【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第65話 ディランの家族

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 応接室ではディラン様の家族四人が待っていた。
 
「さぁ、掛けなさい。長旅で疲れただろう」

 当主の低く優しい声が、席につくように促す。

「ミリー。こっちにおいで」

 ディラン様に背中を支えられて隣に着席した。
 着席すると尻尾が腰にスルッと巻き付いてきた。

「あら。独占欲が強いのね。ミリーちゃん。初めまして。私はディーバックの妻のエレインよ。狼獣人は家族、特に番に対する愛情が強いから、人族のミリーちゃんには大変かもしれないけど、少しずつ受け入れてほしいの」

 エレインさんは、とても三人の息子を産んだとは思えないほどの若さと、メリハリのある体型をした美女だ。
 サラサラの長い黒髪は、白い肌を際立たせており、漆黒の瞳は懐かしさを覚えた。

「はい。承知しました。改めてご挨拶申し上げます。ハーベスト伯爵家長女、ミリアーナ.ハーベストと申します。慣れないことでご迷惑をお掛けするかもしれませんが、精進いたしますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします」

 緊張でぎこちないながらも、笑みを作り何とか挨拶を交わした。

「まっ。ミリーちゃんたらそんなに緊張することないのよ?あなたはもう家族なのだから」

「そうだぞ。急には無理かもしれないが、遠慮はいらない。家は息子ばかりで娘が欲しかったんだ。君はもう私達の娘だ」

「そうそう。ミリーちゃんは俺達の義妹なんだから、気を遣う必要なんてないよ」

 いつの間にか近くに来ていたので、体がビクッと跳ねた。

「ディーノ。彼女はディランの番だ。あまり馴れ馴れしくするな」

 ディーノと呼ばれた男性は、もう一人の男性に腕を引かれて距離を取った。

「はいは~い。兄上はお堅いなぁ」

 ディーノを注意した男性は、ため息をつくと自己紹介した。

「ディーノがすまない。私はディロン.ロードウルフ。ディランの長兄だ。で、こいつが次兄のディーノ。こんな調子だが、仕事は出来る」

「こんなって、ひどいなぁ。ディーノだよ。よろしく」

 軽口を叩きながらも、白い歯を見せて屈託のない笑みを浮かべて挨拶をする。
 二人ともに父親程ではないが、立派な体格で整った顔立ちをしている。
 兄の方はディランと同じ黒髪に金色の瞳を持ち、次兄のディーノは黒髪に瞳の色は母親と同じだ。
 私は姿勢を正すともう一度挨拶をした。

「私はハーベスト家長女、ミリアーナ.ハーベストと申します。よろしくお願いいたします」

 二度目の挨拶は緊張が解れたおかげで、スムーズに話せた。

「ああ、そう言えば、ミリアーナ嬢はハーベスト領で薬草を栽培しているそうだな。ディランには私が保有している伯爵位を譲ったからそこで自由に栽培してもらって構わない。時々ハーブティーなる物を馳走してくれたらそれで良い。出来ればハーブクッキーとやらも食べてみたいが」

「え?よろしいのですか?ありがとうございます!もちろんです!沢山作りますから、いつでも仰ってください!」

 またハーブ作りが出来ることに、私の気持ちは高揚した。
 ところが、隣のディラン様は不満気な表情で言葉を遮る。

「そんな頻繫に来られては、ミリーと二人の時間を過ごせません。気を遣ってください。父上」

 途端に恥ずかしさで真っ赤になった顔を、隠すように俯くしかなかった。 
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