河童様

なぁ恋

文字の大きさ
10 / 118
河童の存在価値

しおりを挟む
 
黒猫は動かなくなって地面に倒れた。
どうにか出来ないかと黒猫に駆け寄る。

「朗……」

朗を見遣ると、彼は冷たい声色で、
「それは優月を苦しめた」
助ける気はないと目が語ってる。

「この子は、生きたかっただけだよ! 助けて上げるべきだ」

黒猫の顔を覆った水玉に触れるとグニュッと歪んで中の水が揺れる。ゼリーみたいな感触。
助けたい! そう思ったと同時に左目が熱くなった。その熱は水玉に触れていた指先まで伝って、パンッ! と弾けて蒸発し消えた。

安堵するも解放された筈の黒猫は、ぴくりとも動かなくて揺すってみる。
その手の平にぬるっとした感覚を感じて、見ると赤い血が着いていた。
僕の肩の傷口から腕を伝って指先まで流れて落ちて来ていた。
無意識にその血の着いた手で黒猫の骨の見える顔に触れた。

僕の頭のイメージにある黒猫の姿。それを思い浮べながら、助けたい! その一心から熱い左目とその熱を感じて熱く発熱した手の平を黒猫に押しあてる。

「生きたいなら……頑張れ」

熱く熱い手の平から何かが流れて黒猫に注がれている。もしかしたら僕の血かもしれない。
確実に、見る間に黒猫の身体は小さくなって、黒い毛並みが綺麗な、痩せっぽっちの痛々しい小さな黒猫に変化した。

その姿に安堵し、力の抜けた体が倒れそうになるのが判って痛みに身構えて目を瞑った。

ふわりと柔らかく抱き留められて後ろを見上げると、朗が微笑んでいた。

「この子は大丈夫?」
「あぁ。大丈夫」

まるで夢を見てたみたいな出来事。

「何が起こったの?」
「“河童の存在価値”について話しておかなければならないな」

朗の声色は優しくて……まるで子守歌を聴いているみたいに心地好くて……瞼が閉じて行くのを止められなかった。
 
 

*優星side* 


「響夜くん!」

前を行く黒い後ろ姿を追い掛ける。
夏だと言うのに詰襟をきちっと着た響夜くんは汗一つかかない。
一年中詰襟を着ている彼は学校で浮いた存在だった。

でも、何だか気品ある彼の雰囲気や静かな佇まいに、私には無いものを持っている彼に、徐々に惹かれて行った。

それで彼を目で追って判った事は、かなり詳しく“妖怪”について調べている事。

チャンスだと思った。

私には“河童”に会った事があるゆづがいるんだから。

それを響夜くんに言ったら食い付きがスゴく良くて、それまでつれなかった彼の同好会仲間に昇進出来た。

響夜くんが帰ると言うから私も一緒に学校を出たんだけど。

さっきの保健室の出来事。
新しい先生と嬉しそうに話す響夜くんの、その話の内容。

河童と龍とその妖怪達の混血の話。

まるで本当の話みたいだった。

先生が河童で、響夜くんが龍? みたいな?

それに先生の水宝 朗って言ったかしら?
ゆづに対する反応。怪しかったな。

「水先」

不意に声を掛けられて驚く。滅多に名前なんて呼んで貰えないから。

「なあに?」

嬉しくて小走りに響夜くんの横に並ぶ。

「お前の弟は人間か?」

突拍子もない事を言われて驚く。
 
 
「どう言う意味?」
本当に訊かれた意味が判らない。

「いや……」

少し考えてた響夜くんが「送ろう」って言った。

うそっ?!
聞き間違いじゃない?

いつも私が響夜くんを送って帰る。(勝手に着いて行ってるとも言う)

現に彼の家に続く長い階段が目の前に見えて来ていた。
この階段を上がると響夜くんの家である神社がある。龍を祀る【龍羽神社】響夜くんの名前の神社。

もうすぐ家なのに……うちまで送るって??

言うが早いか踵を反した響夜くんが足早に歩き出す。
私は彼の後ろに着いて歩く。嬉しくて。

私は響夜くんが本当に大好きなんだ!
 
 
*響夜side* 


人間か?

と訊いて優星の表情に知るわけがない。と考え直す。

水先 優月。そして河童。

水先 優星。
この娘は俺にしつこく付きまとう。

境内で出逢った13年前も―――あの日の記憶は封じた―――俺の事は忘れた筈なのに、学校で再会した時、真っ直ぐに俺を見た。

記憶事態は戻っていなくとも、何かしら感覚で残っていたのかもしれない。
   ..
だが、女性は俺に近付いてはいけない。

俺は女性を不幸にする。
.....
そうする為に生まれて来たのだから。

妖怪である半身を呪う。
自分自身を呪う。


―――!?


程近い場所から漂って来た血の匂い。
水の動く気配。

これは……思い浮かぶのは水先 優月の事。

「送ろう」

優星に危険を感じて申し出る。
         .
……不幸になるのは母一人でいい。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...