暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

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第一章 居候、始めます

第三二話 神隠し第一号

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 戦闘開始。
 投擲ナイフでは三人しか処刑できなかった。
 それも、盗賊ギルドの雑魚だけ。

 この中では子爵及び部下が主力だろうし、人数も数十人と最大の人数だ。
 食い逃げ受注組織は二十人弱くらいで、大した脅威ではない。

「方円陣で迎え撃てっ」

 さすが王弟の護衛。
 指揮が様になっている。

 元々日が暮れ始めていた上、空き家のジャングルのせいで視覚による索敵が難しいだろう。
 盗賊ギルドや子爵は技能〈夜目〉を使って攻撃を察知できるかもしれないが、そんな余裕を与えるつもりはない。

 ──《光属性魔法:閃光》

 建物を盾にして閃光弾を放つ。
 魔法はイメージによって効果や威力が変化するというけど、それなら彼らは相当な威力の閃光弾を喰らったことになる。
 何故なら、俺がイメージしたのはスタングレネードだから。
 実際に見たことはないし見たくはないけど、海外のアクションドラマや映画が好きだったから画面越しなら見たことがある。

 つまり、イメージするには十分だと言うことだ。

「──目がっ」

 よっ、ム◯カ。

 ──〈高速移動〉
 ──〈投擲〉
 ──〈狙撃〉

 フラガラッハも全弾発射。

「来るぞっ! 気配を辿れっ!」

 目指すは指揮官。
 他は投擲ナイフで対処する。
 狙いは先程と同じだから、殺す気で攻撃するが期待はしない。
 牽制程度に考えておけば十分だ。

「なめるなぁっ」

 的確に攻撃を捌いていく子爵だが、子爵の癖を知り尽くしている俺に、この不利な状況では勝てるはずもない。

 以前言ったと思うが、王弟及び教官は特攻しか知らないのだ。
 変則的な攻撃をした場合は卑怯者と蔑み、無効試合にするような集団である。
 ということは、変則的攻め方をすれば良いということだ。

「どこだっ」

 失明したのか目がくらんでいるだけなのか不明だが、目元を抑えて蹲っている雑魚を【念動】を使って引き寄せ、肉盾くん一号という名のマリオネットにする。

「やめろっ」

 肉盾くん一号は、盾でもありメイスでもある。
 鍔迫り合いになっても細切れにならない限りは、用途が豊富にあるところが最大のセールスポイントだろう。

「捉えたぞっ」

 もちろん、捉えられたのは肉盾くん一号だ。

「ギャッ」

 斬られる寸前にタイミングをずらすように肉盾くんを子爵側に押し出し、斬撃が最大の効果を発揮しないようにし、同時に【念動】で肉盾くん一号を子爵に抱きつかせた。
 もちろん、剣を胸に抱いた状態で。

「貴様っ、離せっ!」

「うぅぅう……」

 邪魔な剣を封じた瞬間、大兎短剣に魔力を流して〈斬鉄〉を発動させ、子爵の首を刎ねた。

「でん、か──」

 その後も、子爵の部下を優先して首を刎ねていく。
 終盤では閃光弾から回復した者も何人かいたが、子爵に割いていたリソースを使って肉盾くんを三号まで召喚して対応した。

 肉盾くんたちの処刑も終わった後、周囲を徹底的に捜索したが伏兵の存在は確認できなかったため、死体の片付けと人質救出に向かうことにした。

「イムレ、お待たせ」

『イムレ、良い子で待った』

「イムレは良い子だよ」

 ポヨポヨとした体を撫で、殺伐とした心を癒やす。
 きっとこのまま帰ったら心配されてしまうだろうから、ある程度クールダウンさせてからじゃないと帰れない。

 しかし、油断はしない。

 装備品に呪いなどの罠が仕掛けられている場合もあり、死体の始末をするときに道連れにするというのは常套手段である。
 俺も彼らの装備品や所持品を再利用するつもりだ。
 腐っても王弟の側近ゆえ、小型ながらも空間系の道具を持っているはずだと当たりをつけていたが、まさか本当に持っているとは思わなかった。
 貴族の割りにボロいポーチを使っているなと手に取った所、わずかに魔力の流れを感じ、【神字:究理】を使って詳しく確認することで空間収納具だと判明。

「これなら時間短縮になる」

 子爵と子爵の部下はそれなりに良いものを持ち、金銭もそこそこ持っていたため全てを空間収納具に放り込んでおく。
 服も付与がしてある可能性もあるので、基本的に全裸だ。
 他の雑魚も基本的に全裸だが、金銭と再利用可能な装備以外は死体と一緒に廃棄処分にする。

 一つずつ丁寧に確認しつつ【念動】で一ヶ所に集め、イムレに処理をお願いする。

『イムレ、頑張る』

「お願いね」

『うん』

 イムレは元の大型スライム姿に戻り、数人まとめて処理を始めた。
 紫紺色という黒っぽい体のおかげで、どうなっているかを見ずに済んでいる。きっとグロい光景が広がっているだろうからね。

 全員の処理を終えた後、目の他に手足を潰して拘束しておいた依頼受注者の元に向かう。
 最初は女装してニアを騙したのかと思ったが、普通に女性だった。珍しいこともあるもんだ。

 何故って?

 盗賊がハーフエルフだったから。
 人族至上主義者の中にハーフエルフの女性がいれば、その結果どうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。

「人の善意を利用して誘拐するなんて鬼畜の所業だと思わないか?」

「ふんっ。お前に言われたくないっ」

「おや? 関わらなければ会うことも、死ぬこともなかったのに」

「仕事をしたまでだ」

「そうか。じゃあ僕も仕事をしようか。お前は簡単に死なせてやらない」

 口枷をかませて自殺できないようにした後、盗賊ギルドで死体に行ったように火をつけた。
 今回は油がなかったから、低威力に抑えた火属性魔法を使用する。できるだけ長時間生きていられるようにと、俺からのささやかな贈り物だ。

「業火に灼かれながら罪を悔い改めろ」

「うぅぅぅっっ」

 さて、我らが恩人のテオドールはどこにいるのだろうか。

 ──《無属性魔法:探知》
 ──〈索敵〉
 ──〈生命感知〉

「ふむ、地下ね」

 元々あった周囲のゴミをまとめて集め、隅に寄せておく。
 すると、今まで隠れていた地下への階段がポッカリと姿を現した。

「イムレ、ちょっとおじさんを迎えに行ってくるね」

『うん、いってらっしゃい』

 可愛い。

 イムレと戯れたい衝動を抑えて地下に向かうと、予想だにしなかった攻撃に襲われる。

「──かっ。おえぇぇぇっ」

 そう、俺の鼻孔を激臭が襲ったのだ。

「くっさあぁぁっ」

 病気になりそうなほどの激臭に堪えきれず、一度上に戻って自分の周囲に《障壁》を展開させて地下へ進んだ。
 酸素の問題から活動時間に制限があるが、テオドールの居場所は分かっているので迷わずに進む。途中、囚われている人がいるだろうと予想される鉄扉がいくつもあったが、まずはテオドールの救出を優先させる。
 ぶっちゃけ違法奴隷の扱いは領主の仕事だから、下手に何かをして越権行為とか言われても困るし、さらに一味が子爵だからとスケープゴートとして濡れ衣を被せられても困る。

 その場合、殺さなきゃいけない人数が増えるだろ?
 俺は平穏な異世界生活を満喫したいのだ。

「見つけた」

 テオドールがいるであろう鉄扉が見え、とりあえずノックをしてみることに。

「もしもし。誰かいるーー?」


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