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<やまねこのふえ>のお話
5 ホーロウ先生
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自分だって、もういい歳になったんだから、ホーロウ先生も同じく歳をとったはずなのに…、
昔と変わらない鋭い目で、
こちらを見ている。
「フクロウって、すごいな。」
と、実感しながら、
うさぎの楽器やさんは、何と答えようか、考えていました。
「はい、そうです。」と答えれば、
「わかった。」とか、
「そうか。」などと言われるだけで、
ホーロウ先生と、会話が続かないのは、予想がつきます。
なんとかして、ホーロウ先生からも、情報を得たいのです。
あの桜、と、
ホーロウ先生は言ったのです。
間違いなく、ホーロウ先生は
冬桜の枝のことを知っている。
「若い頃、
白キツネからもらった桜の枝で、ふえを作りました。
…ホーロウ先生、
あの白キツネは、どこから来たのですか?」
ホーロウ先生は、何も言わずに、音もなく飛びたち、
翼のあるものにしか行けない、高いところにある本棚にとまりました。
そして、一冊、
黒い革表紙の本を選ぶと、
袴毛のある足で軽くつかんで、
また、音もなく書類の積み重なった机におりました。
がっしりとした脚の爪先で、
器用に本の薄い紙のページをめくると、
あるページの表の中から、数字を探しだし、
何やら計算をし始めました。
そして、うさぎの楽器やさんに
計算式を見せて、言いました。
「小さな彗星が近づいている。
おまえが、この森を離れたときも、
こんな彗星が見えていた。
見ろ。おまえは、どう読む?」
ホーロウ先生の仕事は、星を読むことです。
望遠鏡で星の位置を観測し、
ホーロウ先生の独自の計算で、星の動きを読めば、
季節や気候の変化、
これから起こる出来事や、運命すらわかるというのです。
この森の動物たちは、ホーロウ先生のおかげで、
厳しい暑さや寒さ、
嵐や災害に備えることができています。
うさぎの楽器やさんは、昔ならったことを思い出しながら、星の動きを読んで、
「この森に、悪い影響はないでしょう。
それとも、これで、だれかの運命を読むとしたら…
また、森を離れていきますね。」
と言って、笑いました。
「ふん。あいつにも、
おまえほどの読みの才能があったらいいのだが。」
あいつというのは、
さっきの街ネコのお弟子さんのことだろう。
お弟子さん、苦労しているだろうなぁ…
と、うさぎの楽器やさんは、ホーロウ先生とお弟子さんの日常を、想像していました。
すると、唐突に、
ききたかった話が、始まりました。
「白キツネは、古道具やだ。
いろんな森に出入りしていて、
たまに、ここへも来る。
桜の枝は、ここへ来る前に寄った森で手に入れたと、
あの時、言っていた。
おまえが壊した望遠鏡の部品を、
やっと持ってきてもらった時だ。」
…あ、覚えていた。
うさぎの楽器やさんは、スミマセンと、頭をかきながら、
「北の森ですか。」
とききました。
「白キツネが、いつも立ち寄る順は、
そうだ。」
と、いうと、
ホーロウ先生は、また、音もなく飛んで、
望遠鏡のイスに戻りました。
「もっと、
あの桜のことを、おしえてください!」
と、うさぎの楽器やさんがいうと、
ホーロウ先生は、望遠鏡をのぞきながら、いいました。
「青い湖のある森に、行ってみるがいい。
そう遠くはない。」
「…」
そうだ。
誰かにきいた話のまま、
あれこれ考えていても、何にもならないじゃないか。
ウワサは、どこまで本当なのか?
森が枯れてしまっただなんて、
だれも住めなくなっただなんて、
みすぼらしいやまねこだなんて…。
それは、ほんとうに、
ほんとうにニノくんだったのか?
考えをめぐらせているうさぎの楽器やさんに、
ホーロウ先生は、首を180度回転させて、
確信のある事だけを伝えました。
「白キツネは、気味の悪い枝だから手離したいと言っていた。
だが、おまえは、そう思わなかったから、
ふえを作ったんだろう?
それなら、
なんとかできるのは、おまえだけだ。
星は、おまえを導いている。
これは、わたしの読みだ。」
うさぎの楽器やさんは、
ホーロウ先生に深々と礼をして、
出口のドアを開けました。
ドアの外には、街ネコのお弟子さんが
控えていました。
うさぎの楽器やさんは、お弟子さんにいいました。
「やりたいと思う気持ちを持っていることも、才能ですよ。」
自分がやりたかったのは、
そう、楽器やの仕事だ。
うさぎの楽器やさんは、覚悟を決めて、
天文台を出ました。
街ネコのお弟子さんは、きょとんとして、
うさぎの楽器やさんを見送りました。
昔と変わらない鋭い目で、
こちらを見ている。
「フクロウって、すごいな。」
と、実感しながら、
うさぎの楽器やさんは、何と答えようか、考えていました。
「はい、そうです。」と答えれば、
「わかった。」とか、
「そうか。」などと言われるだけで、
ホーロウ先生と、会話が続かないのは、予想がつきます。
なんとかして、ホーロウ先生からも、情報を得たいのです。
あの桜、と、
ホーロウ先生は言ったのです。
間違いなく、ホーロウ先生は
冬桜の枝のことを知っている。
「若い頃、
白キツネからもらった桜の枝で、ふえを作りました。
…ホーロウ先生、
あの白キツネは、どこから来たのですか?」
ホーロウ先生は、何も言わずに、音もなく飛びたち、
翼のあるものにしか行けない、高いところにある本棚にとまりました。
そして、一冊、
黒い革表紙の本を選ぶと、
袴毛のある足で軽くつかんで、
また、音もなく書類の積み重なった机におりました。
がっしりとした脚の爪先で、
器用に本の薄い紙のページをめくると、
あるページの表の中から、数字を探しだし、
何やら計算をし始めました。
そして、うさぎの楽器やさんに
計算式を見せて、言いました。
「小さな彗星が近づいている。
おまえが、この森を離れたときも、
こんな彗星が見えていた。
見ろ。おまえは、どう読む?」
ホーロウ先生の仕事は、星を読むことです。
望遠鏡で星の位置を観測し、
ホーロウ先生の独自の計算で、星の動きを読めば、
季節や気候の変化、
これから起こる出来事や、運命すらわかるというのです。
この森の動物たちは、ホーロウ先生のおかげで、
厳しい暑さや寒さ、
嵐や災害に備えることができています。
うさぎの楽器やさんは、昔ならったことを思い出しながら、星の動きを読んで、
「この森に、悪い影響はないでしょう。
それとも、これで、だれかの運命を読むとしたら…
また、森を離れていきますね。」
と言って、笑いました。
「ふん。あいつにも、
おまえほどの読みの才能があったらいいのだが。」
あいつというのは、
さっきの街ネコのお弟子さんのことだろう。
お弟子さん、苦労しているだろうなぁ…
と、うさぎの楽器やさんは、ホーロウ先生とお弟子さんの日常を、想像していました。
すると、唐突に、
ききたかった話が、始まりました。
「白キツネは、古道具やだ。
いろんな森に出入りしていて、
たまに、ここへも来る。
桜の枝は、ここへ来る前に寄った森で手に入れたと、
あの時、言っていた。
おまえが壊した望遠鏡の部品を、
やっと持ってきてもらった時だ。」
…あ、覚えていた。
うさぎの楽器やさんは、スミマセンと、頭をかきながら、
「北の森ですか。」
とききました。
「白キツネが、いつも立ち寄る順は、
そうだ。」
と、いうと、
ホーロウ先生は、また、音もなく飛んで、
望遠鏡のイスに戻りました。
「もっと、
あの桜のことを、おしえてください!」
と、うさぎの楽器やさんがいうと、
ホーロウ先生は、望遠鏡をのぞきながら、いいました。
「青い湖のある森に、行ってみるがいい。
そう遠くはない。」
「…」
そうだ。
誰かにきいた話のまま、
あれこれ考えていても、何にもならないじゃないか。
ウワサは、どこまで本当なのか?
森が枯れてしまっただなんて、
だれも住めなくなっただなんて、
みすぼらしいやまねこだなんて…。
それは、ほんとうに、
ほんとうにニノくんだったのか?
考えをめぐらせているうさぎの楽器やさんに、
ホーロウ先生は、首を180度回転させて、
確信のある事だけを伝えました。
「白キツネは、気味の悪い枝だから手離したいと言っていた。
だが、おまえは、そう思わなかったから、
ふえを作ったんだろう?
それなら、
なんとかできるのは、おまえだけだ。
星は、おまえを導いている。
これは、わたしの読みだ。」
うさぎの楽器やさんは、
ホーロウ先生に深々と礼をして、
出口のドアを開けました。
ドアの外には、街ネコのお弟子さんが
控えていました。
うさぎの楽器やさんは、お弟子さんにいいました。
「やりたいと思う気持ちを持っていることも、才能ですよ。」
自分がやりたかったのは、
そう、楽器やの仕事だ。
うさぎの楽器やさんは、覚悟を決めて、
天文台を出ました。
街ネコのお弟子さんは、きょとんとして、
うさぎの楽器やさんを見送りました。
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