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本編
双子の王女ユースローゼと第一王女ユースローゼ
しおりを挟むどこから記憶しているか?
それは初めから。
前世は光の通る殻の中から外の声を聞いて居た。
傍で同じ血の者も共に育つ。
姿形は違う我ら。けれど、近い考えを持っていた。
言葉は話せなくとも、意思は通じていた。
外は煩かった。
我らが産まれるには、もう少し時間が居るんだ。
なんでそんなことも判らないのか不思議でならなかった。
我らの栄養は陽の光と温かな魔力。
殻の中で微睡んで、その時を待てばいい。
なのに、母は焦って居た。
無理やり我らを外へ出そうとする。
そうして産まれ出た世界は初めから壊れていた。
父竜は我らを優しく抱き上げ大きな城に運んだ。
そして国王に我らを押し付けた。
母親は死んだ。
我ももうすぐ眠りに着く。
子どもたちを大事に扱うように。
名は、竜型をユースローゼ。人型をナーイアウロ。
王女の大切な子どもだ。
それだけを言って大きな翼を広げて魔森へ母の元へ帰って行った。
我らは腫れ物に触るように、扱われた。
特に竜型の我は恐れられナーイアウロを介して話し掛けられた。
会話も出来ぬと思われて居るのか? と声を上げると悲鳴をあげて逃げ出す始末。
だが、我らに初めから臆することなく、接する者たちが居た。
王弟ヤワンルードの子どもの次男ルイードと三男アルバンだ。
「初めまして従姉妹殿」
そう笑顔で、近くまで来たと思うと、アルバンが我を抱き上げた。
「こ、怖くはないのか??」
抱き上げられたその何とも居心地いい腕の中で焦る我に「可愛ねぇ」
と頬擦りして来た。
内心ドギマギし、固まった。
「この子も妖精さんみたいに綺麗だよ」
ルイードがナーイアウロを抱き上げて鼻先と鼻先をくっつけていた。
うふふと笑い受け流しているナーイアウロを尊敬する。
二人共、ナーイアウロと同じ髪色と同じ瞳の色をしている。
それは、母も同じだったのかと想像する。
母の声は覚えている。
だけどこんなふうに抱き締めては貰えなかった。
目にした母の瞼は閉じていた。
あれはもう中身は無い。
最初から最後まで子どもなど見ていなかった。
父の事も本当の意味では見ていなかったのではないかと思う。
「ねぇ、ユースローゼ。僕は貴女が気に入った。だから僕のお嫁さんになってくれない?」
我は生まれて間もない。
ナーイアウロは3歳ほどの姿であるからたまごとして生まれた時点から歳を取って居たのだろう。だから考えるし話せる。
同世代の中ではませているとは思う。
そして、この身は立派な竜だ。
「そなたは幼女趣味か?」
「いいえ。」
「ならば爬虫類が好きなのか?」
「好きでも嫌いでもないなぁ」
「ならば何故こんな姿の我を望む?」
「だって、僕のものだって思ったから。」
とぼけた顔をしたこの男は、母と同じ年だと聞いている20歳か?
「好きになるのに理由なんてあってないものだろう? ただ貴女は僕のものだって感じたから誰にも渡したくない。ならばお嫁さんにするのが一番手っ取り早いだろう?」
出逢った初めから可笑しな奴だと思っていた。
「ねぇ? 可愛いお姫様。僕のものになるのが嫌なら、僕を貴女のものにして?」
そう言って薄っすらと微笑んだ。その切れ長の目の奥に宿る狂喜にすぐに気付いたが、何故か全身が粟立つような快感を覚え、竜らしく吠えてしまった。
そうしてブルリと躰が震えて、ポンッ!と、我の躰が変化した。
尻尾の在る、ナーイアウロと似た人型に。
「これは、了承してくれたと受け取って良いのかな?」
あぁ……この男の声を聞くだけでゾワゾワする。
気持ち悪いのか気持ちいいのか分からない。
そんな風に見つめないで欲しい……
* 少々R表現有
「んう…ン……んぅ」
苦しげに呻く声に意識が覚醒する。
眠って居たのか?
声を辿り、視線を送ると目の前に傅く金の髪の男。
あぁ。
お仕置き途中で寝入ってしまったのか。
涙と鼻水と涎で酷い事になっているアルバンの、口内限界一杯に私の尻尾を捩じ込んでいる。
否、喉の少し奥まで入ってしまったか?
まあ、この程度では死にはしない。
何よりその瞳の奥の恍惚とした光を見て取り、いつも以上に喜ばせてしまったと溜め息を吐く。
この男も懲りない。
何度転生しても着いて来る。
否、先回りして私を見つけ出す。
まあ、仕方ない。
番の証である鱗を、その舌に埋め込まれて居るのだからどこに居ても──どの道王族として繰り返すばかりだから見付けやすいだろうが──何度も毎回、見付けては外堀を埋めて閉じ込めようとする。
何度繰り返しても、ずっと傍で伴侶で在ろうとする。
そしてかまって欲しくて悪戯をする。
それも悪質極まりないものばかり。
それを毎回アウローレンスに擦り付ける。
それに気付いた私に折檻を望むのだ。
何度目か判らない溜め息を吐いて、目の前に傅く男の口から一気に尻尾を抜く。
「うぐぁっーー…」
「大袈裟よの。今度は下の口を目一杯刺し貫いてやろうか? あぁ、違うな。それだとご褒美になってしまうのか?」
アルバンが咳き込みながらも嘴が上がるのを見留める。
「はっ お前は転生する度に変態度が増してゆくな」
ゾクゾクと頭から尻尾の先まで痺れる。
この男はずっと私だけのもの。
ベッドの上から床に座るアルバンの傍に寄り、ベタベタに汚れたくった顎を爪を立てて掴み顔を上げさせる。
薄く開いた切れ長の目は、今も昔も変わらず私だけを映して煌めく。
力の入らないだらしなく開いた口に唇を寄せると、喜んで垂れて来た舌。
長く突き出す舌先に光る鱗に口付ける。
アルバン。
貴方は私の正気を保つ為、自ら壊れてくれた。
転生する回数を重ね、その意味に気付いた時、やっと私は私の安寧を見付けたの。
「愛しい私の番。そなただけは私の味方だと信じられる。そなただけの愛が信じられる。」
全身全霊で示してくれる。
最初の出逢いからずっと。
だから心から願う。
この歪んだ世界を正す事。
それもどうやら今世で叶いそうだ。
ねぇ?
父様母様。
私は私の愛しい人と普通に幸せになりたいの。
ずっと、ずうっと希っているの。
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