河童様

なぁ恋

文字の大きさ
21 / 118
人間と妖怪と生

しおりを挟む
 
*優月side*
 

「そう言えば優月。眼鏡、どうしたの?」

話に聞き入っていたのに、全く関係ない事を訊かれていきなり現実に戻る。

「え? 眼鏡は、壊れた。」

周りからも息を吐く声が聞こえた。

「おばあちゃん。水先家にそんな秘密があったなんて……思ったんだけど、隔世遺伝なら、次は私?」

姉ちゃんの疑問は、皆の疑問でもあった。

「そうね」
「でも、何も貰ってないわ?」
「私が預かってるのよ。けどね。“龍の印”の意味を知らなければ渡せなかった。それに当時はまだ幼すぎたし」

言われれば頷ける。

「そもそも私何の力も持ってないよ?」

姉ちゃんが首を傾げた。

「そうかしら? そうは思わないわ。それは龍も感じてる筈ね」

響夜先輩に視線を向けた母さんに、響夜先輩が無言で頷く。

「一度ついた印は無効に出来ない事は知っていたかしら?」

母さんの言葉に肩を震わせた響夜先輩。

「宝珠にするつもりはない!」

しっかりと母さんを見据えて言い切った。

「私は良いのに」
呟いた姉ちゃんに、
「意味も解らず言うだけは相手を困らせるだけよ」

姉ちゃんが叱られたみたいに肩をすくめた。

「まあ、嫁に出す。みたいな事なんだけど」

母さんの発言に喉をつまらせた響夜先輩。対照的に目を煌めかせる姉ちゃん。

「いや。水先家には婿に来て貰わないと。跡継ぎは女なんだからな」

「父さん!?」
 
入り口に顔を覗かせた父さんが居た。
 
 
のほほんとした笑顔で入って来た父さんは、分厚い眼鏡を一度指で押し上げ口を開いた。

「今何時か知ってるかい?」

「あら。もうそんな時間?」

母さんが微笑んで父さんの傍に行く。

「そうだ。肝心の母さん父さんの話し聞いてない! どうやって“座敷わらし”から“人間”に成ったの?!」

姉ちゃんの問いに、確かにと頷く。

「う~ん。でももう19時過ぎたわ。ご飯作らなきゃ。朗くんは兎も角、龍の響夜くんは……帰らなくちゃならないんじゃない?」

「大丈夫だよ。みぎくんを“見張り”にやったから。それに長くなりそうだったからお寿司の出前を人数分とったからね。
ちゃんと話してやろうよ」

当たり前の様に話してる父さん。優しいけど頼りないってイメージだったのが、何だか嘘みたいに頼もしく見えた。

「そうね。優太ゆうたくんの言う通りね」

話し出したなら最後までね。と、母さんは父さんに微笑んだ。
 
それにしても、ここに居なかったんだから響夜先輩のお母さんの事知らない筈の父さん。なのに“見張り”にやったって“右くん”はお母さんを見張りに行ったって事?

家族についても知らなきゃならない事が沢山ありそうだ。
 
 
「まずは右くんの事だね」

笑顔のままで父さんが話し出した。

「響夜くんのお母さん。大丈夫変わりなく眠っているからね」

正座し膝に乗せた両拳を強く握りしめた先輩が顔を上げる。

「母さんを治す事は可能だろうか?」

それに首を振った父さんが母さんを見る。

「あれは“怒り”の呪い。治す事は難しいわね」

「なら。倒すしかないのか?」

「貴方の父親を? でも、宝珠のない貴方はまだ成人してないから戦えない」

「だから私が―――」

言おうとした姉ちゃんを目で制した母さんが諭した。

「それは愛情でも優しさでもなく、残酷な事。
それに白龍の宝珠は響夜の女性が主体となってる。そして白龍はその女性を憎んでいる」

先輩が驚いて、どうして判るのか訊いた。

「右くんが貴方の家に行ったから私には視えるの。右くんは私の妖力から産まれた子だからね。
それに、古い家屋は座敷わらしにその家の歴史を頼まなくても視せる。だから朗くんの事も知ってるのよ」
 
 
朗が突然名前を言われて驚いた。でも待っていたみたいに口を開く。

「私の母は連れ去られたと?」

朗が顔をしかめて訊く。

「母は何に捕まったんだ?」

そうだ。強い妖力を持つ妖怪に捕まったって?

「鬼だニャ?」

クロスの言葉にその場の温度が一気に下がる。

「鬼?」
「微かニャ“匂い”が残ってるニャ。それに天井を見てみニャ」

天井を仰ぐクロスに習って上向いて驚いた。

三つの横長の傷跡。

「“三つ指の鬼”だニャ」

「そうよ。化け猫ちゃんは色んな事知ってるのね?」

微笑んだ母さんが僕の膝に座るクロスの喉を撫でた。

「河童は常に狙われてるからね。でもこの離れに居れば今は大丈夫」

「今は?」気になる言い方に訊いていた。

「朗くんのお母さんが捕まった時、水先家に“櫂”が不在だった。それに“座敷わらし”も居なかった。だから捕まったの。今は二つが揃って強固になってるのよ。特にこの離れは優良がそう施してたからね。
あらゆる邪悪は入って来れない。だから人間界に居るつもりならここに住むと良いわ」

「台所もお風呂もトイレもある離れだから不自由はしないよね!」

思わず言っていた。

「そうね」母さんが苦笑した。
また真顔になって話し続けたのは“右くん”の事。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...