暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

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第一章 居候、始めます

第八話  うまい話には裏がある

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 ダンジョン都市【ポット】は、想像通りのファンタジーの町並みをしており、とってもワクワクした。
 これぞ異世界転生。
 今までの十二年間はパチモンの異世界転生だった。
 王弟はほとんど王都にいるし、俺たちの主な仕事場は北部の西側だった。
 そのせいでほとんど人族しかいなかったのだ。

 ちなみに、王国は東西南北に大領主がいて、中央部の真ん中で種族の分布が変化している。
 東部に向かって進むほど種族の数は増していき、西部に向かって進むほど人族に限定されていく。
 隣国の影響がほとんどだけど、ダンジョンの有無も多少は関係しているらしい。
 西部はダンジョンがないらしいからね。
 貧弱な人族には過ごしやすいが、獣人たちには物足りないかもしれない。彼らは戦闘狂が多いからね。

 閑話休題。
 人を避けつつ道を進むことしばし、ようやく広場にたどり着いた。
 初めて見るギルドは想像よりも大きく立派で、円形の塔のような造りだ。異世界では珍しいことに、四階建てに屋上付きである。
 多くても二階建てが基本な建物の中ではすごく目立つ。
 なお、三階以上が禁止ってことではない。
 追加で税金を払う必要があるだけだ。
 だから、余裕がある貴族や豪商は権威などのために立派な屋敷を建てる必要がある。

「防衛のためかな?」

 ダンジョンを監視する必要があるから、ちょうど真ん中に位置する広場に塔を建てたのかもしれない。

「満喫生活の第一歩。いざ行かん」

 開けっ放しのドアを潜り、受付に視線を向ける。
 親切なことに窓口の上に『相談』『登録』『依頼』『買取』と、案内表示板がぶら下げられていた。
 もちろん、『登録』の受付に向かう。

 テンプレに遭遇してもいいかもしれないと思っているが、何故か避けるように離れていく。
 それも俺の顔を見た人のみ。

 失礼じゃないかな?
 個人的には美少年だと思っているんだけど。

「い、いらっしゃい。登録でいいのかしら?」

「はい。お願いします」

「じ、じゃあ、これを記入してくれる?」

「はい」

 記入項目は全て当たり障りのないものだけだった。
 名前、年齢、性別、種族、属性、技能スキルの中で必須な項目は名前だけで、他は全て任意らしい。
 詮索や鑑定は御法度で、後者は殺されても文句が言えないらしい。

 まぁ美人エルフに鑑定されたけど。
 俺もしたからアレはチャラだろう。

「終わりました」

「えっと、ディラン様ですね。十二歳、男性。だけでよろしかったですか?」

「はい」

「属性や技能を記入しないとパーティーを組みにくくなりますよ?」

「しばらく一人でやってみますし、自分に何があっているかわからないので色々やってみます」

「そうですか。わかりました。では、規則や依頼についてはこちらをお読みください」

「わかりました」

「依頼を受けた後で知らなかったというのは駄目ですから、わからないことがありましたら、次に来た時に聞いてくれればお答えします」

「わかりました」

「他に質問はないですか?」

 宿のことは登録が終わってから聞こう。

「ないです」

「でしたら、こちらのカードに血を一滴垂らして、登録料五シルバーを払ってください」

 一シルバーは千円くらいだから、五千円くらいか。
 血を垂らしつつ、巾着型の財布から銀貨を五枚取り出してカウンターに置いた。

「はい、完了です」

「ありがとうございました。それで、宿の場所を教えて欲しいのですが」

「どちらの宿でしょう?」

「【双竜の楽園亭】って──「えっ!? あちらに泊まられるんですか!?」

「はい。何か問題あります?」

「いえ。閉店したと聞いたものですから」

 はぁ? 聞いた話と違うぞ?

「一応行ってみます」

「わ、分かりました。北の工業区に建てられていますので、北門に向かって外壁を目指してください。外壁沿いを東に向かって歩いていくとスラム街に近づくのですが、そこまで行けば竜の看板が見えるのですぐにわかると思いますよ」

「ありがとうございます。行ってみます」

「スラム街に近いですからお気をつけて」

 普通止めるだろと思いながら、笑顔で会釈をした。

「ひっ」

 失礼な人だ。チェンジで。


 ◆


 耐性技能のおかげで空腹自体は耐えられるのだが、屋台が並んでいるところを我慢して素通りできるかは別の話だ。
 それでも料理自慢の宿屋を目指して我慢を続けた末、ようやく到着した。

 受付嬢が言っていた通りすぐにわかったけど、受付嬢が言っていたように閉店はしていなかった。
 普通に明かりがついているし、いい匂いが漏れ出ている。

「これは期待できるんじゃないか」

 俺は期待を胸に宿屋の扉を開いた。

「いらっしゃいっ!」

「──な、何でっ!?」

 そこには、さっき別れたばかりの美人エルフがいた。
 宿屋の内装に目が行かないほど、衝撃的な再会だ。

「だって、私たちのお家だもん。居て当たり前でしょ?」

 そういう意味じゃねぇよ?

「わざわざ商売敵の店を勧めるわけないでしょ? この店が一番に決まってるわ」

 それはそうだけど、完全に失念してた。
 食事を明日にしてくれたときに気づくべきだった。

 ……うん、他に行こう。

「幸運ね。さっき知り合いの冒険者に会った時に聞いたんだけど、宿が一杯でダンジョン周辺で野営するんだって。でも、あなたはうちがあるもんね?」

 出た。有無を言わせぬ圧がある笑顔。

「えっと……」

「まずは飯だ」

「むぅ」

 救世主、再降臨。
 そして救世主を攻撃する膨れ顔の美人エルフ。
 そんな二人を見て思ったことが一つある。

 料理はマッチョエルフが作ってるんだな。
 男女がどうこうと言うわけじゃないけど、腕によりをかけて作るって言ってたけど、旦那が作るってことね。
 あの人に口喧嘩で勝てる気がしない。

「手洗いうがいをしましょうね」

「はい」

 もう言いなりだ。
 俺に拒否権はない。

「それじゃあ食べましょうか──っ」

 突如発動する〈鑑定遮断〉。
 これは常時技能だが、下位技能の〈鑑定妨害〉の防壁が貫通した後に自動で発動する技能だ。
 しかも、逆探知もしてくれる優秀な技能である。

 ──方角は扉の外。

 暗殺者モード起動。
 技能〈心眼〉〈生命感知〉〈痛覚遮断〉〈身体強化〉発動。【神字:処理】発動。【念動】待機。

 ここまでおよそ一秒。
 そして石器を抜き、一歩目から〈高速移動〉発動。

「──何をするっ!?」

「……」

 組み付いた後は、拳打に合わせて無属性魔法の《波動》を放つ。
 おそらく障壁を張っていたのだろう。手応えの感じから何かに阻まれるような感触を得たが、構わず左手を押し込んだ。
 相手は割られた障壁を操作して俺に反撃してきた。
 狙いは足止めだろう。
 人間の防御本能を利用した上手い手だと思う。
 痛みがあれば体が硬直するし、痛みの原因から避けようとする。
 ただ距離を取りたいだけなら、属性攻撃も威力も不要だ。
 技能〈魔力操作〉に自信があれば、間違いなく最善手である。

 しかし、残念ながら俺には効かない。

「──グッ!」

 距離も開けさせないし、術式も組ませない。
 技能〈鑑定妨害〉を貫通させるまで鑑定し続けた相手に容赦することはできない。

「貴様っ、いい加減に──「いい加減にするのはあなたよ?」」

「待て」

 エルフ夫婦が介入してきた直後、石器を持っている右腕の手首を掴まれてしまった。
 目の前には敵の首があり、あと一歩だというのにだ。
 それならば待機中の【念動】で押し込んでやろうと思い、〈魔力操作〉を起動したところに──

「母上っ!」

 という声が聞こえて来たのだった。


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