転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第129話 転移魔法

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 私達がカミール領に来てから一週間が経った。
 黒髪黒目ということで驚かれたり拝まれたりされたが、英雄が治めた街ということもあり忌避されたり蔑まれるといったことは一切なかった。
 来て間もない頃は、すれ違う皆の視線が気になって落ち着かなかったけど、今では挨拶を交わすくらいには仲良くなれた……と思う。

 あれから、どこでも〇アの要領で転移魔法を覚えた私は、キリアンさんに見つからないように門に移動すると、街から少し離れた場所から森に転移する。

『ふむ。転移魔法の発動に時間がかかったが無事に着けたようだな。まだ魔力の調整が上手く出来ていないが、まぁ及第点といったところか』

 ふわふわと空中に浮かんで語るメイスに、私は苦笑いを浮かべる。
 なぜなら、一度転移する場所を間違えて川に落ちたことがあったからだ。
 幸い浅瀬だったから溺れることはなかったのだが、その件から二、三日ほど転移魔法を使うのが怖くて止めていた。

 しかし、そうすればキリアンさんと会う機会が増えてしまう。
 四六時中キリアンさんと行動を共にするのは息が詰まる。
 悪い人じゃないのは分かっていても、どこまで信用していいのか判断がつかずにストレスだけが溜まっていった。
 
 それから覚悟を決めて、必死に転移魔法の練習に取り組んで今に至る。

「……及第点かぁ。でも、コツを掴めたからあとは練習あるのみだね。もっと頑張らなきゃ」

 メイスに指摘された通り、慎重になり過ぎたせいか魔法の発動に時間をかけ過ぎたのは自分でも分かっていた。
 だって、また川に落ちたらと思うと不安で堪らなかったから。
 慎重になり過ぎていつも以上に魔力を込めたせいで、体が鉛のように重い。
 転移魔法には膨大な量の魔力を使うのだが、さすがに使い過ぎたみたい。

「……ちょっと休憩したい」

 それだけ伝えて地面に座り込むと、メイスが傍らに降りてポツリと呟く。
 
『人間とは脆弱な生き物なのだな。アイツが特別だったということか……』

 アイツとは、きっとしょうたさんのことだろう。
 そんな凄い人と比べられてもなぁ……。
 それに私、十歳の子供だよ?
 体が出来上がっていないのに、そんな私と比べられたら逆にしょうたさんに失礼じゃない?
 私はムッと口を尖らせて言い返す。

「あのね、私は十歳の子供なの。そんな私と比べるのおかしくない?しょうたさんに失礼だよ」

 ハッと琥珀色の瞳を見開いたメイスが、申し訳なさそうにしながら私から視線を逸らす。

『……そうだな。人間の生態を知らなかったとは言え無神経なことを言った。すまない……』

 生態って……。
 確かに、魔族と人族では肉体的の差や考え方が違うのはある程度理解していた。
 キリアンさんや乗り合い馬車で知り合ったリマールさんの話しから、魔族と交流が無いだろうことも何となく分かっていたつもりだった。
 でも、ここまで考え方に差があるとは思ってもみなかった。

 いや、それを言うなら私も同じか。
 いくらメイスが魔族だと知らなかったとは言え、知ろうとしなかったのだから。

「ううん。私の方こそごめんね。あのね、人間ってとっても脆弱なの。メイスのように長命でもないし頑丈な肉体じゃないし、打ち所が悪ければあっという間に死んじゃうの。ちょっとした風邪でも命を落とすことだってある。メイスには理解し難いかもしれないけど、頭の片隅に置いておいてね」

 メイスは信じられないと目を大きく見開いた後、納得したように大きく頷いた。

『……そこまで脆弱なのか。相分かった。覚えておこう』

 理解力のあるメイスに私は笑みを浮かべる。

 以前から感じていたことなのだが、メイスは人の話しを頭から否定せずにちゃんと聞いてくれる。
 その上で間違いがあれば正してくれた。
 魔族と聞いて戦々恐々としていたけど、今までのメイスの様子から、そこまで怖くないのかもしれないと感じた。



 ラノベでも魔族を悪としたり善としたり書き手によって立ち位置は様々だったが、私はいつの間にか魔族は悪だと勝手に決めつけていたようだ。
 思い込みとは恐ろしいものだ。
 これからは、見た目や思い込みで判断するのは気をつけようと心に決めた。
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