暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

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第一章 居候、始めます

第二十話 掘り出し物

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 朝から連続してびっくりすることが起きたが、なんとか実害を出さずに当初の目的通り、宿屋の手伝いができている。

 連日見る暇がなかったけど、宿屋がある場所は正直微妙な立地だと思う。
 工業区の北端にあるおかげで、朝早くから大きな音が聞こえてくるし、景色も殺風景で市壁以外見るものはない。東に向かえばスラム街だし、そのおかげで工業区にある割には周囲の建物に人の気配はない。

 襲撃する側にとっては潜伏場所もあれば、襲撃する機会が多くあるということだ。
 それに食堂の客として訪れてしまえば偵察も容易で、また陽動にも使えるだろう。

「今のところ特に問題はなさそうだけど……」

 朝食までまだ時間がありそうだから、見回りの範囲を広げよう。

 まずは西側にある商業区に向かう。
 ダンジョン都市の南側は貴族街が置かれている貴族区だから、東西の区画も南に向かうほど警備が厳しくなっている。
 でも、北側に近い場所なら誰でも入れるほど警備が緩いらしい。
 これは目的地を決める際に調べたことだから、実際にどうかは分からない。
 ただ、ブルーノさんが仕入れしている商会も商業区の北側らしいから、おそらく止められることはないだろう。

「そうだ。ゴミ置き場見てこよう」

 生ゴミはポットンスライム処理らしいけど、破損したものや火災等の事故により破損したものを集積する、不燃物用の廃品置き場があるらしい。
 一応リサイクル目的で置かれているらしいから、俺が欲しいものを持って行ってもなんの問題もない。

 現に俺のお仲間がたくさんいる。

「おいっ! ここはおれたちの縄張りだぞっ!」

 クソガキに構っている暇はないので、サクッと欲しいものだけ拾って見回りに戻ろう。

「おいっ! きいているのかっ!?」

 ゴミ山の頂上で何やら吠えているクソガキは、子分に命令して俺を追い出そうとしてきた。

 ゴミ山の大将のくせに小さいやつだ。

「おいっ! 出てけよっ!」

「そうだっ! そうだっ!」

「はぁ……」

 ──〈身体強化〉
 ──〈悪路走破〉

 技能スキルを使ってゴミ山の大将の目の前まで移動し、肩に手を置いて目線を合わせる。

「少し静かにしてくれる?」

「──うっうっうっ……」

「君たちの領地じゃないんだから、ここはみんなのものなんだよ? 次来たときも同じこと言っていたら、ずっとここにいられるようにしてあげる。……わかった?」

「…………」

「返事」

「わ、わかっ、たっ」

「ならよし」

 冒険者登録をした後から考えていた仮説が、まさかの正解とは……。
 俺の目って怖いのかな?
 自分で言うのはなんだけど、宝石のアレキサンドライトみたく綺麗な紫色の瞳だと思うんだけどね。
 個人的には一番のチャームポイントだ。

 それはさておき。
 下見だけというのももったいないので、石器よりマシくらいのナイフでも探していこう。

 ──《無属性魔法:探知》

 追加で【神字:処理】を意識する。
 魔力で走査スキャンしたゴミ山から、ナイフっぽい形状の物をピックアップし、さらに折れていない物を選別していく。
 その中でも特に魔力量が多い物のみ絞り込んでいくと、残ったものはたったの二本。
 安全に配慮しつつ、【念動】を使って掘り出していく。

「おっ! 結構綺麗じゃん」

 何故捨てられているのか謎なほどの美品を回収でき、大変満足した気持ちで見回りに戻ることができた。

 うん、また来よう。


 ◆


 予想通り誰何されることなく商業区に入ることができた。
 朝市が行われていることもあり、そこそこ賑わっているし、普段は多くないらしい衛兵の姿もある。

 理由は分かる。

 この都市に住んでいる人が朝市を開く場合、中央広場及び広場に繋がる主要道路沿いに露店を設置する。
 しかし、都市外に住んでいる者たちが出稼ぎで露店を開く場所は、目の前の市壁付近である。どのような人物が紛れ込んでいるか分からない以上、警備しすぎってことはない。

 ちなみに、対応の違いは差別ではない。
 都市と言われるだけあって広い上に、市場の数も多く立ち並んでいる。
 搬入や帰宅が楽なように北門付近で露店を出させ、さらに消費者側も都市外の商品を見つけやすくしているわけだ。

「ここは今度かな」

 今日は目的があるから朝市は泣く泣く諦めた。
 朝市は異世界満喫生活から外せないことだが、今日はそのための準備だと思おう。

 さて、後ろ髪を引かれる思いで目的地に向かい、ようやくその場所に到着した。

「おい、坊主。来る場所間違えているぞ」

「間違えていませんよ」

「賭け事も酒も大人になるまで待ってろ」

「意外に優しいんですね」

「怖い顔だからって紳士じゃないなんて頭が悪いやつが考えることだぞ?」

「いえ、そうではなく。盗賊ギルドのマスターにしては、という意味ですよ」

「……何言ってんだ? 絵本の読みすぎか?」

「絵本は読んだことないけど、手配書はたくさん見ましたよ?」

「……じゃあ見間違いだ。俺が優しくしているうちに、大人しく帰った方がお互いのためだぞ?」

「なるほど」

「理解してくれて嬉しいよ」

「あなたが死なずに済むってことですね」

 直後酒場の扉が閉められ、数人の大人たちが俺を取り囲んだ。
 それも殺気を放ちながら。

「おや? 紳士じゃなかったんですか? まぁ人を拐かす人間が紳士って柄ではないでしょうけどね」

「痛い目に遭わなきゃ分からないやつを躾けるのも、紳士的な大人の役目だ。──おいっ。遊んでやれっ」

「「「へいっ」」」

 子供だと舐めきった数人の男たち。
 対して舐めプをするつもりがない俺は、最速で男たちを制圧する。

「おや? 遊んでくれると言ったのに寝ちゃいましたよ?」

「ば、馬鹿なっ」

「次はおじさんが遊んでくれるんですか?」

「舐めやがってっ」

 盗賊ギルドのマスターはカウンターの下から短剣を取り出し、それを俺に向かって投擲してきた。
 大した脅威ではないため半歩横にズレて避け、小剣を持ってホールに出てきたマスターと対峙する。

「一ついいですか?」

「何だっ!」

「僕は情報を聞きに来たんです。そして僕の信条で三度目に攻撃してきたものは殲滅するって決めているんです。一度目は部下、二度目は投擲。このままだと、この都市から盗賊ギルドが消えますよ?」

「な、何いってんだ、お前?」

「部下たちはまだ生きていますよ。慰謝料代わりにお金をもらいますから、それで情報をください。今なら見逃してあげますよ?」

「──こっちの台詞だっ!」

「残念です」

 まぁ見せしめになるからいいか。

「死ねっ」

 さすが犯罪者をまとめ上げているだけある。
 剣筋は素晴らしく鋭く、子供に対しても躊躇うことなく殺す気で剣を振っている。
 武器が石器だった場合は手こずったかもしれないけど、今は美品ナイフを二本持っている。

 ──〈心眼〉
 ──〈身体強化〉
 ──〈痛覚遮断〉

 可能な限りコンパクトに動き、隙あらば瞬時に懐に入り込み急所に一撃を入れる。

「そんな見え見えの攻撃──っ」

 ──と見せかけて、本能で防御に回った手を切り裂く。

 主に狙う場所は、剣を保持するのに必要不可欠な親指だ。
 武器さえなくせば、脅威度が半減する。
 残りは身体能力と魔法だが、近くに衛兵がいる状態で魔法を使うのは得策ではないはず。

「くそっ! こうなったら……」

 マスターの視線が扉の方に向いた瞬間、衛兵を巻き込むつもりだと判断し、情報捜索の手間よりも口封じを取ることを決めた。

「おやすみ、紳士諸君」

 床で寝ていた者も標的として捕捉し、【念動】で首をへし折った。

「はぁ……。朝食に間に合わない……」

 ただただ、折檻がないことを祈るのだった。


 
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