うさぎの楽器やさん

銀色月

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<森のオルガン>のお話

番外編<ひとり立ち>

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ニノくんが旅立った後、うさぎの楽器やさんは、初めて、ニノくんが住んでいた家を訪ねました。

ニノくんの家は、オリーブの店からもっと奥に進んだ、銀色の森の南の外れにあり、今は、ニノくんのお母さんが、ひとりで、暮らしていました。

ニノくんが、どこに行ったのか、お母さんは、あまり、気になっていないようすでした。

「もう、ひとり立ちの時期ですからね。」

と、突き放すでもなく、おだやかに、なりゆきを受け入れていたのが、印象的でした。

ニノくんのお母さんは、ニノくんのような、見る者を惹きつける魅力は、あまり感じられません。

赤毛に入る、しまもようは、ニノくんほど、くっきりしておらず、毛ヅヤも、年相応なのか、むしろ、年より老けて見えるようでした。

やまねこだけではありませんが、動物は、早い時期にひとり立ちをするものが多く、自分で生きていく場所を探し、そこになじむように、精一杯、努力して、いちにんまえに、なっていくのです。

いつまでも、ひとり立ちできないでいるよりは、その時を、自分で決めて、旅立って行ったニノくんは、お母さんにとって、立派な子だったにちがいありません。

リンとランとレンだって、いずれ旅立って行く。

自分だって、ずいぶん若いうちに、ひとり立ちして、楽器やになったのだ。

「そうさ。心配することは、ない。」

うさぎの楽器やさんは、自分に言い聞かせるように、独り言を言いました。
 
ところで、ニノくんのお父さんは?

これも、動物によります。
うさぎの楽器やさんは、家族と暮らしていますが、お父さんか、お母さんのどちらか一方が、ひとりで子育てをするものも、います。

とはいえ、ニノくんのお父さんは、どうやら、個性的なやまねこだったらしく、もともと、ひとりで、自由に、暮らす場所を変えながら、生活を続けていたようなのです。

「ステキな、やまねこでしたよ。
今も、きっと、どこかで、好きなように、暮らしているのでしょう。」

と、ニノくんのお母さんは、静かにほほえみました。

うさぎの楽器やさんは、それ以上、ニノくんのお母さんに、聞けることもなく、
なんとなく、あてが外れたような気持ちで、帰りました。



家につくと、リンとランがケンカをしていました。

「ランは、さ、なんで、ぼくのマネばっかりするの!それ、考えたの、ぼくなのに、ずるいよ!」

「マネしたのは、悪いけど、ぼくの方が、うまくできてるじゃん!」

ええ。下の子の方が、なんでも、要領がよく、うまく出来ちゃうのは、仕方がないんですがね!

リンが、考えたメロディーを鼻歌で歌っていたら、ランがいつのまにかおぼえて、森のオルガンで、てきとうな伴奏をつけて、そのメロディーを弾きながら歌っていると、まわりにいた動物たちが集まってきて、ランをほめてくれたらしいのです。

「上手だったのよ。仕方ないんだけど、ねぇ。」
うさぎの奥さんも、笑いながら、困っていました。


すると、1番下の弟のレンが、紙を一枚、持ってきて、
「これ。リンにあげる。」
と言って、リンに渡しました。

それは、レンが手書きした、楽譜でした。

リンは、しばらく、その楽譜を見ていて、
ランに言いました。

「ねぇ、これ、見て。」

ランが、見ると、そこには、小さな編成の合奏曲になった、リンのメロディーがありました。

「こうなると、さ、ぼくのメロディーは、ただの、モチーフにすぎないよな。
なんか、ごめん。恥ずかしいよ。」
と、リンが、言いました。

「ああ、ぼくのは、ただの即興だな。
レンが作ったのにくらべたら、曲とは、言えない。」

2人の兄は、弟の才能に、感嘆のためいきをついて、ケンカをやめたのでした。



うさぎの楽器やさんは、子どもたちのようすを見ていて、ニノくんに、兄弟がいたら…、と考えました。
「ひとりで、旅立つまえに、相談したり、引き止められて、考えなおしたりしたかもしれない。」

でも、

考えをうち消すように、首をふりました。

「それは、どうかな。」

もし、兄弟がいたら、ニノくんは、今とは、まったく違うニノくんだっただろう。

それでは、つまらないではないか。
あのニノくんこそが、魅力的なのだから。


風にのって、どこからか、遠く、ふえの音が聞こえたような気がしました。


おわり

 
 


 
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