【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第11話 母の授業

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 翌日は母が魔法を教えてくれた。
 おっとりしていても貴族、簡単な魔法をいくつか披露してくれた。
 ―が、やはり母は母だった。

「でね、これをパーてすると、ポンてなるの」

「……」

 母よ、擬音が多すぎて全く分かりません。
 何から質問していいのかも分かりません。
 黙り込んだ私に、母は小首を傾げ不思議そうな顔で覗き込んできた。

「だからね、これをパーてすると、ポンてなるの」

 もう一度同じ魔法を使って説明してくれるが、全くもって分からない。
 私はジト目になり見上げると告げた。

「パーとポンが分かりません」

「え?」

 目を見開いて固まる母。

「え?」

 いやいやいや、擬音しか話してませんよね!
 はあ、とため息を漏らし先程の光景を思い出してみた。
 掌に魔力を集めて放出するのは理解した。
 後はどうやって水を出すのか。
 水、水、水、と掌を見つめていると、勢い良く顔面に水を浴びた。

「っ!ゴホッゴホッ」

 大量の水を諸に浴び思いっ切りむせる。
 隣でオロオロしている母は可愛かった。
 いや、違うっ!タオルくださいっ!そう心の中で叫んでいると、横からにゅっとタオルが差し出された。
 急いで受け取り顔を拭いて見ると、心配そうに様子を窺う弟がいた。

「ありがとうっ、マーカスぅ~」

 私は抱きつこうとしたが、ヒョイと避けられた。
 ああ、濡れてるからか。
 ごめんね。

 それから数週間、父と母に交互で指導してもらい、簡単な魔法なら難無く使えるようになった。
 魔力制御も今の所大丈夫そうだ。

「ミリーは凄いな!」

 頭をよしよしと撫でて褒めてくれるのは、父、マリウスだ。笑顔が眩しい。

「ミリー、頑張ったわね」

 父の隣に寄り添いニコニコと微笑んでいるのは、母ディアナ。
 自分のことのように喜んでくれる。

「姉さま、格好いい!」

 キラキラとした瞳で私を見上げてくるのは弟のマーカス。
 魔法は十歳までお預けなので、興味津々に練習風景を眺めていた。




「ふふふ、お父さま、お母さま、マーカスの協力があったから魔法が使えるようになりました。ありがとうございました」

 皆に深々と頭を下げて感謝とお礼を述べた。
 大事なことだからね。

「それにしてもミリーは発想が豊かだな。魔法をあんな便利な物にするなんて」

 父は感嘆した声を漏らした。

「へへ。この魔法を応用して、もっと便利に使えたら良いなって思ったんです。いずれ粉薬を作りたいので」

「粉薬?」

「はい。ハーブは風邪だけでなく、傷や炎症、免疫力を高めたり、鎮静作用など様々な効能があり、ポーションのように魔力を使うことなく誰でも作れます。裕福な家ならポーションを買えば良いでしょうが、そうでない家は助けたくても、どうすることも出来ません。だから、ハーブを粉薬にして安価で提供出来れば、亡くなる者が減るのではと思ったのです」

「……ミリーが居た世界では、その知識があった、ということか?」

「はい。専門の知識を持った人はいました。…私は趣味程度ですが…」

 あれ?私変な事言ったかな?
 父は真剣な表情で考え込んでいるように見える。

「…そうか。よく分かった。ミリーは本当に凄いな」

 真剣な表情から一転して柔らかい笑みで頭を撫でる父に、私は首を傾げた。
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