うさぎの楽器やさん

銀色月

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<やまねこのふえ>のお話

47 うさぎの兄弟

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ふえは、すこぶる機嫌が良く、
対抗心を燃やすこともなかったので、
ニノくんは、オルガンの音に軽くのせて演奏し始めました。

オルガンの音は、ニノくんのふえの音が入ってきたのが分かると、
低音域に移動して優しく受け入れます。


弾いているのは、リンです。


リンは、一度2ndのふえを吹いたときに、たしかに2ndの声をききました。

父がつくったふえに、このような力があると知って、
これを吹くのは、自分ではないと判断したのです。
ランが、街まで帰ってきていることも、わかっていました。
 

 この2ndは、然るべき者が吹かない限り、
 その場しのぎにしかならない。

 でも、ランならやれる。

 それに、ニノくんとランの共演なんて、
 どうしたって、聴いてみたいじゃないか!


街に帰ってきていたランを、演奏者協会の事務所でつかまえて、
一緒にレンのところへ行きました。

レンは一番下の弟で、街で作曲の仕事をしています。

からだの小さかったレンが、今や、兄弟の中で一番ガタイが大きく、
特に鍛えているわけでもないのに筋肉質です。


リンがレンに頼んだのは、今、弾いている、オルガンの低音パターンの作曲です。

ミュージカルの仕事が立て込んでいるところでしたが、大好きな兄たちがそろってやってきたので、
レンはよろこんで、その場で取りかかりました。

即席にしてはいい出来で、
ふえが気持ちよく乗ってこられるように作ってあります。


作っている間は、兄たちがすぐ側にいて、むかし話を始めたので、
作曲に集中できないのではないかと思うところですが、
レンは、小さかった頃と同じ状況を楽しむように、
兄たちの会話や口喧嘩を聴きながら作業をしました。

ノスタルジックでありながら、楽しげな和音運びは、そのせいです。
 

その後、仕事が立て込んでいるレンを街に残して、
リンとランは銀色の森に戻りました。


リンは、銀色の森に戻ったら、森のオーケストラにも協力をお願いしようと考えていました。

ニノくんを追って森を出た父の後を継いで、森のオーケストラのコンサートや楽器のメンテナンスをしてきたリンですから、
話をきいてもらえる自信はありました。

むしろ、父よりうまく伝えられるだろうと、思っていたくらいです。


でも、そんな時間はなく、
ふえの演奏は、オークのお店のある丘の南西の斜面で始まったのでした。

綿密な打ち合わせもなく、
リンはオルガンのある音楽堂へ、
ランは父のいる場所へ向かったのです。
 


決して対抗心を燃やしたわけではなかったのですが、気分がのってきたふえは、高音域を使い始めました。

いつ、あの魔性の音を使ってもおかしくない状況です。


リンの低音は、笛の音を優しくエスコートして、
あの音を使わないようにリードしています。

ところが、相手が頼りになるとわかると、
全てまかせて自由に歌いたくなるもので、
ふえは、リンが弾くオルガンのベース音の上で音あそびを始めました。


リンに緊張が走ります。


「まずい。ベースで誘導しきれないぞ。」

ふえの音は、予測できない音に飛び、
ソロダンサーのように踊ります。


こんな時、
自分の技量を思い知るのです。

ある時、

リンは、弟のほうがいい音を奏でることに気がつきました。
ちょうど、成長期、弟の体が自分と同じくらいの大きさになった頃です。

どんな楽器を演奏しても、弟の音は透きとおるように美しく、
心躍る気持ちや、ちょっとせつなくなったときの気持ちが手にとるようにわかり、
もっともっと聴きたいと、どうしても弟の旋律ばかりを耳が追ってゆくのです。


どんなに頑張っても、自分にはそんな表現はできないとわかったときに、
父のお店を本気で手伝いはじめました。


やってみたら、びっくりするほど自分に合っていたんですがね!


リンが、うさぎの楽器やさんとして、天性のものを持っていたなんてこと、
みなさんはとうの昔にご存知でしたよね!


 あっ、

 いま、
 あいまいな音はこびをしてしまった。
 しまった。

リンがそう思ったとき、

そして、そこをはずみにするように、
あの音を、
とうとう使われてしまったとき、


あの音に、もうひとつのふえの音が重なりました。



その音は、純度が高く、
魔性の音を邪魔するどころか、上質なビロードの絨毯をしいたように導き、音自体を変化させました。

もちろん、ランの音です。
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