転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第二章

第110話 懐かしい光景

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 野宿を繰り返しながらカミール領を目指すこと五日。
 そろそろカミール領に着く頃だろうと逸る気持ちを抑えて歩いていると、懐かしい光景が視界を捉えた。

 一面に広がる黄金色の稲穂。
 その稲穂が風に身を任せて揺られている。
 懐かしいその光景に自然と足が止まっていた。

「おぉ―!稲だ!お米かな?」

 目を輝かせてそう声に出したヒデさんは、街道の両脇に植えられた稲を見て駆け寄った。
 ヒデさんの後に続いて近寄って観察すると、確かに前世で目にした稲穂とよく似ていた。
 確証が持てなかったため鑑定のスキルを使って確認をする。

「……うん。お米だね。鑑定によると『特A』だって。大切に育てられたんだろうね」

 ご先祖様の徹底した教えなのかは知らないが、どの稲の状態も良好と表示されていた。
 きっと、愛情を込めて育ててきたのだろう。
 以前ほど鑑定のスキルを使う頻度が減っていたにも関わらず、表示される内容が更に増えていたことに内心目を丸くしたが、山の斜面に見えた一面緑色の光景を目にした瞬間、私は言葉を失った。
 
「……あれは茶畑?」

 その呟きを耳にしたヒデさんが、私の視線を追う。

「あれが、茶畑?はぇ~……。あんな感じになってるんだ。初めて見た」

 私もテレビで見たことはあったが、実際に目にするのは初めてだ。
 二人して茶畑を眺めていたら、背後から人が近づいて来る気配がして振り返る。
 振り返った先には大きなつばの麦わら帽子を被った初老の男性と中年の男性が、ゆっくりとした足取りで笑みを浮かべて近づいて来ていた。
 一瞬身構えたものの、すぐに警戒を解いた。
 なぜなら、ブロンが彼等に一切反応を見せないことから大丈夫だと判断したためだ。
 ニコニコと笑みを浮かべたまま、初老の男性が話しかけてきた。

「あの山の斜面に植えてあるのが茶畑じゃ。あんた達は茶畑を見るのは初めてかい?」

 初老の男性の問いかけに答えたのはヒデさんだった。

「はい!あれが茶畑なんですね。話しに聞いて知っていましたけど、実物を見るのは初めてです。あの葉っぱがお茶になるんですよね?」

 興味津々で問いかけるヒデさんに、初老の男性は嬉しそうに笑みを深めて頷いた。

「そうじゃ、よく知っとるのぅ。そろそろ新芽の収穫も終わる頃でのう。ようやくひと段落といったところかのぅ」

 そう言われて男性の背中に視線を向ければ、籠いっぱいに葉が積まれているのが目に入る。
 彼等は茶摘みの帰りで私達を見かけて声をかけてくれたのだろう。
 何だか申し訳ない。

「……お忙しいところお邪魔してしまったようですみません。あの、カミール領は近いのですか?」

 謝罪の言葉を述べたついでに、カミール領の場所を確認しておこうと尋ねた。
 すると、初老の男性はカミール領がある方向を指差して言った。

「ああ、もう目と鼻の先じゃ。儂らもこれから帰るで案内しよう」

 男性のありがたい申し出を受けて、私達はカミール領へ向かうことにした。







 カミール領に向かう間、初老の男性は色々と話しを聞かせてくれた。

 例えば、この地はその昔荒れ果てた土地で人が住める場所ではなかったこと。
 その後、初代カミール家当主の手腕により、土地が豊かになり農業が発展したこと。
 それから、平民でも学ぶ機会が必要だということで学校が建てられたことなど、挙げたらキリがない。
 男性の話しはどれも興味深くいつまでも聞いていたかったが、あっという間にカミール領に着いてしまった。
 別れ際、男性が告げた。

「儂はジャン。収穫期以外は西門近くの家に居るからいつでも来なされ。儂も話し相手が出来て楽しみが増えたわい」


 そう言って朗らかに笑うジャンさんに改めてお礼を伝えると、再び会う約束を交わしてその場を後にした。
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