星屑のビキニアーマー

ぺんらば

文字の大きさ
上 下
21 / 64
第1章 ビキニアーマーができるまで

黒幕

しおりを挟む
 友依は生徒会に寄せられるケルベロスの目撃情報や、報告書など全てに目を通し、一つの結論を導き出していた。

「これはあくまで推測の域を出ないのですが……。ケルベロスは、何か目的があって私たち学生を襲っているんだと思います。大人に見つからないよう、騒ぎにならぬよう、非力な私たちに絞って攻撃してるんですよー」

「ケルベロスって、そんな頭の良い生き物には見えないけど……」

 今日のように奇襲をかけてくることはあるが、それが知的かと言えば首を傾げたくもなる。オオカミのように群れをなして行動することもなく、大抵は一匹、たまに二匹で現れたりするだけだ。そして、二匹で現れても、互いに協力することはない。

「それでは、これならどうでしょうー。ケルベロスを裏で操っている黒幕がいるとしたら……。神出鬼没なケルベロス。召喚されて現れると考えた方が自然な気がするんですよー」

「召喚かぁ。ゲームの世界ならよくあることだけど……。そうだよね。私たちの常識であれこれ考えるのは違う気がする。そうなると、さっきも広場のどこかに黒幕が隠れていたってことになるよね?」

「そうなりますねー。ケルベロスが姿を消したのが何よりの証拠です。私たちの一部始終を、どこかで見ていたんでしょう」

 友依の推理が事実だとすれば、プールサイドや学校のトイレで襲われたときにも、黒幕がすぐ近くにいたということになる。学校の敷地内、ましてや、夜の校舎に入れる人物は限られてくるだろう。

「雪ちゃん。黒幕になりそうな人で、誰か心当たりはありませんか?」

「え?」

「ケルベロスに襲われた回数が一番多いのが雪ちゃんなんです。黒幕が狙っているのは、雪ちゃんなのかもしれないんですよ……」

「心当たりがあるとすれば……」

 雪見が今、最も警戒している教師が一人いる。その男は、ケルベロスの習性もよく知っているのだ。

「……神山先生」

「ですね」

 その名が出ることを、友依は予想していた。プール掃除を雪見に命じて一人きりにしたのも、誰にも邪魔されず雪見をケルベロスに襲わせるためだとしたなら辻褄が合う。

「でも、どうして私を狙うんだろう」

「ま、理由を考えていても仕方ありませんよ。大丈夫です! 私たち生徒会が、必ずや神山先生の尻尾を掴んでみせますから。雪ちゃんは、そうですね……。なるべく一人にならないようにしてください」


 その日の夜、雪見は風呂に浸かりながらずっと考えていた。神山が何故、自分を狙うのか。魔法が使えるようになったことや、ケレンが異世界からきたことに関係しているのか。しかし、いくら考えても答えは出ない。

 友依は、自衛団を使って神山をマークすると言っていた。監視の目が多くなれば、神山は迂闊に動けなくなるはずだからだ。それは同時にケルベロス召喚を未然に防ぐことにも繋がる。

「友依ちゃんに任せっきりじゃダメだ。神山先生の目的が私にあるのなら、私自身で決着をつけなくちゃ。友依ちゃんたちが動き出す前に、私が──」

 月曜日、雪見は朝早く登校し、神山を待ち伏せることにした。
しおりを挟む

処理中です...