87 / 180
第二章
第87話 国境越え
しおりを挟む
朝食を済ませて荷物を纏めると、国境を越えるために門へと向かう。
早朝にも関わらず、門の前には多くの人達が列を成していた。
「もうあんなに行列が出来てる……。急ごう」
ブロンを抱え上げて告げると、口をポカンと開けて見つめていたヒデさんがハッと我に返って頷いた。
「あ、うん。……にしても、こんな朝早くから多くの人が並んでるなんて驚いたな」
ポツリと呟いたヒデさんの言葉に私も頷き返して、列に並んだ人達を見て呟いた。
「そうだね。でも、移動手段が少ないこの世界だから、少しでも早く目的地に着きたいんだろうね。私も冒険者になって早起きになったもの」
公共交通機関が充実していないこの世界において、移動手段はとても少ない。
私はどちらかというと朝は弱い方だったのだが、徒歩で移動していたため自然と朝型になっていた。
「へぇ……。やっぱり移動が徒歩か馬車なのは辛いね。魔法でパッと移動出来たら便利なのに……」
ヒデさんが零した言葉に私は苦笑する。
魔法がある世界とは言え、魔法は万能ではない。
しかし、一つだけそれを可能にする魔法が存在する。
転移魔法だ。
転移魔法は一度行った場所であれば転移は可能なのだが、それを行うには膨大な魔力量が必要となる。
私も、メイスの指導の下転移魔法を試したことがあるが、魔法の仕組みが分からないまま転移魔法を使うのは恐ろしくて、未だ数メートル先にしか転移したことがない。
便利と言えば便利なのだが、何でも理屈っぽく考える私には到底使いこなせるとは思えなかった。
そんなことを考えていたら、ヒデさんがぶつぶつと独り言のように呟き始めた。
「瞬間移動って出来ないかなぁ。どこでも〇アみたいにパッと移動出来る魔法があれば便利だよなぁ……」
ヒデさんの何気ない一言に、私は目から鱗が落ちる思いがした。
なるほど!どこでも〇アか!
それなら私にもイメージが出来る。
やはり本物の若者は考えが柔軟だ。
私はヒデさんの肩をポンと叩いて笑みを浮かべた。
「良いヒントをくれてありがとう」
「……ん?何のこと?」
言葉の意味が分からないヒデさんは、頻りと首を捻る。
私は笑みを浮かべたまま、行列を作る人達に視線を向けて話しを続けた。
「とにかく、先ずは国境を越えなくちゃ。さっさと列に並ぼう」
「うん?」
ヒデさんは首を捻りながらも返答すると、先を歩き始めた私の後に続いて行列に加わった。
列に並ぶこと体感にして三十分。
アルファイド王国に入国する人達が意外と多くて、入国審査に随分と時間がかかっている。
今までのように簡単な審査とはいかないようだ。
特に荷馬車は時間をかけて入念にチェックしており、甲冑を身に着けた数名の者達が見落としのないように隈なく見て回っている。
やはり、国境ともなれば審査も厳しくなるのだろう。
その様子に私は喉をごくりと上下させた。
不安な気持ちの私とは裏腹に、肩で大人しく様子を見ていたメイスが退屈そうに呟いた。
『国境を越えるだけだというのにえらく時間がかかるのだな。これでは日が暮れてしまうぞ』
「国境だからね。今までと同じとはいかないでしょ」
そう返事をしたものの、内心では私もメイスと同じことを思っていた。
不安と緊張を抱えたまま順番が来るのを待ち続けていると、ようやく私達の番がやってきた。
「身分証の提示を」
甲冑を身に着けた男性に言われて、予め手に持っていた冒険者カードを見せる。
男性はじっくりとカードに目を通した後、抱きかかえているブロンと肩に乗っているメイスに視線を走らせると口を開いた。
「冒険者か。その従魔はシルバーウルフの変異種か?」
ブロンはシルバーウルフと言われたのが嫌だったようで、その男性に文句を言う。
『ぼく、フェンリルだよ!シルバーウルフじゃないもん!』
しかし、その声は男性には届かない。
男性は驚いて私から少し距離をとると、私に向かって注意を促してきた。
「急に吠えだしたがその従魔が暴れないように見張っておけ。まだ子供のようだが、魔物は魔物。人に危害を加えることがないようにしっかりと躾けるように」
男性はしっしっと手で振り払うような仕草を見せると、ヒデさんに身分証を出すように促す。
どうやら入国審査は終了のようだ。
私はさっさと冒険者カードを仕舞うと、ブロンを宥めながらヒデさんの入国審査が終わるのを待った後、分厚くて頑丈な門を潜った。
早朝にも関わらず、門の前には多くの人達が列を成していた。
「もうあんなに行列が出来てる……。急ごう」
ブロンを抱え上げて告げると、口をポカンと開けて見つめていたヒデさんがハッと我に返って頷いた。
「あ、うん。……にしても、こんな朝早くから多くの人が並んでるなんて驚いたな」
ポツリと呟いたヒデさんの言葉に私も頷き返して、列に並んだ人達を見て呟いた。
「そうだね。でも、移動手段が少ないこの世界だから、少しでも早く目的地に着きたいんだろうね。私も冒険者になって早起きになったもの」
公共交通機関が充実していないこの世界において、移動手段はとても少ない。
私はどちらかというと朝は弱い方だったのだが、徒歩で移動していたため自然と朝型になっていた。
「へぇ……。やっぱり移動が徒歩か馬車なのは辛いね。魔法でパッと移動出来たら便利なのに……」
ヒデさんが零した言葉に私は苦笑する。
魔法がある世界とは言え、魔法は万能ではない。
しかし、一つだけそれを可能にする魔法が存在する。
転移魔法だ。
転移魔法は一度行った場所であれば転移は可能なのだが、それを行うには膨大な魔力量が必要となる。
私も、メイスの指導の下転移魔法を試したことがあるが、魔法の仕組みが分からないまま転移魔法を使うのは恐ろしくて、未だ数メートル先にしか転移したことがない。
便利と言えば便利なのだが、何でも理屈っぽく考える私には到底使いこなせるとは思えなかった。
そんなことを考えていたら、ヒデさんがぶつぶつと独り言のように呟き始めた。
「瞬間移動って出来ないかなぁ。どこでも〇アみたいにパッと移動出来る魔法があれば便利だよなぁ……」
ヒデさんの何気ない一言に、私は目から鱗が落ちる思いがした。
なるほど!どこでも〇アか!
それなら私にもイメージが出来る。
やはり本物の若者は考えが柔軟だ。
私はヒデさんの肩をポンと叩いて笑みを浮かべた。
「良いヒントをくれてありがとう」
「……ん?何のこと?」
言葉の意味が分からないヒデさんは、頻りと首を捻る。
私は笑みを浮かべたまま、行列を作る人達に視線を向けて話しを続けた。
「とにかく、先ずは国境を越えなくちゃ。さっさと列に並ぼう」
「うん?」
ヒデさんは首を捻りながらも返答すると、先を歩き始めた私の後に続いて行列に加わった。
列に並ぶこと体感にして三十分。
アルファイド王国に入国する人達が意外と多くて、入国審査に随分と時間がかかっている。
今までのように簡単な審査とはいかないようだ。
特に荷馬車は時間をかけて入念にチェックしており、甲冑を身に着けた数名の者達が見落としのないように隈なく見て回っている。
やはり、国境ともなれば審査も厳しくなるのだろう。
その様子に私は喉をごくりと上下させた。
不安な気持ちの私とは裏腹に、肩で大人しく様子を見ていたメイスが退屈そうに呟いた。
『国境を越えるだけだというのにえらく時間がかかるのだな。これでは日が暮れてしまうぞ』
「国境だからね。今までと同じとはいかないでしょ」
そう返事をしたものの、内心では私もメイスと同じことを思っていた。
不安と緊張を抱えたまま順番が来るのを待ち続けていると、ようやく私達の番がやってきた。
「身分証の提示を」
甲冑を身に着けた男性に言われて、予め手に持っていた冒険者カードを見せる。
男性はじっくりとカードに目を通した後、抱きかかえているブロンと肩に乗っているメイスに視線を走らせると口を開いた。
「冒険者か。その従魔はシルバーウルフの変異種か?」
ブロンはシルバーウルフと言われたのが嫌だったようで、その男性に文句を言う。
『ぼく、フェンリルだよ!シルバーウルフじゃないもん!』
しかし、その声は男性には届かない。
男性は驚いて私から少し距離をとると、私に向かって注意を促してきた。
「急に吠えだしたがその従魔が暴れないように見張っておけ。まだ子供のようだが、魔物は魔物。人に危害を加えることがないようにしっかりと躾けるように」
男性はしっしっと手で振り払うような仕草を見せると、ヒデさんに身分証を出すように促す。
どうやら入国審査は終了のようだ。
私はさっさと冒険者カードを仕舞うと、ブロンを宥めながらヒデさんの入国審査が終わるのを待った後、分厚くて頑丈な門を潜った。
106
あなたにおすすめの小説
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。
ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。
現在は
『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』
として連載中です。2026.1.31
どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。
あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。
そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。
だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。
そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。
異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。
畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。
……なのに、人々の噂はこうだ。
「森に魔王がいる」
「強大な魔物を従えている」
「街を襲う準備をしている」
――なんでそうなるの?
俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。
これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、
のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。
■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる