転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第三章

第157話 豊穣祭 その二

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 目的の串焼き肉を無事手に入れた私達は、人混みの少ない場所に移動してベンチに腰を下ろす。
 メイスは器用に串焼き肉に嚙り付いていたが、ブロンには難しいだろうと判断して皿に肉を取り分けておいた。
 熱々の肉に苦戦しながら、一口食べたメイスが満足そうな声音で語る。

『……ふむ。甘さが控えめで美味いな。俺はこっちの串焼き肉が好みだ』

 メイスはベルクの街で食べた甘辛い串焼き肉よりも、こっちの方が好きらしい。

「醬油がたっぷりで美味しい!この匂いが食欲をそそるんだよね~」

 大きな串焼き肉に噛り付いたヒデさんも、醬油がたっぷりと塗ってある方が好みらしく、満面の笑みを浮かべている。

『おねえちゃん!もっと食べたい!』

 いつの間にか肉を平らげていたブロンが、口の周りにタレを付けて催促してきた。
 男性陣は甘辛い味よりシンプルな味付けが気にいったらしい。

「ふふふ。ちょっと待って」

 ブロンに催促されて皿に肉を取り分けていく。
 しばらくして、こちらへ誰かが近づいて来る気配がして顔を上げると、大剣を背にしたキリアンさんが爽やかな笑顔を浮かべて声をかけてきた。

「ユーリ!こんな所に居たのか!探したぞ!」

 青い髪を揺らして笑顔でこちらに手を振って近づいてきたキリアンさんは、串焼き肉に視線を向けて言った。

「お、その串焼き肉はモーガンのところのか?ショーユタレが美味いんだよなぁ」

 モーガンさんは知らないけど、醬油たっぷりのタレが美味しいのは同意です。
 もぐもぐと肉を口に含んだまま首を傾げる。
 どうしてキリアンさんが私達を探していたのだろうと。
 首を傾げた私に気がついたキリアンさんが、更に話しを続ける。

「ユーリたちはこの街に来て初めての豊穣祭だろう?だから俺が案内しようと思って探していたんだ」

 え?
 そのためだけに私達を探していたの?
 なんかすみません。

「わざわざ探してくれたんですね。ありがとうございます。でも、キリアンさんにも予定とかあったんじゃないですか?」

 これだけのイケメンなら恋人だって居るだろうに、私達のために貴重な時間を割いてくれたなんて申し訳ない。
 そう思って尋ねた私に、今度はキリアンさんの方が首を傾げて答えた。

「予定?いや、無いよ」

「え、無いの?こんな一大イベントに彼女とデートとかするもんじゃないの?あ、奥さんかな?……もしかして、独身とか?顔が良すぎるのも大変だなぁ……」

 声に出したつもりはなかったのだが、無意識のうちに心の声が漏れていたようだ。
 私の心の声を聞いたキリアンさんが、堪えきれずに吹き出す。

「ははっ!イベントとかデート?は知らんが、俺は独り身だ。そうか。ユーリは俺を気遣ってくれたのか。子供が変な気遣いをしなくていい。俺が案内したいからするだけだ」

 キリアンさんは頭に手を置いてポンポンと優しく叩いた。
 心の声が漏れ出ていたことに気がついた私は、一気に顔に熱が籠る。

 驚いたとはいえ、あの発言は失礼だったはず。
 それを笑い飛ばしてくれるなんて、キリアンさんは出来た人だ。
 きっと、今の私の顔はトマトのように真っ赤になっているに違いない。
 恥ずかしくて顔を上げられない私に、キリアンさんは笑いを漏らしながら話しを続けた。

「そういうわけで俺も暇なんだ。だから、ユーリが気にすることはない。暇してる俺に付き合ってもらえると嬉しいな」

 爽やかイケメンがその台詞を口にするのは駄目だと思う。
 だって、一瞬ドキッとしちゃったもん!
 良かったぁ。人混みから離れてて。
 もし、周囲に女性が居たら、絶対バタバタとその場に倒れていたかもしれないよ!
 この人、無自覚に女性を虜にしちゃうタイプなのかもしれない。
 イケメンの無自覚って怖すぎる!

「ははは……」

 遠い目をして渇いた笑いを浮かべた私は、手に持っていた串焼き肉に嚙り付いた。
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