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第二章
第101話 アルファイド王国での王都観光 その四
食事が運ばれて来る間、ヒデさんは『グローブフォレスト商会』での出来事を思い出したのか、感心した様子で語り始めた。
「それにしてもびっくりしたなぁ。ユーリさんが『グローブフォレスト商会』の商業カードを持っていたなんて。しかも、カードを見せた途端、その場に居た店員の態度がますます丁寧になったのには言葉を失っちゃったよ」
その言葉に私は乾いた笑いを浮かべて答える。
「ははは……。私もあそこまで丁寧に応対されるなんて思わなかったよ」
きっと、ヤマモトさんから報告が届いていたのかもしれない。
そのおかげで買い物もスムーズに出来た上に値引きもしてもらえた。
丁寧な応対に驚いたものの、値引きしてもらえたのはありがたい。
帰り際、店長らしき男性に耳元で囁かれた言葉に、私は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
「ユーリ様のお知恵を拝借出来ればと願っております。またのお越しをお待ちしております」
男性のあの言葉。ヤマモトさんから報告を受けて知っているようだった。
曖昧に笑って誤魔化したけど、柔和な笑みを浮かべた瞳の奥には、何かを期待するように光を宿していた。
口に出さなかったけど、彼等の商魂は凄まじいものがある。
例え私の見た目が明らかに少女のそれだとしても、店にとって有益だと判断すれば決して見逃さない。
彼等は根っからの商人なのだろう。
小さくため息を吐いた私を余所に、ヒデさんは更に話しを続ける。
「それにしてもあの店長さん。なんか日本人ぽくてびっくりしたなぁ。濃い顔ばかり見ていたから安心した」
それには私も同意見である。
冒険者になって数か月が経とうとしているが、前世の記憶が蘇ってからというもの、日本人としての記憶があるせいでどうしても違和感が拭えずにいた。
平面顔、ごほん、あっさりとした顔立ちを毎日目にしていた身としては、今のこの状況に慣れるのは容易ではない。
私ですら未だ慣れないというのに、いきなりこの世界に来たヒデさんはもっと大変だろう。
「本当だね。未だ私の中では、ここが海外のどこかに居るんじゃないかと思うことがあるよ。まあ、魔法が使える段階で全く違う世界に居るって気づくんだけど」
すると、その言葉に合点がいったとでも言うようにヒデさんが頷いた。
「ああ、そうそう!海外だよ!僕もそう感じていたんだよね。だけど、メイスさんやブロンが喋っているのを見ちゃうと、やっぱり異世界なんだなぁって……」
そう言って一旦話しを区切ると、困ったような悲しそうな表情を浮かべてポツリと呟いた。
「……海外旅行なら家に帰れるけど、世界が違うから帰れないんだよね……」
ヒデさんがポツリと零した言葉に私はハッと視線を向ける。
この世界で生まれた私とは違い、ヒデさんはある日いきなりこの世界に来た。
十六歳といえば青春真っただ中で、将来に夢を持っていたに違いない。
それが突然未来を断たれたとしたら、どんなに辛いだろう。
かける言葉が見つからずに口を噤む。
すると、膝の上で大人しくしていたブロンがヒデさんに近寄って顔を見上げた。
『おにいちゃん、どこかいたい?ぼくが舐め舐めしてあげる』
その言葉を聞いたヒデさんが今にも泣き出しそうな顔をして、ブロンの体に顔を埋めて抱きしめる。
肩が小刻みに震えているが、涙を押し殺しているのだろう。
私は素知らぬふりをして窓の外を眺めた。
だって、何を言っても噓くさいし、飾り立てた言葉なんかで心を癒せるとは思えなかったから。
ここは彼の気が収まるまでそっとしておいた方が良いだろう。
周囲が和やかに食事を摂っているのとは対照的に、私達が座るテーブルは沈黙が流れている。
やがて、料理がテーブルに並べられると、もう我慢できないとばかりにブロンがヒデさんの腕の中から飛び出した。
私の膝の上に戻って来ると、テーブルに前足を置いて振り返る。
『おなか減った――。早くたべようよぉ』
その声に我に返ったヒデさんが、ばつの悪そうな顔をする。
私は見ていないふりをして笑みを浮かべる。
「本当、お腹ペコペコ。さあ、ご飯食べよう」
そうして始まった昼食だったが、料理のあまりの美味しさに、いつの間にか会話が弾み笑顔が増えていた。
「それにしてもびっくりしたなぁ。ユーリさんが『グローブフォレスト商会』の商業カードを持っていたなんて。しかも、カードを見せた途端、その場に居た店員の態度がますます丁寧になったのには言葉を失っちゃったよ」
その言葉に私は乾いた笑いを浮かべて答える。
「ははは……。私もあそこまで丁寧に応対されるなんて思わなかったよ」
きっと、ヤマモトさんから報告が届いていたのかもしれない。
そのおかげで買い物もスムーズに出来た上に値引きもしてもらえた。
丁寧な応対に驚いたものの、値引きしてもらえたのはありがたい。
帰り際、店長らしき男性に耳元で囁かれた言葉に、私は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
「ユーリ様のお知恵を拝借出来ればと願っております。またのお越しをお待ちしております」
男性のあの言葉。ヤマモトさんから報告を受けて知っているようだった。
曖昧に笑って誤魔化したけど、柔和な笑みを浮かべた瞳の奥には、何かを期待するように光を宿していた。
口に出さなかったけど、彼等の商魂は凄まじいものがある。
例え私の見た目が明らかに少女のそれだとしても、店にとって有益だと判断すれば決して見逃さない。
彼等は根っからの商人なのだろう。
小さくため息を吐いた私を余所に、ヒデさんは更に話しを続ける。
「それにしてもあの店長さん。なんか日本人ぽくてびっくりしたなぁ。濃い顔ばかり見ていたから安心した」
それには私も同意見である。
冒険者になって数か月が経とうとしているが、前世の記憶が蘇ってからというもの、日本人としての記憶があるせいでどうしても違和感が拭えずにいた。
平面顔、ごほん、あっさりとした顔立ちを毎日目にしていた身としては、今のこの状況に慣れるのは容易ではない。
私ですら未だ慣れないというのに、いきなりこの世界に来たヒデさんはもっと大変だろう。
「本当だね。未だ私の中では、ここが海外のどこかに居るんじゃないかと思うことがあるよ。まあ、魔法が使える段階で全く違う世界に居るって気づくんだけど」
すると、その言葉に合点がいったとでも言うようにヒデさんが頷いた。
「ああ、そうそう!海外だよ!僕もそう感じていたんだよね。だけど、メイスさんやブロンが喋っているのを見ちゃうと、やっぱり異世界なんだなぁって……」
そう言って一旦話しを区切ると、困ったような悲しそうな表情を浮かべてポツリと呟いた。
「……海外旅行なら家に帰れるけど、世界が違うから帰れないんだよね……」
ヒデさんがポツリと零した言葉に私はハッと視線を向ける。
この世界で生まれた私とは違い、ヒデさんはある日いきなりこの世界に来た。
十六歳といえば青春真っただ中で、将来に夢を持っていたに違いない。
それが突然未来を断たれたとしたら、どんなに辛いだろう。
かける言葉が見つからずに口を噤む。
すると、膝の上で大人しくしていたブロンがヒデさんに近寄って顔を見上げた。
『おにいちゃん、どこかいたい?ぼくが舐め舐めしてあげる』
その言葉を聞いたヒデさんが今にも泣き出しそうな顔をして、ブロンの体に顔を埋めて抱きしめる。
肩が小刻みに震えているが、涙を押し殺しているのだろう。
私は素知らぬふりをして窓の外を眺めた。
だって、何を言っても噓くさいし、飾り立てた言葉なんかで心を癒せるとは思えなかったから。
ここは彼の気が収まるまでそっとしておいた方が良いだろう。
周囲が和やかに食事を摂っているのとは対照的に、私達が座るテーブルは沈黙が流れている。
やがて、料理がテーブルに並べられると、もう我慢できないとばかりにブロンがヒデさんの腕の中から飛び出した。
私の膝の上に戻って来ると、テーブルに前足を置いて振り返る。
『おなか減った――。早くたべようよぉ』
その声に我に返ったヒデさんが、ばつの悪そうな顔をする。
私は見ていないふりをして笑みを浮かべる。
「本当、お腹ペコペコ。さあ、ご飯食べよう」
そうして始まった昼食だったが、料理のあまりの美味しさに、いつの間にか会話が弾み笑顔が増えていた。
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