【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第17話 工場移転

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 十三歳の誕生日を迎えて半年が過ぎた。

 特に新しい商品の開発はしていないが、売り上げがうなぎ登りなことと、他国から貴族や商人が買い付けに来る人が増え、今の工場では生産が間に合わなくなってきた。
 今後の事を考えた結果、もっと大きい工場に移る必要性が出たことと、いつまでも屋敷まで野草を採りに来てもらうのはベラさん達に負担がかかるため、この際、ハーブの栽培に向いている土地の近くに工場を建てようかと話しに出たのだ。



 父とアルベルトさんは、工場を新たに建てるか空いている屋敷を探すか話し合っていたが、偶然我が家とアーバイン商会の中間に今は誰も住んでいない大きな屋敷があることを聞き、安く手に入れることが出来た。
 その後、屋敷に手を加え工場と住居用に改築して、工場裏にハーブ畑を作った。

 お客様には悪いが、引越しが終わるまで暫し休業だ。
 皆の協力もあり、引越しは意外と早くに終わり残りを休暇にあてた。
 元々休暇を取ってもらおうと長めの休業にしていたので、特に問題はない。
 ベラさん達は落ち着かない様子で、早く仕事を再開したそうにしていたが、説明をするとようやく納得してくれた。
 ベラさん、社畜化してない?




 工場再開まであと五日。
 私は日頃の感謝を込めて食事会を開くことを父に提案した。

「そうだな。皆今まで休まず頑張ってくれた。食事会を開くなら食材はこちらで用意しよう」

 すんなり要望が通り、笑みが自然と零れる。

「ありがとうございます!腕によりをかけますね!」

 私は腕をポンポンと叩き父にアピールする。

「……ミリーが料理するのか?」

 父は期待を込めた目で私を見つめてくるが、過度な期待はしないでほしい。

「……大した料理は作れませんよ」

 最近は、工場の引越しの手伝いにスキルを使って精油、抽出をし、合間に勉強をしていたので、厨房にはずっと入っていなかった。
 それに、マーカスくんとの時間がほしくて料理はソフィアさん達に任せっきりだった。
 ソフィアさんの作る料理は毎日工夫がされていて美味しいのに。
 それまで私が作っていたから、舌が慣れちゃったのかな?
 それはそれで嬉しいけど、期待し過ぎないでね。

「…お父さま。私に宮廷料理みたいなものは期待しないでくださいね。私が作れるのは、ごくごく一般の家庭料理ですから」

「ああ、分かった。あちらの世界の家庭料理か。楽しみだな」

「……」

 ますますプレッシャーが…。
 作ると言った以上、頑張らねば。
 紙に必要な食材を書いて渡すと、部屋に退散した。

 私の背中を見送る父の瞳には、愛情と期待が籠っていた。
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