身代わりで隣国に嫁がされましたが、チー牛王子となんやかんや仲良く生きていきま、す?

佐伯 鮪

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52 集会

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*ありのままの自分でいましょう*
*人に嫌われるのを恐れないで*
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 二回目に教会を訪れた時、前回のように少人数ごとの談話ではなく、道士と呼ばれる人が前に立って演説のようなものを行っていた。それに対し、聴衆からさまざまな疑問が投げられ、道士はそれに一つ一つ答えていく形だった。

「"ありのままの自分"ってなんですか? 自分は自分でしょ? "ありのままの自分"じゃない状態って逆になんですか?」
「相手の機嫌を損ねることを恐れ、本来やりたいことと違う選択をする時……それは"ありのまま"とは言えないでしょう。その行動が貴方自身を苦しめているのなら、他人の顔色を伺うのは辞めていいんです」
「でもその結果、相手から嫌われる可能性があるってことですよね?」
「そうです」
「嫌われたくないからそうしているのに、わざわざ嫌われるように仕向けるのは本末転倒では?」
「不本意な選択を強いられる人といて、幸せですか? "ありのままの自分"の選択を受け入れてくれる相手と一緒にいるのが、何よりも健全なのです」


(そう簡単にできないから辛いんじゃ……)

 というのは私の感想だが、あえて声には出さなかった。

 誰にだって、気が合わない相手はいる。だが生活の中で、それを排除して過ごすことなどできはしない。だから人間関係を円滑にするように、誰もが日々工夫しているというのに。友達関係なら、離れることはできる。だが、仕事や生活の関係はそうもいかない。
 そりゃあ、自分が気持ちよければ自分だけはいいかもしれないけど。王様でもあるまいし、全てを思い通りになんて、皆が皆叶うわけがない。それに例え王様だって、組織として見たときに、同じ考えの者だけ集めていたら思想に偏りが生じていくだろう。まさに今、この国がそうなりつつあるではないか、それは健全な国家と言えないのではないかと思った。


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*課題の切り分けをしましょう*
*自分の選択の結果は受け入れて*
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「自分が行動を変えて解決できる問題以外では、そもそも頭を悩ませる必要はないのです。それは貴方の『課題』ではありません。その結果起こりうる問題で困るのは誰か、考えましょう」
「……例えば、うちの夫が働かないのですが、それは妻である私の課題ではないということでしょうか?」
「そうです、貴方の課題ではない」
「でも収入がないと私も困ります」
「貴方が『彼は何故働かないのか?』と心を悩ませたり、彼に『働け』と口酸っぱく言うことで、問題は解決しますか? 考えても彼の心はわからないし、命令すると逆に頑なになったりしませんか?」
「……そうです、解決しません。でも言い続けるしかないじゃないですか」
「それは違います。彼が働くか働かないかは、彼の課題。貴方の課題は、家に収入がないということを受けて、貴方自身はどういう行動をするか、ということ」
「だから夫に……」
「相手をどうにかしようとするのは烏滸がましい。貴方が働くか、あるいは相手を見限って別々に暮らすなり、どういう行動するか考えるべきなのです」


(……道士って人達は、みんな口が上手いなぁ)

 三回目も、道士の演説と聴衆との問答が繰り広げられていた。前回から引き続き思ったことだが、何かしらの反論をしたとしても、なんとなく自分の意見を否定されて相手の弁の方へ流されていってしまう。
 何を発言してもしっかりしてそうな返事が返ってくるので、自分の考えは甘くて、道士が正しい答えへ導いてくれている……と思ってしまいそうな怖さを感じた。


「そして、自分の行動の結果は、自分で引き受けなければならない。例えば、貴方が働かない夫に代わって辛い仕事をすることになったとしても、それは夫のせいではない。貴方自身が選んだことだということ」
「え、だって働かない夫のせいでしょ?」
「違う、貴方が決めたこと。ここで夫のせいにしたら、貴方は苦しみからずっと逃れられなくなる。夫もそんな貴方に苦しめられることになる」


 そんな問答を繰り返した後、最初の時のように少人数ごとにまとまりを作って、話し合った。先ほどの話題についてでも良いし、議題に当てはまる自身の話でも良いということだった。
 誰もがなんだかんだ日々悩みは抱えており(宗教には悩んでる人が集まるのだから当然と言えば当然だが)、これらの談義は尽きることがなく、解散の時間まで続いた。


 琉花ルゥファの姿は、相変わらず見つからなかった。
 それに人口流出に関係しそうな話も、ただ通っているだけでは聴こえてこなかった。
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