光輝く世界で別れて出逢う~世界樹の子どもたち~

なぁ恋

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本編

※見えない心① ~アウローレンス~

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「ん……殿下っ」

私は
全てのことに、飢えている。
生きることさえ飢えの対象。

良い匂いのするアンスの首元を執拗に舐める。

「あ……ダメ、だめです!」

と、頭を押さえられ、その温もりから引き離される。

「なぜ? お前は私のものだろう?」

「くっ───……そうです! けれど、その姿でわっ」

全身を真っ赤にして我がアンスは全身で私を拒む。

「姿?」

「今の殿下は、子どもです!」

「だから?」

「私は幼い子どもと、どうこうなど出来ません!」

あぁ。なるほど。この姿がダメだったのか。

「判った」

素早く宙から花を呼ぶ。

ファン

と、音を鳴らし花が手に落ちて来る。真っ赤な私だけの花が。
躊躇なく口にほおると、先程竜化し枯渇した魔力が補われ、躰の変化が起こる。

ギシギシと、骨の伸びる音。
手足が伸びて、その手をアンスの頬に伸ばす。

「───……これなら、いい?」

両手を添えて顔を近付け、その唇を塞ぐ。軽く触れて、強く押し付け、次第に乱暴に貪り、その唇を割り舌を差し入れる。
押し倒し、思う存分口内を味わう。
荒くなる息遣いに、甘やかな吐息が混じる。

「は……っ、」

「アンス……あ」

あ……。私は何を言おうとした?
いや、閨の言葉は甘く囁くものだ。だから、不自然ではない。
だが言葉につまり、動きの止まった私を、アンスの柔らかな翠色の双眼が問うように見つめていた。

「殿下……俺は貴方のことが好きだ。なんなら愛している。

アンスは布の上からでも解る逞しい上体を起こし、私をゆるりと抱き締めた。

、殿下。アウロ様を愛している」

それはそれは優しく抱き締められ、頭を、背中をさすられる。
されるがままに、アンスの胸元を両手で強く掴む。
そのまま押し倒され、啄むような優しい接吻が顔中に落ちて来た。
有言実行。愛しさを瞳に映し、十分に感じられる愛情が私に降り注ぐ。

偽物ではない。
その想いが、その瞳から降り注ぐ。

胸が温かい。
知らず、目尻が熱くなり、知らぬ間に零れる雫を、アンスがその唇で拭い去る。

「アン……ス……」

「あぁ。愛している。アウロ様……アウロ……」

温かい。
アンスの何もかもが、温かくて、私を暖める。
私の全てを温める。
 
思わず背に回した腕に力が入り、触れていた唇が深く、深くなる。まるで一つになったかのような錯覚を起こした。



甘やかな時間。


それが、破られる。


ドコン!


と、爆発音。錠を掛けた扉が壊されたことを瞬時に理解する。

「失礼します」

無表情な男が入って来た。
アンスと同じ色合いの髪だな。と、呑気に思った次の瞬間、視界に飛び込んで来たのは、ヴィクトル。

「あ……」

小さく声を上げたヴィクトル。動揺したのは彼女の方で、私は冷静にその姿を視界に収めていた。

アンスが動く。その熱が離れるのが嫌で、ぐっと襟を握り込んだ。

「あぁ。大丈夫。どこにも行かないから」

優しく握り込んだ手に触れられ、安堵し離す。

「無粋だな」

逢瀬の邪魔をされ、気分が悪い。

「もう、いいだろう?」

男が私に問う。

「どう言うことだ?」

「ヴァロア様はもう貴方のものではない」

「ヴァロア? あぁ、ヴィクトルのこと。いや、それは私のものだよ」

「貴方にはアンスが居るだろう?」

「アンスは私のものなのは否定しない。ヴィクトルも私のものだ」

何を当たり前のことを言っているのか。

「ヴァロア様は僕のものだ」

男が淡々と言葉にするのは事実とは違う戯言。

「“ヴァロア”なるものがそなたのものであるのは許そう。だが、“ヴィクトル”は私のものだ」

私は事実しか言わない。

怒気が室内を渦巻く。
思った以上のその魔力に瞬時に体制を整える。

「訳の分からぬことを言うな。誰でさえ、望まぬ限りは己は己のものだ!」

望まない?

「ヴィクトルは、私と添い遂げたいと言った。取り戻すその過程でアンスは私のものになった。二人は望んでいる」

「会話にもならないな」

男は怒気を隠そうともしない。
怒気は魔力を纏う。その質は濃厚。
私を庇うように前に居るアンスがその魔力に押されていた。
自分のものを害されるのは気分が悪い。

「やめろ」

発する言葉と共に、躰から溢れ出す竜気。
それで男の魔力を押し返す。
周りに小さな火花がちりちりと生まれる。

「「ダメだよ」」

大きな圧迫感で、瞬時に竜気と魔力が抑え込まれる。

なに?

「ロアと、ユグだ」

金色の粉が頭上から零れ、視界に飛び込んで来た小さな存在。妖精?
認識した次の瞬間、小さな存在が揺らいで、薄い幻のような人型の大きさに変化した。

「ヴァロアと、ユグドラシルだ」

ふわふわの茶色の髪の空色の大きな瞳のヴァロア。
薄い金色の髪と瞳のユグドラシル。

「貴方の祖です」

二人は瞳を細め、静かにこうべを垂れた。

「ヴァロアと……ユグドラシル?」

ユグドラシル。それは世界樹。
伝説の精霊。
それが私の祖?
力ある精霊が……なのに……、

「……私の……願いは……ヴィクトルが傍で笑っていてくれること。ただ、それだけだった……」

世界樹の力があれば、容易いことではなかったのか?

「傍に居れば、それも叶えられたかも知れない。今更、正すことも出来はしない。せめて、健やかに今の生を全うしてくれたらと……見護るだけでは足らないと、世界の隔たりを渡って来た」

静かに語る金の瞳は、確かに我らがリロイ家の血筋。

「何故、何故あの時には現れなかった?」

「我は世界の中心。こちら側に来るには条件が揃わなければならなかった」

心は見えないもの。その理由が本当であるかは、判らない。
後の祭りなのだから。最早関係ない


「私は、許さない……」

目の奥が熱くなる。
胸が苦しい……
抑えられていた竜気が、魔力が膨らむ。

「許さない」

あの時の、あの絶望感。
心の空洞の広がる感覚。
怒り、虚しさ。

世界の何もかもが、私を全否定する。

心が爆発する。


「ダメだ……アウロ様!」







気付くと、目の前に飛び出た何かを大きな牙で抉った後だった。




















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