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人間と妖怪と生
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しおりを挟む*優月side*
「そう言えば優月。眼鏡、どうしたの?」
話に聞き入っていたのに、全く関係ない事を訊かれていきなり現実に戻る。
「え? 眼鏡は、壊れた。」
周りからも息を吐く声が聞こえた。
「おばあちゃん。水先家にそんな秘密があったなんて……思ったんだけど、隔世遺伝なら、次は私?」
姉ちゃんの疑問は、皆の疑問でもあった。
「そうね」
「でも、何も貰ってないわ?」
「私が預かってるのよ。けどね。“龍の印”の意味を知らなければ渡せなかった。それに当時はまだ幼すぎたし」
言われれば頷ける。
「そもそも私何の力も持ってないよ?」
姉ちゃんが首を傾げた。
「そうかしら? そうは思わないわ。それは龍も感じてる筈ね」
響夜先輩に視線を向けた母さんに、響夜先輩が無言で頷く。
「一度ついた印は無効に出来ない事は知っていたかしら?」
母さんの言葉に肩を震わせた響夜先輩。
「宝珠にするつもりはない!」
しっかりと母さんを見据えて言い切った。
「私は良いのに」
呟いた姉ちゃんに、
「意味も解らず言うだけは相手を困らせるだけよ」
姉ちゃんが叱られたみたいに肩をすくめた。
「まあ、嫁に出す。みたいな事なんだけど」
母さんの発言に喉をつまらせた響夜先輩。対照的に目を煌めかせる姉ちゃん。
「いや。水先家には婿に来て貰わないと。跡継ぎは女なんだからな」
「父さん!?」
入り口に顔を覗かせた父さんが居た。
のほほんとした笑顔で入って来た父さんは、分厚い眼鏡を一度指で押し上げ口を開いた。
「今何時か知ってるかい?」
「あら。もうそんな時間?」
母さんが微笑んで父さんの傍に行く。
「そうだ。肝心の母さん父さんの話し聞いてない! どうやって“座敷わらし”から“人間”に成ったの?!」
姉ちゃんの問いに、確かにと頷く。
「う~ん。でももう19時過ぎたわ。ご飯作らなきゃ。朗くんは兎も角、龍の響夜くんは……帰らなくちゃならないんじゃない?」
「大丈夫だよ。右くんを“見張り”にやったから。それに長くなりそうだったからお寿司の出前を人数分とったからね。
ちゃんと話してやろうよ」
当たり前の様に話してる父さん。優しいけど頼りないってイメージだったのが、何だか嘘みたいに頼もしく見えた。
「そうね。優太くんの言う通りね」
話し出したなら最後までね。と、母さんは父さんに微笑んだ。
それにしても、ここに居なかったんだから響夜先輩のお母さんの事知らない筈の父さん。なのに“見張り”にやったって“右くん”はお母さんを見張りに行ったって事?
家族についても知らなきゃならない事が沢山ありそうだ。
「まずは右くんの事だね」
笑顔のままで父さんが話し出した。
「響夜くんのお母さん。大丈夫変わりなく眠っているからね」
正座し膝に乗せた両拳を強く握りしめた先輩が顔を上げる。
「母さんを治す事は可能だろうか?」
それに首を振った父さんが母さんを見る。
「あれは“怒り”の呪い。治す事は難しいわね」
「なら。倒すしかないのか?」
「貴方の父親を? でも、宝珠のない貴方はまだ成人してないから戦えない」
「だから私が―――」
言おうとした姉ちゃんを目で制した母さんが諭した。
「それは愛情でも優しさでもなく、残酷な事。
それに白龍の宝珠は響夜の女性が主体となってる。そして白龍はその女性を憎んでいる」
先輩が驚いて、どうして判るのか訊いた。
「右くんが貴方の家に行ったから私には視えるの。右くんは私の妖力から産まれた子だからね。
それに、古い家屋は座敷わらしにその家の歴史を頼まなくても視せる。だから朗くんの事も知ってるのよ」
朗が突然名前を言われて驚いた。でも待っていたみたいに口を開く。
「私の母は連れ去られたと?」
朗が顔をしかめて訊く。
「母は何に捕まったんだ?」
そうだ。強い妖力を持つ妖怪に捕まったって?
「鬼だニャ?」
クロスの言葉にその場の温度が一気に下がる。
「鬼?」
「微かニャ“匂い”が残ってるニャ。それに天井を見てみニャ」
天井を仰ぐクロスに習って上向いて驚いた。
三つの横長の傷跡。
「“三つ指の鬼”だニャ」
「そうよ。化け猫ちゃんは色んな事知ってるのね?」
微笑んだ母さんが僕の膝に座るクロスの喉を撫でた。
「河童は常に狙われてるからね。でもこの離れに居れば今は大丈夫」
「今は?」気になる言い方に訊いていた。
「朗くんのお母さんが捕まった時、水先家に“櫂”が不在だった。それに“座敷わらし”も居なかった。だから捕まったの。今は二つが揃って強固になってるのよ。特にこの離れは優良がそう施してたからね。
あらゆる邪悪は入って来れない。だから人間界に居るつもりならここに住むと良いわ」
「台所もお風呂もトイレもある離れだから不自由はしないよね!」
思わず言っていた。
「そうね」母さんが苦笑した。
また真顔になって話し続けたのは“右くん”の事。
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