1 / 15
小坂涼
しおりを挟む
涼ちゃんー!!圭ちゃんが女の人と歩いてた!」
「だから言ったでしょ。兄さん、多分彼女居るって」
部屋でいつものように音楽を聴いていると、隣に住む幼なじみ、大瀬仁菜子が突然大声を上げて僕の部屋に走り込んで来た。今、何時だと思ってんの?もう、夜の10時過ぎなんだけれども……なんて思いながら重い腰を椅子から上げる。
「ねえ、勝手にベッドに寝ころばないでっていつも言ってるよね?」
「うん。でもお風呂には入ったから綺麗だよ」
「……そういう事言ってんじゃない……」
仁菜子は僕の言葉もお構いなしにベッドの上でひたすらごろごろすると、突然体を起こしたと思うと胡座をかいた。僕はと言えばベッドの横に腰かけて彼女をじーっと見る。
「何で涼ちゃんは知ってたの?圭ちゃんに彼女が居るかもしれないって事」
「何となく。長い休みの日とかはこっちに帰らない事が多かったしさ」
「ああー。知ってたんなら早くに言ってよ」
「言ってたよ。でも仁菜子が聞かなかったんじゃない」
はあ……と盛大なため息を吐きながら彼女を見ると、胡座の姿勢のままベッドにボスンと倒れ込んだ。そして顔を腕で押さえたまま呟く。
「ずっと……好きだったのにな……」
幼なじみの仁菜子は小さな頃から僕の兄の圭の事が好きだ。それが僕が覚えている限りでは物心付いた時からの年季の入りようで、幼稚園の頃には既に「わたし、あきちゃんのおよめさんになるの!」とか言っていた気がする。僕は幼いながらもそんなの無理に決まっているじゃないか……なんて冷めた目で見ていた。
だって、兄は僕たちよりも6歳も年上だ。兄から見れば僕も仁菜子も本当に子供だ。そしてきっと大切な弟と妹。それはきっといつまで経っても、何歳になっても変わらない関係だと思う。「いつまで経っても仁菜子は兄ちゃんにとっては妹のままだと思うよ」……その事をはっきりと仁菜子に言ってやりたいけれど、さすがにそこまでは言えない。それは本人がいつか自分で気付かないといけない事だと思うし、今言った所で僕の意見に耳なんて貸さないだろう。
「ねえ、仁菜子、いい加減自分の家に帰ってくれない?」
「…………」
「聞いてるの?」
返って来ない返事。動かない仁菜子。そんな彼女を見ていると少しだけ苛々とした。どうして僕の前でそんな態度を取れるんだ?って。仁菜子が傷ついたという事は良くわかる。昔から兄一筋だったから。傍で何年その事をずっと見て来たと思ってるんだ?でも……それじゃ、僕は傷つかないとでも思ってんの?仁菜子は勝手すぎるよ。
そんな事を考えながらベッドに寝転がっているままの彼女に手を伸ばす。僕の手が仁菜子に触れた瞬間にびくりと彼女が動いた。
「ごめんね。涼ちゃん。自分勝手なのはわかってる。でも、今はもう少しだけ……このままでいさせて」
まだ腕を顔の上に乗せたまま小さな声で呟く仁菜子を見て、言おうとしていた言葉を飲み込んだ。
「わかった……」
僕は彼女の寝ころんでいるベッドから離れると、自分の机の椅子へと腰かけ、手元にあった週刊誌に目を落とした。
「だから言ったでしょ。兄さん、多分彼女居るって」
部屋でいつものように音楽を聴いていると、隣に住む幼なじみ、大瀬仁菜子が突然大声を上げて僕の部屋に走り込んで来た。今、何時だと思ってんの?もう、夜の10時過ぎなんだけれども……なんて思いながら重い腰を椅子から上げる。
「ねえ、勝手にベッドに寝ころばないでっていつも言ってるよね?」
「うん。でもお風呂には入ったから綺麗だよ」
「……そういう事言ってんじゃない……」
仁菜子は僕の言葉もお構いなしにベッドの上でひたすらごろごろすると、突然体を起こしたと思うと胡座をかいた。僕はと言えばベッドの横に腰かけて彼女をじーっと見る。
「何で涼ちゃんは知ってたの?圭ちゃんに彼女が居るかもしれないって事」
「何となく。長い休みの日とかはこっちに帰らない事が多かったしさ」
「ああー。知ってたんなら早くに言ってよ」
「言ってたよ。でも仁菜子が聞かなかったんじゃない」
はあ……と盛大なため息を吐きながら彼女を見ると、胡座の姿勢のままベッドにボスンと倒れ込んだ。そして顔を腕で押さえたまま呟く。
「ずっと……好きだったのにな……」
幼なじみの仁菜子は小さな頃から僕の兄の圭の事が好きだ。それが僕が覚えている限りでは物心付いた時からの年季の入りようで、幼稚園の頃には既に「わたし、あきちゃんのおよめさんになるの!」とか言っていた気がする。僕は幼いながらもそんなの無理に決まっているじゃないか……なんて冷めた目で見ていた。
だって、兄は僕たちよりも6歳も年上だ。兄から見れば僕も仁菜子も本当に子供だ。そしてきっと大切な弟と妹。それはきっといつまで経っても、何歳になっても変わらない関係だと思う。「いつまで経っても仁菜子は兄ちゃんにとっては妹のままだと思うよ」……その事をはっきりと仁菜子に言ってやりたいけれど、さすがにそこまでは言えない。それは本人がいつか自分で気付かないといけない事だと思うし、今言った所で僕の意見に耳なんて貸さないだろう。
「ねえ、仁菜子、いい加減自分の家に帰ってくれない?」
「…………」
「聞いてるの?」
返って来ない返事。動かない仁菜子。そんな彼女を見ていると少しだけ苛々とした。どうして僕の前でそんな態度を取れるんだ?って。仁菜子が傷ついたという事は良くわかる。昔から兄一筋だったから。傍で何年その事をずっと見て来たと思ってるんだ?でも……それじゃ、僕は傷つかないとでも思ってんの?仁菜子は勝手すぎるよ。
そんな事を考えながらベッドに寝転がっているままの彼女に手を伸ばす。僕の手が仁菜子に触れた瞬間にびくりと彼女が動いた。
「ごめんね。涼ちゃん。自分勝手なのはわかってる。でも、今はもう少しだけ……このままでいさせて」
まだ腕を顔の上に乗せたまま小さな声で呟く仁菜子を見て、言おうとしていた言葉を飲み込んだ。
「わかった……」
僕は彼女の寝ころんでいるベッドから離れると、自分の机の椅子へと腰かけ、手元にあった週刊誌に目を落とした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる