勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

文字の大きさ
4 / 30
第一章 神託騎士への転生

第四話 モフモフ従魔と旅に出る

しおりを挟む
 モフモフに警戒心を抱かせてしまったが、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。これから徐々に警戒を解いて行けばいいのだ。

 それよりも今はやることがある。

「早速出発したいんだけど、船を着けられる場所ってどこにあるか分かる? あと戸締まりの仕方は?」

「戸締まりはいらない。資格がないものはこの島を見つけられないし、建物自体にも侵入対策用の結界が施してある。船着き場は東に行けばすぐだ! もう出発するのか? 船はどうするんだ? 造らないのか?」

「船はあるよ。いくつか持っているけど、今回は神様製クルーザーをしようする予定だよ。元々は両親が使っていた物をもらったんだけどね!」

「主のか!」

「正確に言えば、その複製だけどね!」

「楽しみだ!」

「忘れ物がないようにね!」

 ◇

 パンパンに詰まった袋を背負ったドラドと、手ぶらで移動する女性陣を伴い船着き場へ行く。

「袋に何が入っているかは、聞いてもいいのかな?」

「これは魔石と魔核が入っている! 人間はお金が必要なんだろ?」

「なるほどね! 見せてもらってもいい?」

「ほらよ!」

「ありがとう!」

 ドラドから袋を受け取り中を見る。

「――これは! あのさ、これもらっていい?」

「別にいいけど、お金は大丈夫なのか?」

「消費するのは弾薬や消耗品だけだから大丈夫だよ。神様が向こうのお金を使えるようにしてくれたから、数百万はあると思うよ」

「金持ちなんだな!」

「そうだけど……結婚資金を貯めてたからね」

「結婚したのか?」

「直前で破談になった……」

「……すまん」

「気にしなくていいよ」

 モフモフしてくれればいいという言葉を飲み込み、当たり障りがない言葉を返しておく。

「それで、それは何に使うんだ?」

「この魔核があれば魔具という物が使えるんだろうけど、俺の能力では魔核と迷宮ジェムと呼ばれる物を混ぜて加工すると、【液体魔力】という燃料が作れるんだ。俺の能力内での魔法武器や乗り物に必要な燃料なんだけど、この魔石っていうのが迷宮ジェムにそっくりなんだよね!」

「乗り物って馬車か?」

「……やっぱり馬車なのか。俺の言う乗り物は馬車じゃなくて、馬なし馬車って言えばいいのかな? 箱だけで動くんだよ!」

「自動車ってやつか?」

「知ってるんかい!」

「主様に聞いたのよ。名前だけね!」

「カグヤも乗れる?」

 カグヤはモ○キーより少し小さく、百五十センチくらいのティエラなら背中に乗れる大きさだ。これでも小型の部類に入るのだが、カグヤは自分だけ乗れないのではないかと不安そうにしている。

「ドラドが乗れる大きさだから大丈夫だよ! ドラドは俺より大きいでしょ!」

「鎧を着てるディエスの方が大きく感じるんじゃないのか?」

「そうかな? まぁどちらにしろ、カグヤは乗れるから心配しなくても大丈夫だよ!」

「よかった!」

 ぶかぶかのシャツを着た状態で万歳して喜ぶカグヤが可愛い。敵対したら怖いのだろうが、それはアラクネに限ったことではないからカグヤを怖がる理由にはならない。

「そういえば、海って魔物が出るの?」

「海の方が強くて大きい魔物がたくさんいるぞ! だから船の心配をしたんだ!」

「今回の船は結界が発動するらしいから大丈夫だと思うよ! それよりも魔物が出たら銃の訓練をしよう! 適性というか、好きな戦闘スタイルを見つけようじゃないか!」

「いいな、いいな! 楽しみだ! 早く行くぞ!」

 ポテポテと駆け出すドラドを追いかけ、目的の船着き場へ急いで向かった。

 走ったこともあって、さほど時間もかからず船着き場へ到着する。

 異世界の海は透明度も高く、まるでリゾートビーチみたいだった。旅立った先も同じような海なら、時間を設けて遊んでもいいかもと思う。

 ――《ガレージ》

「えーと、船のカテゴリーを選んで……あった!」

 少し派手な装飾が増えてる気がしないでもないけど、今更気にしても意味がない。元々馬車しかない世界だから、多少派手でもクルーザー自体が異物だろうからな。

「出でよ! 神様製クルーザー!」

 《ガレージ》のシャッターが目の前に現れる。《コンテナ》みたいにシャッターの部分だけが、直立して出現している。

 シャッターが一番上まで上がると、中からクルーザーが射出される。

「さぁ乗って!」

「一番乗りーー!」

「ちょっと! レディーファーストを習ったでしょ!?」

「待ってよーー!」

 乗船補助をしながら、みんながはしゃいでいる様子を見る。思わず笑みが浮かぶ光景を見て、異世界に来ても独りじゃないと実感できた。

 養父さん、養母さん。今まで育ててくれてありがとう。『大切なものを守れる者になれ』という言葉を胸に、俺は二人の家族を守ることを誓うよ。俺にとっても大切な家族になったしね。

「おーい! ディエス! 早くしろーー!」

「今行くーー!」

 養父さん、養母さん。いってきます!

 ◇

 船は一路南に向けて真っ直ぐに進んでいる。
 ティエラが言うには、両親が処刑された場所がある【中央大陸】に向かっているようだ。

 情報収集に最適の場所である。

 しかし人族が多く住む場所だから、差別意識が高いかもしれないそうだ。サイコパス神のせいで覚悟をしていたことだから、多分大丈夫だと思う。我慢できなくなったら別の大陸に行けばいい。

「おい、ディエス! おれたちには装備はないのか?」

「忘れてた!」

 ジト目を向けてくるドラドから視線を外し、手持ちの装備を確認する。
 サイズが合わないだろうし、全員分揃わないだろうから全部買うことにした。

  ――《PX》

 弾薬や消耗品に量産品しか買えないけど、幻想地下世界で唯一地上の製品が購入できる施設だ。これが封印されていたら、俺は転生初日に詰んでいた。

「カグヤは買うとして、二人も服が欲しい?」

「いらん!」「いらないわ」

 素敵なモフモフを持ってらっしゃるからね。隠すのはもったいないよね!

「じゃあタクティカルベストを三つと、ポーチを追加で買っておこう! 高いけど共有ポーチがいいかな」

 弾薬用と消耗品用を一つずつと、強化素材製の個別ポーチを小物用に一つの合計三つをかごに入れてと。

 レッグホルダーは足が短いからやめておいて、代わりにベルトと各種ホルダーを購入しよう。

「じゃあカグヤはこれを着てみて! 一番小さいサイズを選んだから、成長してキツくなったら言うんだよ!」

「うん!」

「良い子!」

 妹ができたみたいで可愛く、つい頭を撫でてしまった。

「えへへ」

 ――よし! カグヤをいじめるやつは俺の敵にすることをここに誓おう!

「これを着ればいいのか?」

「そうだね。少し重く感じると思うけど、防具も兼ねているから我慢してくれ!」

「これくらいどうってことないぞ」

 君はね。俺は女性陣に言ったんだけど……うん、平気そうだ。

 カグヤにはタクティカルベストと同じ黒いパーカーを着せて、その上からベストをつけてもらった。

 俺の装備には温度調節機能がついているけど、みんなにはついていない。温度調節をする場合、温かくすることはできるけど涼しくすることは難しいから、ベストの下は薄手のパーカーで済ました。

 色は俺と同じがいいんだって! 尊い……!

 情報処理端末は二種類用意する。
 一つは俺と同じタイプでカグヤ用の物。上半身は複眼を除けば人間と同じだから、俺と同じタイプの物を装着可能である。

 もう一つはイヤーカフタイプ。
 両耳にはめることで、起動時は目から上を覆うゴーグルが発動する。耳は出せるから、幻想地下世界の住人も使用できた。
 でもデメリットが大きく、幻想戦士はほとんど使わなかった。デメリットは、収納時に視覚情報を得られないというものである。

 自分を中心に半径二百メートルを自動探索し、害意を向けている者を探知して表示してくれたり、罠や宝の位置も表示してくれたり。
 最高の機能とも言える視覚情報支援がないのだ。ハンデを背負ってゲームしているようなもので、全オプションをつけた俺には信じられないことである。

 今回は俺の機能を共有しているから、従魔たちも同じフルオプション状態で使える。
 ドラドたちのデメリットについては、個人の高い索敵能力でデメリットを弱めた。

「それではやってきましたよ! 装備を選択する時間です」

「やっとか! 迫力があるのがいいな!」

「みんなは銃が良いんだよね?」

「他に何があるんだ?」

「魔法武器や近接武器もあるよ」

「銃がいい!」

 それなら俺の方向性は決まったな。騎士っぽくてちょうど良かったかも。

「派手なヤツはあるか!?」

「機関銃があるけど……」

「それを見せてくれ!」

 ――《コンテナ》

 銃器を収納している《コンテナ》を開き、ドラドを招き入れる。
 ドラドはキョロキョロ周囲を見回し、わんぱく小僧の勘と嗅覚を持って派手な銃を捜しているようだ。

「これ! これがいい!」

「……やっぱりか。それを選んで欲しくなかった!」

「何でだよ! これはすごいものだと本能が告げている!」

 ドラドが選んだのは「M134」という有名な機関銃だ。威力も弾薬消費量もハンパない代物だが、携行武器には向かない。パワードスーツを着て初めて使用できるものを、ポッチャリ体型の虎さんが使えるはずない。

 しかも専用のアタッチメントをつけたパワードスーツか、液体魔力発電機が必要なのだ。液体魔力は俺も使うから残量が心配である今、目の前の大食い機関銃を使う気にはなれない。

「大人しくミニミにしよう?」

「何でもいいって言ったろ?」

 ……言ってない。でも言えない。モフモフが遠ざかるから言いたくても言えない!

「じゃあこうしよう! 普段はミニミを使う! 大型魔獣や殲滅戦は希望のM134を使う! 威力が強すぎて素材がめちゃくちゃになるからね!」

「うーん……絶対だぞ?」

「もちろん! 両親に誓って嘘はつかない!」

「分かった! ミニミという機関銃を装備する!」

 神スマホを操作してドラドのメイン武器二枠のうち、一つ目の枠にミニミを選択して登録する。

「次行くぞーー!」

 これが続くのか……。養母さん、あなたのペットは手がかかります。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...