暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

文字の大きさ
61 / 106
第二章 冒険、始めます

第五二話 悩みの種

しおりを挟む
 魔石は一度地面に置き、魔魚の解体を手伝うことに。
 鮮度の問題があったが、宮廷魔法士長のナディアさんによって解決する。
 ナディアさんは氷属性の魔法を使えたため、氷塊を出して木箱に敷き詰めてくれた。

 しかも魔法陣を複製しようにも、魔法の構築が早すぎて不可能という優秀さだ。
 本人曰く、地獄の折檻を乗り越えた果てに獲得した努力の結晶なんだとか。俺もそんな折檻が良かったと切実に思う。

「鮫はまるごと収納したんですか?」

「使わない内臓はイムレにあげた」

「ありがとうございます」

『イムレ、嬉しい』

「いつもの御礼だ」

 粗方片付いたところで、そろそろ帰宅の準備をする。
 まだ昼頃だけど、魔石や魔魚を放置して狩りや採取はできない。
 また今度ルイーサさんと一緒に来ることを決め、今回は早めに帰宅することに。

「おい、一個だけ変な魔石あるぞ」

 ん?

「本当だ。琥珀っぽいけど」

 ──〈鑑定〉
 ──【神字:天理】

 詳細な鑑定をしてみると、魔樹などの魔力を内包する樹木の種と、それを保護する膜だということが分かった。

『珍しいな。精霊樹の種だ』

「「「「──えっ!?」」」」

「ルーク、せいれいじゅってなぁに?」

 ニア以外は分かっているようで驚愕しているが、ニアはルークの背中の上からルークに質問している。

『うーん……簡単に言うと精霊の家だ』

「おうち?」

『うむ。ニアもいずれ精霊と契約するだろ? でも精霊は基本的に自然が好きなんだ。契約する場合は、召喚するか探しにいかないといけない。探す場所で一番簡単なのが、精霊樹周辺だ。エルフにとっても大切な樹木らしいけどな』

「すごいたねなんだね」

『うむ。ちょうど大きな土地があるから、真ん中に植えておけば良いんじゃないか? 取り上げに来た者がいたら、オレが追い払ってやる』

「──えっ?」

『なんだ、熊。文句でもあるのか? お前が狙っている熊も好きだと思うぞ。精霊樹の近くでしか咲かない花の蜜は、とってもうまいからな』

「いいね。蜂の魔物と従魔契約をして養蜂をやるのもありかも」

『だろう?』

『イムレも蜜食べる』

「熊さんのためなら、俺の別荘もあるから親父に言っておこうかな」

「──いやいやいやっ! ただでさえ土地の広さで目を付けられているんだぞ? この上精霊樹が植わったとしたら、子爵に持って行かれるぞ?!」

 そうなんだよね。
 今回買った土地は、都市を四分割している工業区の北半分ほどを購入していたが、そこにスラムが加わったことにより、五分の一弱くらいの土地を保有することになった。

 ルイーサさんたちに隠れて、俺と従魔たちは【双竜区】と呼んでいる。
 それほどの広さなのだ。

「確かにナディアさんの言うとおりですね。土地の使用権であって、土地の所有権ではないですからね。でも僕が採掘してきたものですから、誰にも渡しませんよ。──燃やします?」

「「「それは駄目だっ」」」

 さすが精霊契約組。
 真っ先に反対すると思ってたよ。

「でもぉ、植えることもできず所有も邪魔。さらに売る気も譲る気もない。一体どうすれば?」

『だから、ギルドのオレへの無礼を土地で勘弁してやればいいだろ?』

「処刑におまけしてってこと?」

『うむ。その竜の話が本当なら領地を燃やしても許されるってことだろ?』

 許されはしないと思うな。
 実際に軍隊が派遣されることになったわけだし。

『それが少しの土地を譲るだけで全員が幸せになるんだぞ?』

『イムレ、思いついた』

 魔魚の廃棄部位を食べ終えたイムレが、名案を思いついたと小さな手を挙げる。

「可愛い」

『何を思いついたんだ?』

『ここに植える。外だから怒られない』

『天才だなっ。水も森もあって、大きくなっても大丈夫だもんなっ』

『うん。イムレ、天才』

『ということだ。ここに植える』

「もっと駄目っ」

 ナディアさんのツッコミも理解できる。
 森の整備という名の間伐なら良いのだが、伐採による開拓は禁止されている。
 ルークを監禁していた国との条約によって。

 正確な条約は北側の森に関してだけだが、湖を擁する東側の森とくっついているせいで、明確な線引ができず同様に開拓禁止になっている。

『面倒くさいな。やっぱりオレが平らにするしかないか』

「今日はストッパーがいない……。主は止める気がないし……」

 ナディアさんには申し訳ないが、本当にその通りだ。
 ルイーサさんという抑止力がいない以上、我々を止める者は存在しない。

「だから、俺が親父に言うって言ってるだろ」

「確約じゃないじゃん」

「じゃあ土地を農園にするまで待ってくれよ。あの栄養がなさそうな地面に植えるわけにもいかないだろ? フカフカな地面にした後に植えるなら、そのときまで猶予をくれよ」

 全員が同じことを思ったはず。
 意外に賢いと。

「いいけど……盗むやつが現れたら、相手が誰だろうと殺すからね」

「……国でもか?」

「うん。もしかしてまだ王侯貴族は特別って思ってる?」

「そうじゃないってっ! 可能性の話しだってっ!」

「良かった。人のものを盗んでも良いと考える人と一緒には暮らせないからさ。それに、次はどちらにせよ一人で戦うことは禁止されているから、戦力不足はありえないよ」

『うむ。また置いてったら噛みついてやるからな。──本当の姿で』

「死ぬやつっ」

『頑張れ』

 とりあえずテオの意見を採用して帰宅した。

「…………本当に大丈夫か、それ」

「エルフの神秘なんだよ?」

「おにいちゃん、わたしもできる?」

「訓練を頑張ればね」

「がんばる」

「「「…………」」」

 大人組は否定したそうに口元をモゴモゴと動かしているが、やる気に満ちたニアを悲しませたくないようで沈黙していた。

「……なぁ。この荷車、異常に軽いんだけど。行きより軽いってある?」

「デッドマン号ね」

「はぁ?」

「その子の名前」

「名前なんか別にいいだろっ」

「そんなことないよ。インテリジェンス・アイテムかもしれないじゃん」

「──これがっ!?」

「まぁ違うけどね」

「おいっ」

『熊よ、オレは心配だぞ。簡単に騙されるなよ。お前も一緒に直してた荷車だぞ』

「そういえば……」

 本来だったら氷と魚が満載された木箱が荷台に山積みになっていれば、いくら力自慢の熊獣人でも一人で引くことは不可能だろう。
 だから【念動:浮遊】で浮かせつつ、車輪を【念動】で回しているのだ。

「──ちょっと待った!」

「なんですか?」

 予想通り入町時に門で止められた。
 両手に岩サイズの魔石を縦に積んで運んでいるから、これで止めなかったら逆におかしい。

「そ、それは……」

「個人的に採掘してきたものです。現在手が塞がってますので、テオ様から冒険者証を受け取ってください」

「これだ」

 テオは自分の冒険者証と一緒に、辺境伯家の貴族証を提出した。
 普段は使わないようにしているらしいが、すでに子爵に知られている上、面倒事を簡略化できるならということで今回は使用することに。

「──失礼しましたっ。辺境伯家の依頼でしたかっ」

「「…………」」

 俺もテオも返事はしない。
 言質を取られなければ、あとで何を言われても勘違いで済ますことができる。

「通っていいか?」

「どうぞっ」

「ご苦労」

「さすがです、テオ様」

「……やめろ。ムカつく」

 北門から宿屋まで近いと言ってもそこそこ人がおり、両手に持つ魔石が目を引いたせいで大名行列の如く注目の的になっていた。

「──やっぱりあなたたちだったのね」

「母上っ。どう考えても一人でしょう!?」

 気持ちは分かるけど、同じグループなんだよ。
 一人だけ逃れようなんて、そんな裏切りは許しませんよ。

「色々気になるけど、あなたたちにお客さんよ?」

「あれぇーー? 誰だろぉぉーー?」

「グルゥゥゥッ?」

「「「「…………」」」」

「ルーク、かわいい」

「荷物を置いたら食堂にいらっしゃい」

「はーい」

『グルゥゥゥ』

 迫力のある笑顔を向けられたため、ルークと一緒に跳躍して壁を乗り越えた。

「きゃあっ」

 ルークの背中の上にいたニアが驚いていたが、絶対に落ちないから気にしない。

「……あいつ、なんなの?」

 というテオの声が聞こえて来たが、返事をする余裕は俺たちにはなかった。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

処理中です...