勇者の息子は従魔と神託騎士になる~FPSとMMORPG能力で自由気ままに人助けをします~

暇人太一

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第一章 神託騎士への転生

第十五話 虎子は本音を吐露する

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 ドラドにもエルフ女性にとっても爆弾である俺の発言は、彼らに静寂の時をもたらした。
 薪がパチパチと爆ぜる音が心地よく聞こえるほどの静寂に、彼らの驚きの大きさが表されている気がする。

「……ディエス、本当にやるのか?」

「そうだ。俺たちは貢ぎ物にされるために足止めされているらしいからな。それに、殲滅しないとこちらの女性が引き渡されることになるんだ。あの廃墟の町で助けたんだから、最後まで責任持って助けないとね。ドラドはどう思う?」

「最後までやるに決まってるだろ! 【聖王国】が相手なら容赦せずに済むもんな!」

「――待てッ! 殲滅!? 自分が何を言っているのか分かっているのか!?」

「もちろん! 一人残らず我が主神の元に送らせていただきますよ」

「無責任なことを言うなッ! お前がミスをしたら……他の難の罪もないエルフを巻き込むことになるのだぞ!?」

「やはり優しい方なんですね。この村のエルフたちは、あなたや私たちを売り渡すことで安全を買おうとしている卑怯者だというのに……。今も多くのエルフが逃げないように監視をしていますよ? それに彼らは分かっていない」

「……何がだ」

「オラクルナイトを謀って売り渡そうとしている罪を。そうですね……、精霊信仰があるエルフたちにとって精霊を捕まえて売り渡すことと同義だと思ってくれればいいかと」

「自分が精霊様と同列だと言いたいのか!?」

 意外に多く話してくれる。このまま心の内をもっと話してくれればいいなと思う。

「そうとは言いませんが、精霊のいずれかは同じと言ってくれるかもしれませんね」

 個人的には畏れ多いことだと思う。サイコパス神は何も言ってなかったし、神に仕える【使霊獣】と同格と言ったのは村長だ。
 一応知識として刷り込まれている内容とも合致する。

 その【使霊獣】と精霊はほぼ同格で、多少【使霊獣】の方が上となっているはずだ。
 等号で結んでいけば、俺たちオラクルナイトも精霊と同格になるはず……多分。

 まぁ多少誇張して言っているという自覚はあるけども、一番簡単な感情の発露である怒りの感情を出してもらうために、俺はあらん限りの挑発をしていこうと思っている。

「ふざけるなッ!」

「ふざけていません。精霊に助けを求めれば対価次第で助けてくれますよね? 私も求められれば対価次第で助けますよ。ただ、こちらにいるエルフで助けを求めた人物は皆無です! 全員で騙しに来てますから、個人的に言わせてもらえるならば、私たちが助かるのならエルフがどうなろうがどうでもいいです!」

「なんというヤツだッ! 貴様ッそれでも神官か!?」

「えぇ。神官の最高位ですが? 逆に聞かせていただきたいのですが、座してなぶり者にされるのが王族の務めですか?」

「――貴様に何が分かるッ!」

「グッ……ッ!」

 顔面に鋭い一発が入る。

「ディエス!」

 銃を抜くドラドを手で制し、エルフ女性の攻撃を無抵抗で受け続ける。

「突然――突然目の前で家族が……親友が……国民が殺されていく辛さが……無力感が……貴様に分かるわけないッ!」

「確かに分かりませんが、分かろうとする努力はしています。それに元凶は? あなたを絶望の淵に立たせることになった元凶は放置するのですか?」

「するしか……ないだろうぉぉぉ! 軍隊もなければ味方もいないッ! 私にいったい何ができるというのだッ!」

「私たちに頼ることができますよ。まだ私たちに頼んでいないでしょう? と言っても、ぽっと出での【落ち人】の話に信憑性がないのも理解できます。ですから、【聖王国】を殲滅することで証明とさせていただきます」

「――勝手にしろッ!」

「そうさせていただきます。それでは景気づけにワイバーンでも食べましょう」

「い、いらん!」

「おい! 約束したろ!? ワイバーンの素材を見せたら一緒にご飯を食べるって!」

 そんな約束してたの? 相変わらず抜け目ないな。

「くっ……分かっている!」

「今日はバーベキューだからな!」

「じゃあ焚き火台の方は?」

「シチューの下ごしらえだ! 約束のためだから、ディエスも忘れるなよ!?」

「も、もちろん!」

 まだ準備をしていないけどね。
 何にするか悩んでたけど、ワイバーンみたいな飛行系の魔物をいち早く視認する必要もあるから、装甲で視界が狭まる兵員輸送車よりもテクニカルの方が良さそうだ。
 あとで《ガレージ》を開いて改造しよう。

「じゃあティエラとカグヤを呼んでくるから、ドラドは精一杯もてなしてあげて」

「任せろ!」

 一口食べて帰ろうとしていたエルフ女性の退路を断ち、テントの方へ向かう。
 でもその前に、インスリン注射器に似ている外傷治療薬を首に打ち、血を洗い流しておく。欠損以外の外傷は全て治すから、ボコボコにされた形跡は皆無だ。

 ちなみ、注射は無痛だ。

 というより、何か押しつけられたくらいにしか感じない。ゲームと違って痛かったらどうしようかと心配していたが、細かいところまでリアルさを求められていない仕様で助かった。
 そして使ったら消滅する。
 排出された薬莢と同じで、回収の手間や回収忘れを気にせずに済むところは助かっている。サイコパス神に感謝を。

「二人とも起きてる?」

「うん。大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ありがとね!」

 むぅと、むくれているカグヤの頭を撫でる。もちろんティエラもだ。
 モフモフ成分を吸収すれば、殺伐とした気持ちも鎮静化する。これから作戦会議も兼ねた食事会を行うから、冷静にならなければいけないのだ。

「今日もワイバーンを食べれるよ! 二人のおかげだ!」

「タレはディエスのおかげよ!」

「あぁ! 焼肉のタレと塩胡椒ね!」

「カグヤはレモンも好き!」

「さっぱりするよね! レモン汁を買ってきた自分を褒めたい!」

「偉いーー!」

「ありがとう!」

 褒めてくれたカグヤを撫でながら、それぞれ好きな味付けを言い合い食卓に向かう。

「お待たせーー!」

「早く座れ! ドンドン焼いていくぞ!」

 フォークリフトで使う木製パレットを敷き、その上にテーブルと座布団を置いていく。
 テーブルの上にドラドが次々に焼けた肉を載せていき、「召し上がれ!」と勧めてくれる。……もうオカンだ。オカンにしか見えない。

「そうそう、二人は【聖王国】との戦闘に参加する?」

「もちろんよ! 【聖王国】の聖騎士は敵よ!」

「カグヤも! おじちゃんとおばちゃんをいじめた人たちでしょ? 許さない!」

「おじちゃん? おばちゃん?」

「主様たちのことよ!」

「あぁ! なるほどね! でも会ったことないんでしょ?」

「主様たちが会ったことないだけで、カグヤがいることは知っていたのよ。だから、毎回来る度にカグヤの分のお土産を持ってきてくれてたの!」

「なるほど! 養母さんたちが気づかないわけないか!」

「すぐにバレたわ! 友達のことをもっと早く教えて欲しかったって怒られたもの! 特にドラドが渚様にね!」

「なんとなく想像できてしまう」

 二人の決意表明や両親の話を聞いていると、エルフ女性から素晴らしい情報がもたらされた。

「――聖騎士は現国王だ」

「そうなんですね。これはいいことを聞きました。これで捕虜をとっての尋問という手間が省けました。作戦が楽になったな。全てはドラドにかかっている!」

「ん? ……も、もしかして……アレを使えるのか!?」

「いいえ」

「なんだよ! 期待させやがって!」

「でも主力だから!」

「主力……。悪くない響きだ! それで何をやればいいんだ!?」

「ドラドにはトーチカを造ってもらいたいんだよね」

「なんて? 何を造れって言った?」

 近くにエルフの監視要員がいるため詳しく解説できないから、ドラドには簡単に説明しよう。

「防衛陣地のことだよ」

「なるほど? 必要なのか?」

「もちろん!」

「分かった! 任せろ! サクッと造ってやる!」

「さすがーー!」

「ふふん! そうだろう!」

 基本的には昨夜の作戦と同じだが、今回は無敵の結界があるわけでもないし、日中での戦闘になるだろうから、若干アレンジしようと思っている。

 ドラドには主力と言ったが、カグヤとティエラ組が本当の主力だろう。
 ワイバーンも墜とす狙撃から逃れる術はないだろうし、対物ライフルから発射された大口径の弾丸を防ぐ装備を用意できるとは思えない。

 ドラドはトーチカから、比較的防御が薄そうな足元を攻撃してもらう予定だ。
 殺すというよりは逃がさないための攻撃で、同時に敵の戦意を削ぐためでもある。その点においては主力と言っても過言ではない。

 そして俺は遊撃だ。

 エルフの対応もしないといけないし、一人たりとも逃がすつもりはないから、混乱に乗じて逃走を図る者を追撃する役だ。
 それに、あの世紀末風の廃墟街の者も協力している感じだったから、今回も同行している可能性も考慮しなくてはならない。

 背後を気をつけなくてはいけないというのは面倒だな。

 ゲームでもボッチだったけど、アレはゲームだからで済んでいた。でも今は命がかかっている状況だし、従魔の命も預かっている。
 さらにエルフ女性の安全確保もあり、信用を勝ち取るためにもエルフも守らなくてはならない。

 転生したばかりだというのに、なかなかハードなクエストだなと思わずにはいられない。

「うん、美味い!」

 若干憂鬱になりかけるも、ドラドの絶品料理のおかげで気分が晴れる。

「だろぉぉーー!」

 ドヤ顔で肉を食むドラドが可愛い。

「ごちそうさま……。帰る」

「また明日な!」

「……」

 ドラドを一瞥すると、無言で立ち去っていってしまった。
 ドラドのしつこさを思い出したせいかもしれないな。拒否しようとも勝手に家に報告に来られるかもって考えたら、下手に拒否はできまい。

「さて、防音ってできる?」

「わたしの結界を使えばできるわ。でも室内の方が効果が高いから、テントの中の方がいいわよ?」

「何で室内?」

「口を読まれたり精霊を使ったりされると、音が聞こえないだけで情報が漏れることには変わらないわ」

「確かに」

「でも室内であれば、出入り口に精霊含む魔力の干渉を検知する結界を張っておけばいいし、範囲指定が楽だから、視覚情報を誤魔化す効果を持たせた結界を張れるわ」

「じゃあテント内で作戦会議と行こう」

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