河童様

なぁ恋

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龍牙咆哮

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白く光る龍体は恐ろしく美しく、一目で虜になった。

龍は言った。
自分のものになるか? と。







*********
 
 
 
*優星side*


何度目かの静寂が室内に訪れた。

この目で視、聞き、垣間見た歴史は息を呑む程にリアルで肌で感じられるくらいに身近で納得出来た。

そして疑問が頭をもたげる。

「“壁”がまた危ないって事?」

河童の優良に訊く。
彼女はゆっくりと私に視線を合わせて頷いた。

「あの後、私は一人娘を産んだ。そして間もなく、壁を補強する為、命を賭した。
それからは水先の血に定期的に現れて見守って来て……この度皆が集まった」

「“皆”とは魂の集合の事?」

「それも力有る者達が」

無意識に額の鱗を撫でる。
“力”それは身を持って知る事が出来た。


「優星。貴女は龍羽神社のゆうつきの妹“たまゆら”さらに言えば、最初の“龍珠”で在り最初の“閻魔帖”の持ち主でもある」

「私の魂の履歴書的な感じね?」

言葉にされたら何だか大袈裟に感じるけど。

「そこの白龍は……」

優良は一度言葉を切ると、また納得した様に頷いた。
 
 
「貴方は……イザナミの雷の血筋ね」

言われたのは思ってもなかった事。

「あの時、雷二人が私を追って人界に来た。
その一人がゆうつきの神社へ落ちた。そして神の化身の如く振る舞って、たまゆらを珠に変えた。」


優良の言葉に違和感を覚えた。

「いいえ。
その姿はまさしく神の様でした」

口から滑り出た言葉に“たまゆら”の意志を感じた。

私で在って私で無い存在。

優月を見てたから解る。
でも私は呑み込まれない。

私は彼に対して愛しさしか感じない。
小さい時に出逢った当初から、不思議と好意しか持ってなかった。

龍羽神社。
あの場所は私にとって大好きな場所だった。

あの階段を響夜くんの暗示で登れなくなってからも、その下から眺めるだけで満足していた。

まるで優月の河童様の池の様な感じ。

大切な私の居場所。
 
 
 
大切だと思うのは、神社?
それとも……。
自分の胸に手を添えて、目を瞑り考える。

それが大事だと思うから。
ゆづと朗の様に知る事が大事。

これは私を知る事。

気付いたら、暖かさに全体が包まれて居た。

それは“閻魔帖”の温もり。
閻魔帖の力を借りて、私の内へ潜り込む。
 

********* 
 


ゆうつき姉さんが閻魔だと名乗った男に連れ去られ、集まった村人は騒ぎ立て右往左往して居た。

それら全てがまるで現実味がない。

最初から生け贄なんて反対だった。
姉さんを犠牲にしてまでこんな所は作らなくていいのに。と……。

姉が連れ去られてホッとしていた。
それが何者でもかまわない。

雨脚は徐々に強くなり、山が、空が、土が音を立てた。

足元が揺れ、目の前の土が捲れる様に大地が裂ける。

揺れる地面を踏み締めて、恐ろしい思いよりも、興味の方が強くて、中を覗き込む。
 
 
いつの間にか静寂に包まれ周囲が音を無くす。
体を打ち付ける雨粒だけが自分が何処に居るのか辛うじて解らせていた。
 
目の前に広がる暗い裂け目から、白く光る長いものが見えた。
それはうねり徐々に姿を現して来た。

長い蛇の様な肢体。
その尻尾の先から頭まで白一色。

想像していたものと同じ。それよりも遥かに美しい姿。

白いたてがみが水を弾き、同じ色の長い睫毛に縁取られた黒い眼球に白い瞳が煌めく。

「龍神様」
思わず呟いていた。

「「おおままええはぁ―――イィザァナァミィかぁぁ―――???」」

イ ザ ナ ミ?

「いいえ。玉響。私の名はたまゆら」

龍神様は頭を上げて、次に顔を寄せて来た。
鼻の先にその息遣いが判る程に近い。

「「イザナミではぁ―――ないぃ?」」

なんて、綺麗なんだろう。

「違います。たまゆらです。
貴方は、龍神様?」

「「龍?」」

疑問系の答え方。

「その姿は“龍神様”よ」

「「龍」」

呟きは咆哮に変わる。

「「我はぁ。龍神!!」」

咆哮は大地を震わせ、龍神様の体全身が白く光る。
 
 
その美しさに魅入られる。

「「そなたの名は?」」

訊かれ、何度目かの名乗りをする。

「玉響。たまゆらです」

長い尾が地面を擦り削る。短い四本指の手足はしっかりと土を掴んで立って居た。

「「た ま ゆ ら……そなた。我のものになるか?」」

黒い瞳に吸い込まれそうになる。

「喜んで」

ゆうつき姉さんは、ただこの世のものでないもの達を視る事が出来る。そんな理由で生け贄にされた。
私には理解出来ず、怒りの感情しか沸かなかった。

でも、自ら納得し贄になるなら話は別。

私は望んで贄になる。

  ....
「「未来永劫に、そなたは我のものだ。
誰にも渡さない。それを覚えておくがいい」」

その瞳が白く光る。
雨粒は変わらず体を打ち付けて居た。それがぴたりとやみ。
やがて、体全ての感覚を失った。




未来永劫。
“たまゆら”ハ我ノモノ。



耳に残る声は、魂に刻み込まれた。

それは、呪縛。
 
 
 
 
  
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