光輝く世界で別れて出逢う~世界樹の子どもたち~

なぁ恋

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本編

古金貨の殴り屋の謎と目覚めた少年

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一人目は、右足を。
二人目は、左足を。
三人目は、右腕を。
四人目は、左腕を。
五人目は、局部を。

その原型が判らぬ程潰されていた。
そして、
六人目は、顔面を。

何れも拳によって、殴り殺されていた。
助かったのは私が見つけた少年だけ。

特徴は殴られていること。
古金貨を三枚握らされていること。
子どもで、男の子であると言うこと。

この六ヶ月の間に起こった猟奇殺人。
一ヶ月に一度の間隔で行われている。

犯人の目星も何も判らない状態。
解っているのは、古金貨が相当に古いもので遺跡と同等の価値があると言うこと。

あの後すぐに衛兵にことの詳細を報告する。
当たり前だが大騒ぎになった。古金貨は提出し、少年は騎士である身分の私預かりになった。


そうして、三日が経っていた。

屋敷に閉じ篭ってた私たち。
少年は未だ目覚める気配はないが、食花は体に吸収させることでさせていたので回復はしている。らしい。

休息も後三日。

深ーい溜め息が零れ出た。

「どうした?」

ユグが頭上から訊いて来た。

「これ」

ヒラヒラと手に持った手紙を見せる。

「男爵家復活に、婚約通知」

そう。アウローレンス殿下は有言実行したのだ。

「私はお父様と婚約を結ばれたの」

魂は親子。現世は他人だけれどね。

「私は誰か思う人が居る訳ではないし、身分的にも逆らえないから仕方ない。とは頭では思ってるの。だけどね、殿下が手に入れたいのはヴィクトルであって私じゃない」

それに、アンスのこともある。
アンス……。あぁ。そうだ。

「もし、もしよ? アンスの言ったように、殿下との子ども産んだとして、その子がヴィクトルだったらどうなるの?」

恐ろしい結果にしかならない。
何度目かの溜め息を吐く。

「そうだな。人間は道徳的思考が強いからな……」

「え?! 妖精は違うの??」

「そうだね。血よりも心に従う傾向にあるから―――……」

ユグが言わんとしてること。
わざと間延びしてるところを見るに、聞かない方がいい気がする。

「いや、いいよ。言わないで」

不意に、頭上から金の粉が落ちて来た。

「居た居た! ねえ二人共! 少年が目を覚ましそうよ!」

少年にはロアとユグが交代で一定時間に花を与えていた。

目覚めは唐突に。
保護した少年は、誰とも判らないけれど、マムの癒しは完璧だと解っているけれど!

腕に抱いたあの軽さに不安になった。
体の細さは脆く壊れそうで……心配で心配で堪らなかった。

全く知らない子どもなのに、こんなに不安で心配なんて、不思議に思ってた。
多分。だけど、この腕で助けたから、庇護欲に目覚めたのかも知れない。母性本能的な?

一番陽の当たる部屋に寝かせていた。
入ると甘い甘い匂いが鼻につき、金色の敷き詰められた花の海の中に少年が眠っていた。

「だからっ……出しすぎ!」

文句を呟いて、花を掻き分けながら少年の傍へ。
ロアは てへへ と照れ笑い。何故?? 可愛いけどね!

やっとの思いで辿り着き、少年を覗き込む。

その顔はとても綺麗になっていた。
青血の痕も皮膚が裂かれた痕もない。

見惚れていると、瞼が揺れ、その目を開いた。

初めて見るその瞳は、私と同じ金色をしていた。強い近親感。
焦茶色の髪は柔らかそうで、少し垂れ気味の両目は可愛いらしい。

近親感。髪の色や瞳の色。色合いがお父様と似ている。だからか。

義眼も、義眼とは思えない。同じ色を称えていた。
マムは凄い。

自身の右手を意識する。
手の平の傷は残念ながら痕が残った。マムが治してくれたのに、だ。
凄まじい執着の現れなんだろうと感じた。

その傷を握り込み、緩め、少年へ手を伸ばす。

「大丈夫かい?」

ビクリと震えた少年と視線が合う。
構わず、その手を取り握る。
温かい手。

「私が見える?」

尋ねると惚けたように頷く。

「名は?」

少年は首を傾げる。

「……僕、は、誰……ですか?」

掠れた声で逆に訊かれ驚く。

「貴女は、女神……様?」

なっ 一気に熱くなる顔。

「私はヴァロア=リロイ。騎士をしている」

気付いてしまった。少年の眼差しに熱が籠るのを。
繋いだ手に、力が籠るのを。

「ヴァロア、様」

「喉が乾いてるのね!」

ロアが唐突に花を一輪少年に傾ける。その花の窪みに一口程の水玉が乗っている。
少年は驚いたが、体を起こそうとしていたので手伝ってやると、座り、ロアの寄越した水玉を戸惑うことなく口にした。

「甘い……」

とろんと、蕩けるような微笑みが花と開き、どきり と、胸が踊った。

なんっ……って、可愛い笑顔だろう!
いやいや、私には少年趣味はない。
あくまでも弟枠だ。そうだ。弟だ!

呪文のように“弟”を口の中で連呼して、落ち着いた。

「ふーーー……。それで、貴方は名を覚えてないのか?」

「……はい」

「年齢は判るか?」

「10歳です」

ロアが与えたのは花の蜜だったのか、滑らかに話せるようになっていた。

10歳。殿下と同じか。今彼は最早10歳ではないけどね。
と、少年がもしも殿下のように成長したら―――……を、想像してしまい、予想外にものすごーく、自分の好みかも知れないと気付いて、火が出そうな勢いで顔全体が熱くなる。

今まで異性の好みなんて考えたことも無いのに!
 
「初恋かな」
「そうね。初恋だと思うわ」

いやーーーー!!
ユグとロアがしたり顔で呟いた言葉に悲鳴を上げる。

顔の作りが超好みだっただけですっ!!



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