転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第76話 『ホーリー草』再び

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 メイスの言葉に、上空を茫然と眺めていたヒデさんがポツリと呟いた。

「あれが、魔法……。僕にも魔法が使えるんだ。まだ夢を見ているようで実感が湧かないや」

 その言葉を聞いて、私も最初の頃はヒデさんと同じ感想を抱いたなと思い出す。
 それから、尻餅をついて茫然としたままのヒデさんの手をとって立ち上がらせると、私は笑顔を向けて話しかけた。

「凄い威力だね。実感が湧かない気持ちも分かるよ。ヒデさん、体から何かが抜けていく感覚があったでしょ?それが魔力だよ。使い過ぎると枯渇しちゃうから、配分を考えて魔法を使おうね」

 メイスの指導を受けていた時、私も何度も魔力が枯渇しかけたことがあった。
 頭は痛いし意識は朦朧としちゃうし変な脂汗は出るし、あれは本当に辛かった。
 そのおかげで、効率よく魔法を使えないか私なりに試行錯誤を繰り返したのだが。
 今ではあの頃より魔力量も増え、制御も上手くなったように思う。
 数か月前のことを懐かしんでいたら、ヒデさんが口を開いた。

「……魔力が枯渇。そう言えば、体から何かがごっそり抜けていく感覚があったような……。あれが魔力なのかぁ」

 ヒデさんが独り言のように呟くと、私の肩に飛び乗ってきたメイスが話し始めた。

『ああ、そうだ。魔力量を把握するのも重要なことだ。何も考えずに魔法を乱発すれば、いくら魔力量が多くても枯渇してしまう。ユーリには枯渇するぎりぎりまで魔力を使わせたことがあったが、今では魔力量が増えて新たなスキルもついた。肉体的には辛かっただろうが、この方法は魔力量を増やすには有効だ。お前も覚悟しておけ』

 メイス的には私のためを思っての指導だったようだ。
 あの地獄のような鍛錬の日々を思い出して遠い目になる。
 ヒデさんは、遠い目をした私を見て頬を引きつらせて返事をした。

「……あ、はい」

 うんうん、気持ちはよく分かるよ。
 でもね、メイスもちゃんと考えて指導するつもりだろうから、死ぬことはないと思う。
 だけど、まぁ、あれはきつかったなぁ……。







翌日から鬼教官メイスの指導の下、朝から晩まで魔法の鍛錬が始まった。
新人冒険者向けの狩り場でメイスとヒデさん、私とブロンの二手に別れて行動を開始する。

「ブロン。しばらくメイス達と別行動になるけど大丈夫?」

 森を目指しながら横を歩くブロンに尋ねると、ブロンの元気な声が返ってきた。

『うん!おねえちゃんが一緒ならへいき!今日はいっぱいあそんでいいの?』

 ブロンにとっては、薬草採取も魔物の討伐もただの遊びという認識なのだろう。
 ふさふさの白い尻尾を勢いよく振って、好奇心に満ちた眼差しを向けてきた。
 愛らしい姿に頬が緩むが、だからと言って甘やかしてはいけないと顔を引き締める。
 私はブロンと目線を合わせるように屈むと、ブロンをジッと見据えて口を開いた。

「遊んでいいけど近くに人が居るかもしれないから、元の大きさになるのは駄目だよ。約束出来る?」

『うん!ぼく、いい子!やくそくまもる!』

 とても良い返事に、キリッと引き締めていた頬が緩んでしまう。
 可愛いは正義だ。
 ちょこんとお座りしてこちらを見上げるブロンの頭をわしゃわしゃと撫でる。

「うん。ブロンはいい子。じゃあ、行こうか」

 ブロンに声をかけて立ち上がると、森に向かって再び歩を進めた。







 森に入ると同時にスキルを発動させて、依頼の薬草を探していく。
 そう言えば、依頼を受けるのは随分と久しぶりな気がする。
 やっと冒険者らしくなったと笑みを浮かべながら目的の薬草を摘み取っていると、目の端にある薬草がふと視界に飛び込んできた。
 ギザギザした葉の形は『ホーリー草』と同じだ。
 ジッと目を凝らしていたら、その薬草が『ホーリー草』であることが分かった。

「……『ホーリー草』だ。あの時は何も考えずに全部売ってしまったから、いくつか残しておけば良かったって思っていたんだよねぇ。なかなか見つからなくて後悔したけど、見つけられて本当に良かった」

 希少というだけあって、あれから『ホーリー草』を見つけ出せずにいたけど、これで万が一のことがあっても何とかなりそうだ。
 満面の笑みを浮かべた私は『ホーリー草』に向かって手を合わせた。

「ありがたやありがたや」

 その後、数本を残して『ホーリー草』を摘み取った私は、森を駆け回るブロンに視線を向けて柔らかく微笑んだ。
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