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序章 貴族転生
第二十一話 職業からの魔力問題
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苦節五年。ついに職業を入手した。その職業の詳細を教えてもらおう。
「【トイストア】と固有スキルについて教えてください!」
「言葉の通りの内容よ」
「……おもちゃ屋ってことですか?」
「えぇ。是非いろいろ購入して一緒に遊んでちょうだい」
モフモフと遊ぶための職業か?
でも万能チートな職業だって言っていた気がする。しかも上級職らしい。
「おもちゃを購入するから金策が必要だったんですか?」
「そうよ」
「…………」
人生詰んでしまったのでは?
「あら? まだ名前のことしか言ってないじゃない。早とちりはダメよ?」
「では具体的なことを教えてください!」
「職業スキルは職業に関連したものしか取得できないのが当たり前なの。種族特性スキルはそれを補うアドバンテージなっているわね。でもあなたはその枠には入らないわ。スキルで買ったおもちゃで遊ぶだけで関連したスキルが習得できるの。すごいと思わない? あなたはなりたいものになれるのよ?」
まぁ言外に「努力は必要だけど」と、付け加えているだろうけど。
「確かにすごいですね。生産職も前衛職も後衛職も関係なくスキルを得られることは、まさにチートとしか言いようがないですね」
「でも狙い撃ちはできないわよ」
「え?」
「このスキルが欲しいからこのおもちゃで遊ぶとかはできないわよ。買って遊んで習得するまでは、何のスキルを得られるかは分からないようになっているのよ。心の底から純粋に楽しんでもらうためにね」
最悪無駄金を使うことになるかもってこと?
「無駄なスキルなんてないわよ? 使い方が下手か工夫が足りないかのどちらかじゃないかしら? あの職業は使えないとか劣っているとかは使う人次第よ。無能が使う職業やスキルは無能になるだけ。結局人の価値は人ではかるものなのよ」
「すみませんでした!」
即座に土下座をする。
「素直でよろしい! じゃあスキルね。まずは【カタログ】からにしましょうか」
俺は頭をフミフミしているモフ丸の足を退けて聞く姿勢をとる。
「はい!」
「言葉の通り購入するためのカタログよ。言葉にしても念じてもいいからカタログを意識してみて」
「……おぉぉぉぉーーー!」
目の前にステータスのようなほんのり輝く板が出てきた。これもステータスと同じく俺にしか見えないという。
「正確にはあなたと契約したものは見れるわ」
「契約?」
「従魔契約や精霊契約のことよ。まぁ最高位の奴隷契約も見れるかしらね」
従魔来たぁぁぁぁぁーーー!
モフモフと戯れることができる重要なスキル。しかし狙い撃ちができないということで、いつになったら従魔を得られるんだろうか。
それと精霊契約か……。エルフとの子どもだけど今のところ心霊現象的なものは見ていない。まず見えなければ契約できないって本に書いてあったんだけどな。
「従魔スキルはこちらから申請して、従魔の能力の一部を借りたり五感を共有したりできるっていうものよ。モフモフなどから従魔にして欲しいって言われて許可を出せば従魔契約は可能よ。スキルはつかないけど。あなたが不思議がっていた料理スキルも同じよ。家庭料理までのものはスキルがつかないのよ」
なるほど。逆に料理スキルを習得できればプロとしてやっていけるわけだ。
「精霊契約は神族である鬼族なんだから契約できるわよ。心霊現象と言っている精霊の現象だけど、場所が村っていうことと自分のせいで見れていないだけだから。まぁ説明はあとにしてカタログの続きを話すわよ」
俺のせい? 何かしたっけ?
「目の前にある板には四つのアイコンがあると思うの。『カタログ』『セクション』『メール』『カスタマーサポート』ね。まずはカタログをタップしてみて。二つのアイコンが出てくると思うから」
確かに『おもちゃ』と『本』という二つのアイコンが出てきた。ということは本も買えるのか。
「どちらもタップした後の画面は似たようなものだから今回は『おもちゃ』をタップして。それが注文画面よ。検索バーがあって六つのカテゴリーがあると思うの」
どこかに似ている通販サイトがありそう。第一印象はそう感じた。
検索バーが一番上に来て、その下に『おすすめ』『レベル』『男の子』『女の子』『購入履歴』『カード』というカテゴリーが並んでいた。
「これ……レベルって書いてありますけど……まさかレベルごとに買えるものが決まっているんですか?」
「もちろんよ。今の若い子たちはアプリばかりでしょ? おもちゃらしいものでいっぱい遊んでもらいたいのよ!」
「本もですか?」
「そうよ」
万能チートだよな……? 金がかかるって言っていたけど、これにお金を入れたら世界からお金が消えそうなんだけど……。
「それは大丈夫よ。迷宮があるから迷宮の宝箱に放り込むし。魔物を倒してもお金しか出ない迷宮があるから、資源にもなっていいかなって思っているわ。神力の節約ね」
「では今買える物とは? そして今後は?」
「今は知育玩具と児童書ね」
そんな年じゃねぇぇぇぇーー!
「五歳は十分そんな年よ。それから今後はレベルアップ後に分かるから内緒よ。楽しみにしててね」
「そんなぁぁぁーー!」
「欲しい商品をカートに入れて支払い画面に行く。返品は不可能だから気をつけてね」
無視か……。
「支払い方法は二つ。現金払いとカード払い。現金は投入口に入れてくれればいいけど、ポイントはつかないわよ」
「ポイントがあるんですか? 還元率は?」
「購入金額の五パーセントよ!」
「すごい! でもカードが必要なんですよね!?」
「ポイントカードじゃなくて電子マネーのカードなんだけど、使い方は簡単でチャージして画面に当てるだけ。今なら効果音の設定ができるわよ? 『わふ~ん』なんてどう?」
それは……どうだろう? ダメな気がする。
「作り方は……?」
「一応ストアって銘打っているから商会を設立して商会名を登録する必要があるわ。でも商会は二人以上でなければ登録できないのよ」
「二人? 行商人は一人でもできますけど?」
「ん? 人間でなくてもいいのよ? 行商人もパートナーにお馬さんがいるじゃない」
いるけど……。いるけども……。俺がこれから行くのは魔の森という魔境なんだけどな……。親分に頼んでみようかな。
「支払い方法の画面には『送り先』の選択画面が出てくるんだけど、それが【セクション】のことよ」
「セクションもレベル制なんですよね?」
「そうよ。五箇所の内、四箇所が送り先に指定できるの。レベル一は【ストアハウス】よ」
倉庫か……。予想ではアイテムボックスなんだけど落とし穴がありそうだな。
「カタログで購入したものと自分で作ったもの限定の無限倉庫よ」
ん? 時間停止や遅延はないのか? 大きさの指定とかも?
「出し入れは『収納』や『取り出し』を意識すればいいけど、スキルには工夫次第で無限の可能性を秘めていることだけは忘れないでね。私が言えるヒントはこれだけ」
人差し指を立て唇に当てる姿はまさに女神という姿を醸し出しており、ついつい見とれてしまっていた。
便宜を図ってくれて言える範囲ギリギリまでのアドバイスをくれたのだろう。絶対に忘れないようにしよう。
「メールは私からの一方通行の手紙を受信するところよ。命令というわけじゃないけど、困っていることがあったらお願いすることもあるかも。お礼を受け取るためのギフトボックスもあるわよ」
「称号に〈使徒〉がついていたので、予想はしていました」
「お願いね。『カスタマーサポート』は私の直属の部下がお客様窓口をするわ。使い方で分からないことがあったり困ったことがあったりしたら、気軽に相談してちょうだい」
おぉぉぉーーー!
めちゃくちゃ助かるかも。アルテア様の部下なら優秀なことは間違いなさそうだしね。
「これで一通りの説明は終わったわ。あとは精霊のことだったわね」
「はい。俺のせいって聞いたんですけど?」
「半分は精霊が見えない獣人族の村が理由よ。精霊も自我があるから、お話できない場所に行ってもつまらないでしょ? エルフは隷属の首輪のせいで精霊と会話してはいけないとなっているし。さらに化け物級の魔力を垂れ流している存在がいる場所に近づくものはいないわよ。魔の森には奥に行くほど精霊がたくさんいるわ」
俺って魔物からはご馳走に見られていて、精霊には化け物に見られていたのか。
なんか天然の精霊除けみたいだな。
「あと町に行く前に魔力を引っ込めてから行きなさいよ」
「なぜですか? あと森はいいんですか?」
「森はいいわ。どうせ最初の内は戦闘時に魔力を放出しすぎてすぐにバレるもの。ただあなたはすでに化け物級の魔力を持っているのよ? 慣れていない者たちがあなたに近づいたら、まるで水の中にいるように動きづらく息苦しく感じると思うわ」
「えっと……。屋敷では平気だったんですが?」
「あなたと接点があった者って限られるでしょ? それに小屋周辺に誰も近づかないのは神子のせいだけじゃなかったのよ。なぜか息苦しく感じるから呪われた場所って噂されていたのよ」
え? 忠臣メイドは普通にしていたけど?
「彼女は慣れよ。赤ちゃんの頃から一緒だったし、ドロンの果実を食べていたから強制的に魔力量が増えて耐性が上昇したのね。そうね……あなたが検証で行っていた属性攻撃耐性だけど、彼女は無属性に関してはあなたのせいで最大値かもしれないわね。しかも化け物の威圧耐性つきで」
「……彼女が猛者になれたのは俺のおかげってことですね。でも兵士達もいますよ?」
「ものはいいようね。まぁ実際に呪われた場所に行ける猛者ってことであなたの迎え要員に指名されたわけだけど。それと兵士達のことだけど、あなたは武術訓練のときは魔力の放出を止めていたじゃない。そのおかげよ。神子の前や伯爵の前では一応阿呆の子の演技をしていたみたいだしね」
そういえばそうだった。
ある意味忠臣メイドの前が一番リラックスしていた気がする。熊親分たちの前では細心の注意を払っていたし。
「それは決闘場で熊親分の戦いを見た後に型を真似して見たんですが、熊親分に魔力を放出しての訓練はまだ早いって言われてからは止めてましたね」
「……見てたわよ。そのときに思ったけど、いくら心話のスキルがあるって言っても、よく熊親分が言っていることが分かるわね。『グォ』しか言ってないじゃない」
「ジェスチャーで教えてくれますよ?」
「少しだけね。じゃあ説明も済んだし、そろそろ向こうに送るわね。また会いましょう。あの子をお願いね」
「わふっわふ~っ」
「精一杯精進して霊王様を助けます! いってきます!」
こうして俺の職業授与の儀式は無事に終えたのだった。
「【トイストア】と固有スキルについて教えてください!」
「言葉の通りの内容よ」
「……おもちゃ屋ってことですか?」
「えぇ。是非いろいろ購入して一緒に遊んでちょうだい」
モフモフと遊ぶための職業か?
でも万能チートな職業だって言っていた気がする。しかも上級職らしい。
「おもちゃを購入するから金策が必要だったんですか?」
「そうよ」
「…………」
人生詰んでしまったのでは?
「あら? まだ名前のことしか言ってないじゃない。早とちりはダメよ?」
「では具体的なことを教えてください!」
「職業スキルは職業に関連したものしか取得できないのが当たり前なの。種族特性スキルはそれを補うアドバンテージなっているわね。でもあなたはその枠には入らないわ。スキルで買ったおもちゃで遊ぶだけで関連したスキルが習得できるの。すごいと思わない? あなたはなりたいものになれるのよ?」
まぁ言外に「努力は必要だけど」と、付け加えているだろうけど。
「確かにすごいですね。生産職も前衛職も後衛職も関係なくスキルを得られることは、まさにチートとしか言いようがないですね」
「でも狙い撃ちはできないわよ」
「え?」
「このスキルが欲しいからこのおもちゃで遊ぶとかはできないわよ。買って遊んで習得するまでは、何のスキルを得られるかは分からないようになっているのよ。心の底から純粋に楽しんでもらうためにね」
最悪無駄金を使うことになるかもってこと?
「無駄なスキルなんてないわよ? 使い方が下手か工夫が足りないかのどちらかじゃないかしら? あの職業は使えないとか劣っているとかは使う人次第よ。無能が使う職業やスキルは無能になるだけ。結局人の価値は人ではかるものなのよ」
「すみませんでした!」
即座に土下座をする。
「素直でよろしい! じゃあスキルね。まずは【カタログ】からにしましょうか」
俺は頭をフミフミしているモフ丸の足を退けて聞く姿勢をとる。
「はい!」
「言葉の通り購入するためのカタログよ。言葉にしても念じてもいいからカタログを意識してみて」
「……おぉぉぉぉーーー!」
目の前にステータスのようなほんのり輝く板が出てきた。これもステータスと同じく俺にしか見えないという。
「正確にはあなたと契約したものは見れるわ」
「契約?」
「従魔契約や精霊契約のことよ。まぁ最高位の奴隷契約も見れるかしらね」
従魔来たぁぁぁぁぁーーー!
モフモフと戯れることができる重要なスキル。しかし狙い撃ちができないということで、いつになったら従魔を得られるんだろうか。
それと精霊契約か……。エルフとの子どもだけど今のところ心霊現象的なものは見ていない。まず見えなければ契約できないって本に書いてあったんだけどな。
「従魔スキルはこちらから申請して、従魔の能力の一部を借りたり五感を共有したりできるっていうものよ。モフモフなどから従魔にして欲しいって言われて許可を出せば従魔契約は可能よ。スキルはつかないけど。あなたが不思議がっていた料理スキルも同じよ。家庭料理までのものはスキルがつかないのよ」
なるほど。逆に料理スキルを習得できればプロとしてやっていけるわけだ。
「精霊契約は神族である鬼族なんだから契約できるわよ。心霊現象と言っている精霊の現象だけど、場所が村っていうことと自分のせいで見れていないだけだから。まぁ説明はあとにしてカタログの続きを話すわよ」
俺のせい? 何かしたっけ?
「目の前にある板には四つのアイコンがあると思うの。『カタログ』『セクション』『メール』『カスタマーサポート』ね。まずはカタログをタップしてみて。二つのアイコンが出てくると思うから」
確かに『おもちゃ』と『本』という二つのアイコンが出てきた。ということは本も買えるのか。
「どちらもタップした後の画面は似たようなものだから今回は『おもちゃ』をタップして。それが注文画面よ。検索バーがあって六つのカテゴリーがあると思うの」
どこかに似ている通販サイトがありそう。第一印象はそう感じた。
検索バーが一番上に来て、その下に『おすすめ』『レベル』『男の子』『女の子』『購入履歴』『カード』というカテゴリーが並んでいた。
「これ……レベルって書いてありますけど……まさかレベルごとに買えるものが決まっているんですか?」
「もちろんよ。今の若い子たちはアプリばかりでしょ? おもちゃらしいものでいっぱい遊んでもらいたいのよ!」
「本もですか?」
「そうよ」
万能チートだよな……? 金がかかるって言っていたけど、これにお金を入れたら世界からお金が消えそうなんだけど……。
「それは大丈夫よ。迷宮があるから迷宮の宝箱に放り込むし。魔物を倒してもお金しか出ない迷宮があるから、資源にもなっていいかなって思っているわ。神力の節約ね」
「では今買える物とは? そして今後は?」
「今は知育玩具と児童書ね」
そんな年じゃねぇぇぇぇーー!
「五歳は十分そんな年よ。それから今後はレベルアップ後に分かるから内緒よ。楽しみにしててね」
「そんなぁぁぁーー!」
「欲しい商品をカートに入れて支払い画面に行く。返品は不可能だから気をつけてね」
無視か……。
「支払い方法は二つ。現金払いとカード払い。現金は投入口に入れてくれればいいけど、ポイントはつかないわよ」
「ポイントがあるんですか? 還元率は?」
「購入金額の五パーセントよ!」
「すごい! でもカードが必要なんですよね!?」
「ポイントカードじゃなくて電子マネーのカードなんだけど、使い方は簡単でチャージして画面に当てるだけ。今なら効果音の設定ができるわよ? 『わふ~ん』なんてどう?」
それは……どうだろう? ダメな気がする。
「作り方は……?」
「一応ストアって銘打っているから商会を設立して商会名を登録する必要があるわ。でも商会は二人以上でなければ登録できないのよ」
「二人? 行商人は一人でもできますけど?」
「ん? 人間でなくてもいいのよ? 行商人もパートナーにお馬さんがいるじゃない」
いるけど……。いるけども……。俺がこれから行くのは魔の森という魔境なんだけどな……。親分に頼んでみようかな。
「支払い方法の画面には『送り先』の選択画面が出てくるんだけど、それが【セクション】のことよ」
「セクションもレベル制なんですよね?」
「そうよ。五箇所の内、四箇所が送り先に指定できるの。レベル一は【ストアハウス】よ」
倉庫か……。予想ではアイテムボックスなんだけど落とし穴がありそうだな。
「カタログで購入したものと自分で作ったもの限定の無限倉庫よ」
ん? 時間停止や遅延はないのか? 大きさの指定とかも?
「出し入れは『収納』や『取り出し』を意識すればいいけど、スキルには工夫次第で無限の可能性を秘めていることだけは忘れないでね。私が言えるヒントはこれだけ」
人差し指を立て唇に当てる姿はまさに女神という姿を醸し出しており、ついつい見とれてしまっていた。
便宜を図ってくれて言える範囲ギリギリまでのアドバイスをくれたのだろう。絶対に忘れないようにしよう。
「メールは私からの一方通行の手紙を受信するところよ。命令というわけじゃないけど、困っていることがあったらお願いすることもあるかも。お礼を受け取るためのギフトボックスもあるわよ」
「称号に〈使徒〉がついていたので、予想はしていました」
「お願いね。『カスタマーサポート』は私の直属の部下がお客様窓口をするわ。使い方で分からないことがあったり困ったことがあったりしたら、気軽に相談してちょうだい」
おぉぉぉーーー!
めちゃくちゃ助かるかも。アルテア様の部下なら優秀なことは間違いなさそうだしね。
「これで一通りの説明は終わったわ。あとは精霊のことだったわね」
「はい。俺のせいって聞いたんですけど?」
「半分は精霊が見えない獣人族の村が理由よ。精霊も自我があるから、お話できない場所に行ってもつまらないでしょ? エルフは隷属の首輪のせいで精霊と会話してはいけないとなっているし。さらに化け物級の魔力を垂れ流している存在がいる場所に近づくものはいないわよ。魔の森には奥に行くほど精霊がたくさんいるわ」
俺って魔物からはご馳走に見られていて、精霊には化け物に見られていたのか。
なんか天然の精霊除けみたいだな。
「あと町に行く前に魔力を引っ込めてから行きなさいよ」
「なぜですか? あと森はいいんですか?」
「森はいいわ。どうせ最初の内は戦闘時に魔力を放出しすぎてすぐにバレるもの。ただあなたはすでに化け物級の魔力を持っているのよ? 慣れていない者たちがあなたに近づいたら、まるで水の中にいるように動きづらく息苦しく感じると思うわ」
「えっと……。屋敷では平気だったんですが?」
「あなたと接点があった者って限られるでしょ? それに小屋周辺に誰も近づかないのは神子のせいだけじゃなかったのよ。なぜか息苦しく感じるから呪われた場所って噂されていたのよ」
え? 忠臣メイドは普通にしていたけど?
「彼女は慣れよ。赤ちゃんの頃から一緒だったし、ドロンの果実を食べていたから強制的に魔力量が増えて耐性が上昇したのね。そうね……あなたが検証で行っていた属性攻撃耐性だけど、彼女は無属性に関してはあなたのせいで最大値かもしれないわね。しかも化け物の威圧耐性つきで」
「……彼女が猛者になれたのは俺のおかげってことですね。でも兵士達もいますよ?」
「ものはいいようね。まぁ実際に呪われた場所に行ける猛者ってことであなたの迎え要員に指名されたわけだけど。それと兵士達のことだけど、あなたは武術訓練のときは魔力の放出を止めていたじゃない。そのおかげよ。神子の前や伯爵の前では一応阿呆の子の演技をしていたみたいだしね」
そういえばそうだった。
ある意味忠臣メイドの前が一番リラックスしていた気がする。熊親分たちの前では細心の注意を払っていたし。
「それは決闘場で熊親分の戦いを見た後に型を真似して見たんですが、熊親分に魔力を放出しての訓練はまだ早いって言われてからは止めてましたね」
「……見てたわよ。そのときに思ったけど、いくら心話のスキルがあるって言っても、よく熊親分が言っていることが分かるわね。『グォ』しか言ってないじゃない」
「ジェスチャーで教えてくれますよ?」
「少しだけね。じゃあ説明も済んだし、そろそろ向こうに送るわね。また会いましょう。あの子をお願いね」
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