転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第87話 国境越え

 朝食を済ませて荷物を纏めると、国境を越えるために門へと向かう。
 早朝にも関わらず、門の前には多くの人達が列を成していた。

「もうあんなに行列が出来てる……。急ごう」

 ブロンを抱え上げて告げると、口をポカンと開けて見つめていたヒデさんがハッと我に返って頷いた。

「あ、うん。……にしても、こんな朝早くから多くの人が並んでるなんて驚いたな」

 ポツリと呟いたヒデさんの言葉に私も頷き返して、列に並んだ人達を見て呟いた。

「そうだね。でも、移動手段が少ないこの世界だから、少しでも早く目的地に着きたいんだろうね。私も冒険者になって早起きになったもの」

 公共交通機関が充実していないこの世界において、移動手段はとても少ない。
 私はどちらかというと朝は弱い方だったのだが、徒歩で移動していたため自然と朝型になっていた。

「へぇ……。やっぱり移動が徒歩か馬車なのは辛いね。魔法でパッと移動出来たら便利なのに……」

 ヒデさんが零した言葉に私は苦笑する。

 魔法がある世界とは言え、魔法は万能ではない。
 しかし、一つだけそれを可能にする魔法が存在する。
 転移魔法だ。
 転移魔法は一度行った場所であれば転移は可能なのだが、それを行うには膨大な魔力量が必要となる。
 私も、メイスの指導の下転移魔法を試したことがあるが、魔法の仕組みが分からないまま転移魔法を使うのは恐ろしくて、未だ数メートル先にしか転移したことがない。
 便利と言えば便利なのだが、何でも理屈っぽく考える私には到底使いこなせるとは思えなかった。
 そんなことを考えていたら、ヒデさんがぶつぶつと独り言のように呟き始めた。

「瞬間移動って出来ないかなぁ。どこでも〇アみたいにパッと移動出来る魔法があれば便利だよなぁ……」

 ヒデさんの何気ない一言に、私は目から鱗が落ちる思いがした。
 なるほど!どこでも〇アか!
 それなら私にもイメージが出来る。
 やはり本物の若者は考えが柔軟だ。
 私はヒデさんの肩をポンと叩いて笑みを浮かべた。

「良いヒントをくれてありがとう」

「……ん?何のこと?」

 言葉の意味が分からないヒデさんは、頻りと首を捻る。
 私は笑みを浮かべたまま、行列を作る人達に視線を向けて話しを続けた。

「とにかく、先ずは国境を越えなくちゃ。さっさと列に並ぼう」

「うん?」

 ヒデさんは首を捻りながらも返答すると、先を歩き始めた私の後に続いて行列に加わった。







 列に並ぶこと体感にして三十分。
 アルファイド王国に入国する人達が意外と多くて、入国審査に随分と時間がかかっている。
 今までのように簡単な審査とはいかないようだ。
 特に荷馬車は時間をかけて入念にチェックしており、甲冑を身に着けた数名の者達が見落としのないように隈なく見て回っている。
 やはり、国境ともなれば審査も厳しくなるのだろう。
 その様子に私は喉をごくりと上下させた。
 不安な気持ちの私とは裏腹に、肩で大人しく様子を見ていたメイスが退屈そうに呟いた。

『国境を越えるだけだというのにえらく時間がかかるのだな。これでは日が暮れてしまうぞ』

「国境だからね。今までと同じとはいかないでしょ」

 そう返事をしたものの、内心では私もメイスと同じことを思っていた。
 不安と緊張を抱えたまま順番が来るのを待ち続けていると、ようやく私達の番がやってきた。
 
「身分証の提示を」

 甲冑を身に着けた男性に言われて、予め手に持っていた冒険者カードを見せる。
 男性はじっくりとカードに目を通した後、抱きかかえているブロンと肩に乗っているメイスに視線を走らせると口を開いた。

「冒険者か。その従魔はシルバーウルフの変異種か?」

 ブロンはシルバーウルフと言われたのが嫌だったようで、その男性に文句を言う。

『ぼく、フェンリルだよ!シルバーウルフじゃないもん!』

 しかし、その声は男性には届かない。
 男性は驚いて私から少し距離をとると、私に向かって注意を促してきた。

「急に吠えだしたがその従魔が暴れないように見張っておけ。まだ子供のようだが、魔物は魔物。人に危害を加えることがないようにしっかりと躾けるように」

 男性はしっしっと手で振り払うような仕草を見せると、ヒデさんに身分証を出すように促す。
 どうやら入国審査は終了のようだ。
 私はさっさと冒険者カードを仕舞うと、ブロンを宥めながらヒデさんの入国審査が終わるのを待った後、分厚くて頑丈な門を潜った。

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