転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第149話 瘴気の溜まり場

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 緩やかな傾斜を黙々と歩いて行く。
 一歩進む度に瘴気が濃くなっていくのを肌で感じていた。
 今までにない瘴気の濃さに気分が悪くなる。

『おねえちゃん、だいじょうぶ?』

 隣を歩くブロンが心配そうな声で尋ねてきた。
 ブロンはこの濃い瘴気の中平然と歩いているけど、どうして平気なのだろう?

「ブロンはこれだけ濃い瘴気なのにどこも具合が悪くなっていないの?無理してない?」

『ぼく?光の魔法で黒いモヤモヤを蹴散らしているから、ぜんぜん平気だよ』

 光の魔法?
 そう言えば、ブロンの周りだけ瘴気が消えているような……。
 目を凝らして視ると、ブロンの体に触れる前に瘴気が霧散していた。
 しかし、一度霧散した瘴気は消えることなく再び形を形成した瘴気は、辺りをふわふわと漂っていた。
 
 光魔法では瘴気を消せないのか。
 
 だったら、聖属性魔法ではどうだろう?
 思い立った私は、すぐさま全身を覆うように聖属性魔法を発動させた。

「ふぅ……息が楽になった。……ん?周囲の雰囲気が変わった?」

 私を中心にして二、三メートルほどだろうか。
 聖属性魔法を発動させた途端、瘴気が一瞬で浄化されていった。

「おぉ……!瘴気が消えた!」

 ブロンは辺りを見渡して目を輝かせた。

『わぁ!黒いモヤモヤが少なくなった!おねえちゃん、すごーい!』

 なるほど。
 光属性魔法は瘴気を寄せ付けないだけで浄化作用は無いのか。
 その上位が聖属性魔法ってことなのね。

 膨大な魔力量を持っているとはいえ、今は魔力を温存しつつ最も瘴気が濃い場所を見つけて浄化すればこれ以上増えないのでは?
 そう考えた私は、瘴気の最も濃い場所を探すことにした。







 山の頂上付近は岩肌が剝き出しで足場も悪い。
 遠くの上空では大型の鳥……というよりは恐竜に近い生き物が、大きな翼を広げて旋回している。

「……あの大きな鳥、何だろう」

 そう呟いた私に、ブロンは嬉しそうに答えた。

『あ、ワイバーンだ!あまり美味しくないんだけど、かみ応えがあって歯がムズムズするときに食べるといいんだよ!おねえちゃん、狩る?』

 そう言ったブロンの瞳はキラキラと輝いていた。

 ワイバーン!?
 いやいや、依頼の魔物を討伐したし今はそれどころじゃないでしょ!
 焦った私はブロンの胸元を撫でて宥めた。

「えっと、それはまた今度にしない?今は瘴気の出処を探るのが先だから。そうだ!瘴気の出処を早く見つけられたらワイバーンを狩ろう。ね?」

『うん!わかった!じゃあ、ちょっと待って』

 ブロンはそう返事をすると、目を閉じて意識を集中させた。
 その数秒後、目を開けて告げた。

『おねえちゃん、黒いモヤモヤが多いところを見つけたよ。はやく行こう!』

 早くワイバーンを狩りたいのか、ブロンが私の服を引っ張って急かしてきた。

「え?もう見つけたの?ちょ、ちょっと待って!」

 走り出したブロンを追いかけて疾走する。
 岩肌が剝き出しの足場の悪い場所では思うように走れずに、転びそうになりながらも何とかブロンについて行った。

 山頂から少し下った場所にそれはあった。
 風通しの悪いその場所は窪地となっており、昼間でもジメジメとして薄気味悪い雰囲気を醸し出している。

「……なるほど。風の通りが悪いから瘴気が溜まっちゃうのか。なら、風の通り道を作っちゃえば問題は解決かな?でも、その前に――」

 ぶつぶつと独り言を呟いたあと、瘴気の溜まり場となった場所に手を翳して詠唱する。

「浄化!」

 普段なら詠唱しないのだけど、今回ばかりは詠唱した方がより効果を発揮するのではと考えて口にしたのだが、その判断は正しかったようだ。
 詠唱と同時に手のひらから高濃度の魔力が放出されて、瞬時に瘴気が浄化されていく。
 体の中から何かがごっそりと抜けたのを感じて地面に座り込む。

「ふぅ……ちょっと休憩。それにしても、あれだけの瘴気を浄化するのは思っていたよりキツイなぁ。かなりの魔力量を持っていかれた気がする」

 膨大な魔力量を持っているからと安易に考えていたが、聖属性魔法は他の魔法とは少し異なるようだ。
 尋常ではない疲れに私は立ち上がる気力が湧かず、大の字になって地面に寝転んだ。

『おねえちゃん、だいじょうぶ?』

 ブロンが心配そうな声を出して頬を舐める。

「……ん。ちょっと休憩したら元気になるから大丈夫。でも、ちょっとだけ休ませて……」

 心配そうに揺れる青い瞳を見つめて笑みを浮かべた私は、すぐに深い眠りに落ちた。
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