。
若い女性は一瞬目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべて尋ねた。
「おはようございます。買い取りですね。失礼ですが、冒険者カードをお持ちですか?」
若い女性の問いかけに、すぐさま斜め掛けのバッグから冒険者カードを取り出してカウンターに置いた。
「はい。冒険者カードです」
「お預かりします。少々お待ちください」
若い女性は手慣れた様子でカウンターに置かれた冒険者カードを手に取ると、こちらから見えない場所で何やら作業をし始めた。
それから一分も経たずに、次の質問を投げかけてきた。
「確認いたしました。では、買い取りとのことですが、どんなものか伺ってもよろしいですか?」
女性に尋ねられた私は頷いて素直に答えた。
「はい。先ず『ホーリー草』が五本と、『ブラッディホーンボア』が一体、それと――」
そこまで口にした途端、カウンターから身を乗り出した女性が、慌てたように私の口を手で押さえてきた。
何が起きたのか分からないまま固まっていたら、女性は周囲に視線を向けた後、声を潜めて自分について来るように囁いた。
女性に言われるままついて行くと、そこは二階の個室だった。
ソファに座って待つように言われた私は、頭上に幾つもの疑問符を浮かべながら腰を下ろす。
女性は丁寧な対応で待つように言うと、足早に個室から出て行った。
メイスと二人個室に残された私は、段々と不安が襲ってきた。
「……ねぇ、メイス。私、何かおかしな事したのかな?」
肩に乗っていたメイスは膝の上に飛び降りると、首を傾けて返事をした。
『さあな。人間のことは俺には分からん。まっ、お前に害を成そうとするなら、この俺が懲らしめてやるから安心しろ』
メイスなら本当にやりかねない。
出来れば穏便に済ませたいのだが、見た目が子供の私ではちゃんと対応出来るのか不安だ。
私はメイスに視線を向けて、大事にならないように言い含めた。
「メイス。私、出来れば目立ちたくないの。だから、大人しくしてもらえると助かる。くれぐれも暴れたり大怪我を負わせることはしないでね」
ジッと目線を合わせて言い含むようにお願いされたメイスは、ふいっと視線を逸らすと不承不承ながら返事をした。
『……人間とは面倒な生き物だな。分かった。大人しくしていよう。だが、命の危険があると判断したら勝手に行動をさせてもらうぞ』
膝の上に顎を乗せて横になったメイスは、これ以上の議論を避けるように琥珀色の瞳を閉じた。
その後、静寂に包まれた個室で緊張したまま訪れを待った。
ポッコリと膨らんだお腹を擦りながら、肩にメイスを乗せて通りを歩く。
メイスも熊肉には満足したようで、顔や前足を舐めながら相槌を打つ。
『ああ。ブラッディホーンベアがあんなに美味いとはな。雑魚だと思って相手にしなかったが、これからは食材の目録に加えておこう』
メイスが何か恐ろしい事をサラッと言ったが、私は敢えて無視をした。
さて、今日はこのまま街を発つ前に寄っておきたい場所がある。
私達はその場所へ足を進めた。
ある看板が目に入り足を止めて見上げる。
ロージスの街でも見た剣と盾と動物が描かれており、その下には冒険者ギルドの文字が刻まれていた。
「ここだ。メイス、入るよ」
それだけをメイスに伝えて冒険者ギルドの扉に手をかけた。
冒険者ギルドに来るのは二度目となるが、やはり未だに緊張してしまう。
そっと扉を引いて中に足を踏み入れると、そこには冒険者達が多く集まっていた。
ほとんどの冒険者は成人を迎えているようで、皆背が高く見上げていると首が痛くなって辛い。
精神は大人だけど、体は十歳を迎えたばかりの子供にすぎない私には、彼等が大きな壁のように見えて前に進むにもひと苦労だ。
彼等の間を縫うように進み、受付カウンターへと向かう。
「おはようございます。あのぅ、買い取りをお願いします」
私が声をかけると、受付で作業をしていた女性が声に気がついて顔を上げた。
若い女性は一瞬目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべて尋ねた。
「おはようございます。買い取りですね。失礼ですが、冒険者カードをお持ちですか?」
若い女性の問いかけに、すぐさま斜め掛けのバッグから冒険者カードを取り出してカウンターに置いた。
「はい。冒険者カードです」
「お預かりします。少々お待ちください」
若い女性は手慣れた様子でカウンターに置かれた冒険者カードを手に取ると、こちらから見えない場所で何やら作業をし始めた。
それから一分も経たずに、次の質問を投げかけてきた。
「確認いたしました。では、買い取りとのことですが、どんなものか伺ってもよろしいですか?」
女性に尋ねられた私は頷いて素直に答えた。
「はい。先ず『ホーリー草』が五本と、『ブラッディホーンボア』が一体、それと――」
そこまで口にした途端、カウンターから身を乗り出した女性が、慌てたように私の口を手で押さえてきた。
何が起きたのか分からないまま固まっていたら、女性は周囲に視線を向けた後、声を潜めて自分について来るように囁いた。
女性に言われるままついて行くと、そこは二階の個室だった。
ソファに座って待つように言われた私は、頭上に幾つもの疑問符を浮かべながら腰を下ろす。
女性は丁寧な対応で待つように言うと、足早に個室から出て行った。
メイスと二人個室に残された私は、段々と不安が襲ってきた。
「……ねぇ、メイス。私、何かおかしな事したのかな?」
肩に乗っていたメイスは膝の上に飛び降りると、首を傾けて返事をした。
『さあな。人間のことは俺には分からん。まっ、お前に害を成そうとするなら、この俺が懲らしめてやるから安心しろ』
メイスなら本当にやりかねない。
出来れば穏便に済ませたいのだが、見た目が子供の私ではちゃんと対応出来るのか不安だ。
私はメイスに視線を向けて、大事にならないように言い含めた。
「メイス。私、出来れば目立ちたくないの。だから、大人しくしてもらえると助かる。くれぐれも暴れたり大怪我を負わせることはしないでね」
ジッと目線を合わせて言い含むようにお願いされたメイスは、ふいっと視線を逸らすと不承不承ながら返事をした。
『……人間とは面倒な生き物だな。分かった。大人しくしていよう。だが、命の危険があると判断したら勝手に行動をさせてもらうぞ』
膝の上に顎を乗せて横になったメイスは、これ以上の議論を避けるように琥珀色の瞳を閉じた。
その後、静寂に包まれた個室で緊張したまま訪れを待った。
196
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる