110 / 180
第二章
第110話 懐かしい光景
野宿を繰り返しながらカミール領を目指すこと五日。
そろそろカミール領に着く頃だろうと逸る気持ちを抑えて歩いていると、懐かしい光景が視界を捉えた。
一面に広がる黄金色の稲穂。
その稲穂が風に身を任せて揺られている。
懐かしいその光景に自然と足が止まっていた。
「おぉ―!稲だ!お米かな?」
目を輝かせてそう声に出したヒデさんは、街道の両脇に植えられた稲を見て駆け寄った。
ヒデさんの後に続いて近寄って観察すると、確かに前世で目にした稲穂とよく似ていた。
確証が持てなかったため鑑定のスキルを使って確認をする。
「……うん。お米だね。鑑定によると『特A』だって。大切に育てられたんだろうね」
ご先祖様の徹底した教えなのかは知らないが、どの稲の状態も良好と表示されていた。
きっと、愛情を込めて育ててきたのだろう。
以前ほど鑑定のスキルを使う頻度が減っていたにも関わらず、表示される内容が更に増えていたことに内心目を丸くしたが、山の斜面に見えた一面緑色の光景を目にした瞬間、私は言葉を失った。
「……あれは茶畑?」
その呟きを耳にしたヒデさんが、私の視線を追う。
「あれが、茶畑?はぇ~……。あんな感じになってるんだ。初めて見た」
私もテレビで見たことはあったが、実際に目にするのは初めてだ。
二人して茶畑を眺めていたら、背後から人が近づいて来る気配がして振り返る。
振り返った先には大きなつばの麦わら帽子を被った初老の男性と中年の男性が、ゆっくりとした足取りで笑みを浮かべて近づいて来ていた。
一瞬身構えたものの、すぐに警戒を解いた。
なぜなら、ブロンが彼等に一切反応を見せないことから大丈夫だと判断したためだ。
ニコニコと笑みを浮かべたまま、初老の男性が話しかけてきた。
「あの山の斜面に植えてあるのが茶畑じゃ。あんた達は茶畑を見るのは初めてかい?」
初老の男性の問いかけに答えたのはヒデさんだった。
「はい!あれが茶畑なんですね。話しに聞いて知っていましたけど、実物を見るのは初めてです。あの葉っぱがお茶になるんですよね?」
興味津々で問いかけるヒデさんに、初老の男性は嬉しそうに笑みを深めて頷いた。
「そうじゃ、よく知っとるのぅ。そろそろ新芽の収穫も終わる頃でのう。ようやくひと段落といったところかのぅ」
そう言われて男性の背中に視線を向ければ、籠いっぱいに葉が積まれているのが目に入る。
彼等は茶摘みの帰りで私達を見かけて声をかけてくれたのだろう。
何だか申し訳ない。
「……お忙しいところお邪魔してしまったようですみません。あの、カミール領は近いのですか?」
謝罪の言葉を述べたついでに、カミール領の場所を確認しておこうと尋ねた。
すると、初老の男性はカミール領がある方向を指差して言った。
「ああ、もう目と鼻の先じゃ。儂らもこれから帰るで案内しよう」
男性のありがたい申し出を受けて、私達はカミール領へ向かうことにした。
カミール領に向かう間、初老の男性は色々と話しを聞かせてくれた。
例えば、この地はその昔荒れ果てた土地で人が住める場所ではなかったこと。
その後、初代カミール家当主の手腕により、土地が豊かになり農業が発展したこと。
それから、平民でも学ぶ機会が必要だということで学校が建てられたことなど、挙げたらキリがない。
男性の話しはどれも興味深くいつまでも聞いていたかったが、あっという間にカミール領に着いてしまった。
別れ際、男性が告げた。
「儂はジャン。収穫期以外は西門近くの家に居るからいつでも来なされ。儂も話し相手が出来て楽しみが増えたわい」
そう言って朗らかに笑うジャンさんに改めてお礼を伝えると、再び会う約束を交わしてその場を後にした。
そろそろカミール領に着く頃だろうと逸る気持ちを抑えて歩いていると、懐かしい光景が視界を捉えた。
一面に広がる黄金色の稲穂。
その稲穂が風に身を任せて揺られている。
懐かしいその光景に自然と足が止まっていた。
「おぉ―!稲だ!お米かな?」
目を輝かせてそう声に出したヒデさんは、街道の両脇に植えられた稲を見て駆け寄った。
ヒデさんの後に続いて近寄って観察すると、確かに前世で目にした稲穂とよく似ていた。
確証が持てなかったため鑑定のスキルを使って確認をする。
「……うん。お米だね。鑑定によると『特A』だって。大切に育てられたんだろうね」
ご先祖様の徹底した教えなのかは知らないが、どの稲の状態も良好と表示されていた。
きっと、愛情を込めて育ててきたのだろう。
以前ほど鑑定のスキルを使う頻度が減っていたにも関わらず、表示される内容が更に増えていたことに内心目を丸くしたが、山の斜面に見えた一面緑色の光景を目にした瞬間、私は言葉を失った。
「……あれは茶畑?」
その呟きを耳にしたヒデさんが、私の視線を追う。
「あれが、茶畑?はぇ~……。あんな感じになってるんだ。初めて見た」
私もテレビで見たことはあったが、実際に目にするのは初めてだ。
二人して茶畑を眺めていたら、背後から人が近づいて来る気配がして振り返る。
振り返った先には大きなつばの麦わら帽子を被った初老の男性と中年の男性が、ゆっくりとした足取りで笑みを浮かべて近づいて来ていた。
一瞬身構えたものの、すぐに警戒を解いた。
なぜなら、ブロンが彼等に一切反応を見せないことから大丈夫だと判断したためだ。
ニコニコと笑みを浮かべたまま、初老の男性が話しかけてきた。
「あの山の斜面に植えてあるのが茶畑じゃ。あんた達は茶畑を見るのは初めてかい?」
初老の男性の問いかけに答えたのはヒデさんだった。
「はい!あれが茶畑なんですね。話しに聞いて知っていましたけど、実物を見るのは初めてです。あの葉っぱがお茶になるんですよね?」
興味津々で問いかけるヒデさんに、初老の男性は嬉しそうに笑みを深めて頷いた。
「そうじゃ、よく知っとるのぅ。そろそろ新芽の収穫も終わる頃でのう。ようやくひと段落といったところかのぅ」
そう言われて男性の背中に視線を向ければ、籠いっぱいに葉が積まれているのが目に入る。
彼等は茶摘みの帰りで私達を見かけて声をかけてくれたのだろう。
何だか申し訳ない。
「……お忙しいところお邪魔してしまったようですみません。あの、カミール領は近いのですか?」
謝罪の言葉を述べたついでに、カミール領の場所を確認しておこうと尋ねた。
すると、初老の男性はカミール領がある方向を指差して言った。
「ああ、もう目と鼻の先じゃ。儂らもこれから帰るで案内しよう」
男性のありがたい申し出を受けて、私達はカミール領へ向かうことにした。
カミール領に向かう間、初老の男性は色々と話しを聞かせてくれた。
例えば、この地はその昔荒れ果てた土地で人が住める場所ではなかったこと。
その後、初代カミール家当主の手腕により、土地が豊かになり農業が発展したこと。
それから、平民でも学ぶ機会が必要だということで学校が建てられたことなど、挙げたらキリがない。
男性の話しはどれも興味深くいつまでも聞いていたかったが、あっという間にカミール領に着いてしまった。
別れ際、男性が告げた。
「儂はジャン。収穫期以外は西門近くの家に居るからいつでも来なされ。儂も話し相手が出来て楽しみが増えたわい」
そう言って朗らかに笑うジャンさんに改めてお礼を伝えると、再び会う約束を交わしてその場を後にした。
あなたにおすすめの小説
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。