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第二章
第90話 ヒデさんの親友
転生者で英雄のショータさんがカミール家初代当主だったなんて、こんな偶然ってあるだろうか?
だけど、そう考えたら私の髪や瞳が黒いのも納得できる。
隔世遺伝というものだろう。
この世界は魔法が存在するため、科学というものが発達していないように思う。
だから、髪や瞳の色が違うだけで自分の子供ではないと判断したのだろう。
あまりにも短絡的な思考に思わず苦笑いしてしまう。
苦笑いを浮かべた私に、ローブを羽織った男性が心配そうな面持ちで尋ねてきた。
「……お前さん、大丈夫かい?」
男性に尋ねられてハッと現実に引き戻される。
英雄が私のご先祖様だったと知って、驚きのあまり自分の世界に閉じこもってしまった。
私は咄嗟に笑みを浮かべて返事をした。
「大丈夫です。色々とお話しをありがとうございます。カミール領に行ってみようと思います」
笑みを浮かべた私を見て、安堵の表情を浮かべた男性がニッコリと微笑み返した。
「そうかい。それなら良かった。おぉ、そうそう、王都には英雄の銅像があるのじゃが、もし時間があれば寄ってみると良いじゃろう」
銅像?それは是非とも見てみたい。
「はい。是非、寄ってみます」
そう返事をして、その後とりとめのない会話を交わしているうちに、乗り合い馬車は休憩をとるために広い場所で止まった。
乗り合い馬車から少し離れた場所に腰を下ろした私達は、作り置きしていたおにぎりと味噌汁を手に黙々と食べていた。
そうして食べ進めていると、味噌汁を飲んでホッと息を吐き出したヒデさんがポツリと言った。
「……さっきの話しなんだけどさ、ショータ・カミールだっけ?偶然だと思うんだけど、親友の名前に似ているんだよね。だからなのか気になっちゃって……」
ショータという名前は日本ではよくある名前の一つだ。
しかし、名前が似ているからといって親友がこの世界に来ていると考えるのは、あまりにも安直ではないだろうか。
「……えっと、偶然じゃないの?どうして気になるの?」
ヒデさんがなぜそんなことを口にしたのか分からずに尋ねると、ヒデさんは表情を曇らせてぽつぽつと語り始めた。
「……僕には親友と呼べるくらい仲の良い友達が居たんだ。しょうちゃんはいつも笑顔が絶えなくてクラスのムードメーカーだった。誰にでも優しくて正義感が強くて明るくて……僕はそんなしょうちゃんに何度も励まされたんだ。だけど……」
ヒデさんは口をギュッと真一文字に結び話しを一旦止めると、しばらくの沈黙の後再び口を開いた。
「だけど、突然しょうちゃんは学校に来なくなったんだ。心配になった僕はしょうちゃんの家に行ってみた。……そしたら、誰もしょうちゃんを覚えていなかったんだ。何かの冗談にしては悪質過ぎるだろう?僕は必死にしょうちゃんの両親に訴えた。でも、おじさんもおばさんも僕のことは覚えていても、しょうちゃんのことはまるで最初から存在していなかったかのように何一つ覚えていなかったんだ……」
……何それ。
そんな摩訶不思議なことが起きていたの?
信じられない気持ちでヒデさんの目を見据えると、ヒデさんは諦めのような何とも言えない表情を浮かべて見つめ返してきた。
「信じられないのは分かるよ。僕だって未だに信じられないんだから。だけど、僕だけはしょうちゃんを覚えているのは事実だよ。……だから、僕はこう考えたんだ」
私はごくりと喉を鳴らしてヒデさんの次の言葉を待った。
「しょうちゃんは異世界に行ったんじゃないかって。そうじゃなければ僕以外にしょうちゃんを覚えていないなんておかしいだろ?信じてくれなくても構わないけど、これだけは言わせてほしい。しょうちゃんはイマジナリーフレンドでも何でもなく、実在した親友だってことを」
その真剣な眼差しは、噓を吐いているとは到底思えなかった。
日本でも神隠し的な話しは昔からあった。
しかし、そのほとんどが事故や事件で片付けられ、有耶無耶のまま捜査が打ち切られることもしばしばだ。
だけど、こうして異世界に転生した私には、ヒデさんの言葉を否定するだけの気持ちはなかった。
逆に、異世界に転生していてほしいと願う気持ちが芽生えていた。
「否定なんてしないよ。だって、ここは地球とは異なる世界だし、実際に私がこの世界に転生してるんだもの。きっと、ヒデさんの親友も転生か転移したんじゃないかな。また会えるといいね」
「……うん。また、会えるといいな」
そう呟いたヒデさんの表情は暗いままだったが、彼の心が少しでも癒されるようにとブロンをヒデさんに預けた。
その後、昼休憩を終えた私達は乗り合い馬車に乗ると、王都へ向けて移動を再開した。
だけど、そう考えたら私の髪や瞳が黒いのも納得できる。
隔世遺伝というものだろう。
この世界は魔法が存在するため、科学というものが発達していないように思う。
だから、髪や瞳の色が違うだけで自分の子供ではないと判断したのだろう。
あまりにも短絡的な思考に思わず苦笑いしてしまう。
苦笑いを浮かべた私に、ローブを羽織った男性が心配そうな面持ちで尋ねてきた。
「……お前さん、大丈夫かい?」
男性に尋ねられてハッと現実に引き戻される。
英雄が私のご先祖様だったと知って、驚きのあまり自分の世界に閉じこもってしまった。
私は咄嗟に笑みを浮かべて返事をした。
「大丈夫です。色々とお話しをありがとうございます。カミール領に行ってみようと思います」
笑みを浮かべた私を見て、安堵の表情を浮かべた男性がニッコリと微笑み返した。
「そうかい。それなら良かった。おぉ、そうそう、王都には英雄の銅像があるのじゃが、もし時間があれば寄ってみると良いじゃろう」
銅像?それは是非とも見てみたい。
「はい。是非、寄ってみます」
そう返事をして、その後とりとめのない会話を交わしているうちに、乗り合い馬車は休憩をとるために広い場所で止まった。
乗り合い馬車から少し離れた場所に腰を下ろした私達は、作り置きしていたおにぎりと味噌汁を手に黙々と食べていた。
そうして食べ進めていると、味噌汁を飲んでホッと息を吐き出したヒデさんがポツリと言った。
「……さっきの話しなんだけどさ、ショータ・カミールだっけ?偶然だと思うんだけど、親友の名前に似ているんだよね。だからなのか気になっちゃって……」
ショータという名前は日本ではよくある名前の一つだ。
しかし、名前が似ているからといって親友がこの世界に来ていると考えるのは、あまりにも安直ではないだろうか。
「……えっと、偶然じゃないの?どうして気になるの?」
ヒデさんがなぜそんなことを口にしたのか分からずに尋ねると、ヒデさんは表情を曇らせてぽつぽつと語り始めた。
「……僕には親友と呼べるくらい仲の良い友達が居たんだ。しょうちゃんはいつも笑顔が絶えなくてクラスのムードメーカーだった。誰にでも優しくて正義感が強くて明るくて……僕はそんなしょうちゃんに何度も励まされたんだ。だけど……」
ヒデさんは口をギュッと真一文字に結び話しを一旦止めると、しばらくの沈黙の後再び口を開いた。
「だけど、突然しょうちゃんは学校に来なくなったんだ。心配になった僕はしょうちゃんの家に行ってみた。……そしたら、誰もしょうちゃんを覚えていなかったんだ。何かの冗談にしては悪質過ぎるだろう?僕は必死にしょうちゃんの両親に訴えた。でも、おじさんもおばさんも僕のことは覚えていても、しょうちゃんのことはまるで最初から存在していなかったかのように何一つ覚えていなかったんだ……」
……何それ。
そんな摩訶不思議なことが起きていたの?
信じられない気持ちでヒデさんの目を見据えると、ヒデさんは諦めのような何とも言えない表情を浮かべて見つめ返してきた。
「信じられないのは分かるよ。僕だって未だに信じられないんだから。だけど、僕だけはしょうちゃんを覚えているのは事実だよ。……だから、僕はこう考えたんだ」
私はごくりと喉を鳴らしてヒデさんの次の言葉を待った。
「しょうちゃんは異世界に行ったんじゃないかって。そうじゃなければ僕以外にしょうちゃんを覚えていないなんておかしいだろ?信じてくれなくても構わないけど、これだけは言わせてほしい。しょうちゃんはイマジナリーフレンドでも何でもなく、実在した親友だってことを」
その真剣な眼差しは、噓を吐いているとは到底思えなかった。
日本でも神隠し的な話しは昔からあった。
しかし、そのほとんどが事故や事件で片付けられ、有耶無耶のまま捜査が打ち切られることもしばしばだ。
だけど、こうして異世界に転生した私には、ヒデさんの言葉を否定するだけの気持ちはなかった。
逆に、異世界に転生していてほしいと願う気持ちが芽生えていた。
「否定なんてしないよ。だって、ここは地球とは異なる世界だし、実際に私がこの世界に転生してるんだもの。きっと、ヒデさんの親友も転生か転移したんじゃないかな。また会えるといいね」
「……うん。また、会えるといいな」
そう呟いたヒデさんの表情は暗いままだったが、彼の心が少しでも癒されるようにとブロンをヒデさんに預けた。
その後、昼休憩を終えた私達は乗り合い馬車に乗ると、王都へ向けて移動を再開した。
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