転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
78 / 180
第二章

第78話 異世界って不思議なことだらけ

しおりを挟む
 メイスが用意してくれた昼食を摂りながら、私とヒデさんはブロンのもふもふの毛並みについて会話に花を咲かせていた。

「あれだけのもふもふを堪能出来るなんて思ってもみなかったな。癒されるってこのことを言うんだね」

 満足そうな表情で話すヒデさんに、私も何度も頷いて相槌を打つ。

「でしょでしょ。あのもふもふは中毒になるよね~」

 もっぱら子犬の姿でいることの方が多かったため、久しぶりに馬のような大きさのブロンを抱きしめられて大満足した私は、顔の筋肉を緩ませて膝に抱えたブロンの頭を撫で回した。
 子犬の姿になって頭を撫で回されているブロンは、私達の会話の意味が分からないのか、こてんと首を傾けて大人しく撫でられている。
 その仕草が可愛くてますます目尻は垂れ、頬は緩み口元はだらしなく開いてしまう。
 肉を綺麗に平らげたメイスが顔を上げて、呆れたような声色で呟いた。

『……顔が緩みまくっているぞ』

「え~。だって、ブロンが可愛すぎるんだもん。ふっわふわのもっふもふって最強じゃない」

 呆れたメイスにそう応えると、最強という単語に反応したブロンが顔を上げて尻尾をパタパタと振って弾んだ声で言った。

『ぼく、さいきょー!おねえちゃん、まもの狩る?』

 あれだけ魔物を狩ったのに、まだ狩るつもりなの?
 運動はこまめにさせているつもりなんだけど、どれだけ体力が有り余っているのだろう。
 私は苦笑を浮かべてブロンの頭を撫でる。

「うんうん、ブロンは可愛くて最強だね。でも、魔物はもういいかな。体を動かしたいのなら私に遠慮しないで走り回って良いよ。あっ、ただし、その姿のままでって意味だからね。元の大きさで走り回るのは駄目だよ」

 咄嗟に言葉を付け加えてブロンに諭すように話しかけると、ブロンは分かっているよと言うように尻尾をパタパタと揺らしながら応えた。

『うん!大きくなったらおねえちゃんたちが困るんでしょう?ぼく、大きくならないよ』

 そう言って膝から飛び降りたブロンは、一度こちらを振り返って見上げると告げた。

『あそんでくる。おねえちゃんはおじちゃんとあそんでて』

 そう告げるなり、ブロンは丸い体を器用に動かして転がるように駆けて行った。

「やっぱり、運動が足りていなかったみたいね。ふふ。もの凄い速さで行っちゃった」

 元気に駆けて行ったブロンの後ろ姿を見送って呟くと、ヒデさんが口を開いた。

「普通の子犬みたい。ブロンがフェンリルだなんて、あの姿から想像出来ないよ。本当に異世界って不思議」

 ヒデさんの言葉を耳にして、この不思議な日常が当たり前のことになっていたのだと気づく。
 人間の順応力の高さに、自分自身のことながら感心してしまう。
 私もすっかりこの世界に馴染んでいたことに内心驚きつつ、些細なことに気づかせてくれたヒデさんに心の中で感謝の言葉を述べた。

 とは言え、私も外の世界に出て数か月しか経っていないから、この世界に詳しい訳ではない。
 ヒデさんと共にゆっくりとこの世界に馴染んでいけば良いと考えている。
 私は、自身が経験したことや思ったことをヒデさんに伝えた。

「そうだね。異世界って不思議なことだらけだね。魔法もそうだけど、無理に仕組みを理解しようと思わずにそんなものだと受け入れると、意外と簡単に魔法が使えたりするから不思議だよね。色々と悩んだ自分が馬鹿らしく思えてきちゃうよ」

「……なるほど。そんなもの、か。確かに、仕組みが気になっちゃって、考えれば考えるほど頭がこんがらがって魔法が発動しないこともあったなぁ。科学とは全くの別ものと考えた方がいいってことか。……うん、なんか気が楽になった」

 私の言葉に耳を傾けていたヒデさんは何かに納得したように頷くと、晴れ晴れとした表情を見せた。
 吹っ切れたようなその表情を見て、私も微笑んで頷く。
 すると、そのタイミングでメイスが口を開いた。

『そろそろ話しは終わったか?魔法の鍛錬を再開するぞ』

 メイスに急き立てられるようにしてヒデさんが立ち上がると、すぐに魔法の鍛錬が再開した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...