56 / 88
<やまねこのふえ>のお話
34 追跡
しおりを挟む
レノさんからふえを奪い返したニノくんは、低い雑木の間をかけ抜けていきました。
細く鋭い枝が、腕に刺さってもかまわず、
枝に弾かれながら強引に進みます。
カラスたちは、これ以上は低空飛行ができなくなり、
上空に舞いあがりました。
それでもまだ、低木が乱雑に動くので、
やまねこが走っている場所は確認できます。
上空から見ると、やまねこが向かう先が読めます。
左手に向かうと開けた場所にでます。
右手は、さらに深い木立です。
木立に入られてしまうと、大きな木の下で、やまねこの動きがわからなくなり、
見失ってしまいます。
「カア」
先頭のカラスの合図で、3羽のカラスが左手にまわりました。
やまねこは、左手に先まわりしたカラスを確認すると、
カラスを避けて、反対方向に向かいます。
まるで、わざわざ木立に誘導したような追い方ですが…。
そう。そこは、月の丘への入り口なのです。
カラスたちは、やまねこが月の丘に入ったことを確認して、
「カア、カア、カア」
と騒ぎたてました。
カラスたちの鳴き声をきいて、
ニノくんはまだ走り続けます。
丘の中腹まで来たとき、
大きく右にカーブしたその先で、
突如うさぎの女の子が右手から飛び出して鉢合わせ、
ぶつかりそうになりました。
ニノくんはそれを避けようとして
左に飛びました。
そこに、あの罠が仕掛けられていたのです。
左足から着地したその地面は、
落とし穴になっており、大きく崩れます。
同時に上からジャスミンのツルで編んだ網が
傘を広げたように落ちてきます。
ニノくんは、とっさに右足で落とし穴の壁を蹴って、
穴の縁にしがみつきました。
網は、体の半分かかっていましたが、
頭と肩は外に出ていました。
網から逃れようともがくと、
ふえを差し込んでいるショルダーバッグが、引っかかり、邪魔をします。
ニノくんは、ふえだけつかみ取って、
バッグを振り捨てました。
すると、網はバッグと一緒にスルリと穴の底に落ちていきました。
穴の縁から這いあがり、
ふえだけを握って逃げようとすると、
その道の先に、今度はきつねの若者が立ちふさがるように現れました。
きつねの若者の黄色い目に射すくめられて、ほんの少しひるんだ瞬間に、
横から衝撃が走りました。
それほど大きくない、まだ若い黒くまが、
一撃、
ニノくんをたたき飛ばしたのです。
ニノくんは、飛ばされたはずみで、
木の幹に頭と体を強く打ちつけ、
気が遠くなっていきました。
大きくないとはいえ、くまの一撃はすさまじく、爪が深くニノくんの背中をえぐっていました。
きつねの一軍の連携プレーによって、
とうとうふえ吹きのやまねこは捕まったのです。
カラスたちも、木の枝を足掛かりに下へ下へと降りてきました。
きつねの若者が、静かにやまねこに近づき、
ふえを取り上げようとしたその時に、
異変は起きたのでした。
気を失ったはずのやまねこが、
ぎゅっとふえを強く握りしめ、
静かに目を開いて、
ユラリと立ち上がりました。
背中の傷から流れた血が、
やまねこの体毛を染めています。
その姿は、異形のもののようで、
さっきまで見ていた動物とはかけ離れていました。
きつねの一軍は、そのきみの悪い様子を見て、
身の毛がよだち、手が出せません。
やまねこは、少し歩いて、
気がついたようにきつねたちの方を振り向くと、
ふえを構えました。
ゆっくり息を吸いこみ、
まるでため息をつくように、ふえに息を吹きいれます。
やまねこの息が、すべて残らず音に変えられていきます。
きつねたちは、思わずひき込まれていきました。
突然、ふえの音は、大きな動きを見せます。
オクターブの音飛びに始まった、強く攻撃的なフレーズが、
きつねたちの胸に、
ドクンと響きました。
細く鋭い枝が、腕に刺さってもかまわず、
枝に弾かれながら強引に進みます。
カラスたちは、これ以上は低空飛行ができなくなり、
上空に舞いあがりました。
それでもまだ、低木が乱雑に動くので、
やまねこが走っている場所は確認できます。
上空から見ると、やまねこが向かう先が読めます。
左手に向かうと開けた場所にでます。
右手は、さらに深い木立です。
木立に入られてしまうと、大きな木の下で、やまねこの動きがわからなくなり、
見失ってしまいます。
「カア」
先頭のカラスの合図で、3羽のカラスが左手にまわりました。
やまねこは、左手に先まわりしたカラスを確認すると、
カラスを避けて、反対方向に向かいます。
まるで、わざわざ木立に誘導したような追い方ですが…。
そう。そこは、月の丘への入り口なのです。
カラスたちは、やまねこが月の丘に入ったことを確認して、
「カア、カア、カア」
と騒ぎたてました。
カラスたちの鳴き声をきいて、
ニノくんはまだ走り続けます。
丘の中腹まで来たとき、
大きく右にカーブしたその先で、
突如うさぎの女の子が右手から飛び出して鉢合わせ、
ぶつかりそうになりました。
ニノくんはそれを避けようとして
左に飛びました。
そこに、あの罠が仕掛けられていたのです。
左足から着地したその地面は、
落とし穴になっており、大きく崩れます。
同時に上からジャスミンのツルで編んだ網が
傘を広げたように落ちてきます。
ニノくんは、とっさに右足で落とし穴の壁を蹴って、
穴の縁にしがみつきました。
網は、体の半分かかっていましたが、
頭と肩は外に出ていました。
網から逃れようともがくと、
ふえを差し込んでいるショルダーバッグが、引っかかり、邪魔をします。
ニノくんは、ふえだけつかみ取って、
バッグを振り捨てました。
すると、網はバッグと一緒にスルリと穴の底に落ちていきました。
穴の縁から這いあがり、
ふえだけを握って逃げようとすると、
その道の先に、今度はきつねの若者が立ちふさがるように現れました。
きつねの若者の黄色い目に射すくめられて、ほんの少しひるんだ瞬間に、
横から衝撃が走りました。
それほど大きくない、まだ若い黒くまが、
一撃、
ニノくんをたたき飛ばしたのです。
ニノくんは、飛ばされたはずみで、
木の幹に頭と体を強く打ちつけ、
気が遠くなっていきました。
大きくないとはいえ、くまの一撃はすさまじく、爪が深くニノくんの背中をえぐっていました。
きつねの一軍の連携プレーによって、
とうとうふえ吹きのやまねこは捕まったのです。
カラスたちも、木の枝を足掛かりに下へ下へと降りてきました。
きつねの若者が、静かにやまねこに近づき、
ふえを取り上げようとしたその時に、
異変は起きたのでした。
気を失ったはずのやまねこが、
ぎゅっとふえを強く握りしめ、
静かに目を開いて、
ユラリと立ち上がりました。
背中の傷から流れた血が、
やまねこの体毛を染めています。
その姿は、異形のもののようで、
さっきまで見ていた動物とはかけ離れていました。
きつねの一軍は、そのきみの悪い様子を見て、
身の毛がよだち、手が出せません。
やまねこは、少し歩いて、
気がついたようにきつねたちの方を振り向くと、
ふえを構えました。
ゆっくり息を吸いこみ、
まるでため息をつくように、ふえに息を吹きいれます。
やまねこの息が、すべて残らず音に変えられていきます。
きつねたちは、思わずひき込まれていきました。
突然、ふえの音は、大きな動きを見せます。
オクターブの音飛びに始まった、強く攻撃的なフレーズが、
きつねたちの胸に、
ドクンと響きました。
0
あなたにおすすめの小説
汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!
虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん><
面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる