転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第57話 王都観光

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 王都に来て三日目。

 グローブフォレスト商会で醬油を手に入れるという目的を達成した私は、今日はのんびりと王都を観光しようと決めた。
 朝食を摂って部屋に戻ると、メイスに今日の予定を相談した。

「メイス。今日は王都をぶらぶらしようと思うんだけど、どうかな?」

 ベッドに寝転んでいたメイスは、興味無さそうに尻尾を揺らしながら応えた。

『お前の好きにしたら良い。俺はお前の行きたい所に着いて行くだけだ』

 猫だもんね。
 人間の街や暮らしには興味が無いのだろう。
 でも、あの家を逃げるように出てからというもの、ゆっくりと街を見て回る時間なんてなかった。
 幸いにも目的は達成したし、残り四日はのんびりと過ごしたい。
 窓から眺める景色は観光にうってつけの晴天に恵まれていた。

「ありがとう。今日は王都観光のお供よろしく」

 ベッドに寝転んだままのメイスに視線を向けると、メイスはゆっくりと起き上がる。
 斜め掛けのバッグを片手に、私はメイスを肩に乗せて王都観光に繰り出した。








 王都は、今まで立ち寄った街とは比べ物にならないくらいお洒落な建物が多く建ち並んでおり、街を行き交う人々の服装も洗練されているように見える。
 特に、女性の髪型や服装は、街によって多少の変化があるように思う。
 まあ、じっくりと観察したわけではないから、どこがどう違うのか答えられないのだけど。

 それはさておき、王都は本当に人が多い。
 これだけの人間が、高い城壁に囲まれた王都で暮らしているなんて信じられない。
 一般の人達は一体どんな暮らしをしているのか気になってしまう。

「ん?あれは何?」

 大通りを歩いていたら、ふと広場が視界に飛び込んできて足を止める。
 ジッと視線を凝らして見ると、野菜や果物などの食料品や、布や小物などの雑貨が並べてあるのが見えた。
 所謂いわゆる、朝市とかフリーマーケットのようなものだろうか。
 興味が湧いた私は、吸い寄せられるように広場へと足を向けた。

「うわぁ……。見たことがない野菜がある。あっ、あの布きれい」

 見たことのない形の野菜や、手作り感溢れる布に瞳を輝かせて見ていく。
 こうしてゆっくりとこの世界の物を見るのは新鮮で楽しい。
 人混みを縫うように歩きながら、あちこちの店を見て回った。








 季節は初夏。照りつける太陽がじりじりと暑い。
 それに加え、この人混みだ。
 どうやら熱気に充てられてしまったようだ。
 人混みから離れて広場のベンチに腰を下ろす。

「ふぅ……。人混みに酔っちゃった」

 ベンチに腰を下ろしたまま、行き交う人々の様子を眺めた。
 この広場に来る人達のほとんどが、食料品を買いに来ているようだ。
 ということは、ここは王都民が利用する場所なのだろう。
 だとしたら、王都に来る観光客はどこを観光しているのだろうか?
 ふと、視線を上に向けると二重になった城壁の中心部に、白い大きな建物の一部分が見えた。
 その白い建物は某ランドの城のように高くそびえ立っていた。

「あれは……お城?」

 私の呟きにメイスが答える。

『王城だな』

 王城?テレビやネットでヨーロッパの城を見たことがあるけど、それより明らかに豪華で大きい。
 実際に目にしたのは初めてだったので、もっと間近で見たいと興味が湧いて立ち上がる。

「ね、メイス。王城をもっと近くで見よう」

「坊や。平民は王城に近づけないからやめときな」

 そうメイスに声をかけた私の背後から話しかけられて振り返る。
 振り返った先には、深緑色のローブを羽織った老婆が曲がった腰に手をあてて立っていた。

「坊や、王都へは初めてかい?だったら一つ忠告しておくからよくお聞き。この王都は王城を中心に三重の城壁に守られておる。あの城壁から向こうはお貴族様の住まう場所になっておるから、あたしら平民は滅多に入れないようになってるのさ。もし、平民が用もなく近づけば、良くて牢屋行きか最悪その場で斬り殺されちまう。悪いことは言わん。王城が見たければ遠くから眺めるだけにしておきな」

 老婆はそれだけ言うと去って行った。
 私は老婆の背中を見送りながら、異世界って恐ろしい所だと身を震わせた。
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