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本編
黄金の竜アウローレンス⑤
しおりを挟む問われて素直に「祖の竜を目覚めさせに行く」と宣言し。その前に姉上たちの関係性の確認に来たと簡単に答えた。
改めて姉である目の前の二人をしっかりと見る。
私の言葉に微動だにしない。
「そう……貴方がタマゴで生まれた時、予感はしていたのよ」
ユースローゼ姉上が微笑んだ。
「良かったわ。今回母様は壊れなくてすみそうね」
ナーイアウロ姉上が静かに言った。
「やはり、ユースセリアは祖の王女なのだな?」
私の言葉に二人は少し考えるように見つめ合い、
「どの“生”も貴方は居なかったのに。全てを知っている目をしてるわ。
どこまでを貴方は……あなたたちは知っているの?」
ナーイアウロ姉上が“あなたたち”と一括りにした。
「姉上は解っていて“輪廻”していたのではないのか?」
「漠然としたものだ。
“願い”を叶える為に何度も繰り返す。その為に手を加える事もしなかった。
ただ、見守る。それが最善の策だと予見して……だが、互いの“番”が共に“輪廻”を繰り返していたから耐えられたようなもの」
ただ事実を淡々と話すユースローゼ姉上。
「番?」
共に居る婚約者たち。
「ルイドールとアルバン。現国祖の人側であった王弟の次男ルイードと三男アルバンだ」
確かに初めの国王は祖の王女の娘でその王配は従兄弟で在ったと記録がある。
驚きしかなく。呼ばれた二人は静かに頭を下げた。
今まで見ていた二人とは、明らかに違う雰囲気だ。
先程の殺気立ったアルバン。おどおどとしたいつもの奴とは全く異なっていた。
ルイドール。いつも物静かな金の長髪の美丈夫。面を上げた時、その碧色の瞳に燃え上がる焔を見た。
「して、何故に妖精が共に居る? 竜とは違いその存在は夢物語のような曖昧なものだった筈だ。
だが、“世界樹”が存在する事は事実で、“世界樹”本体が生きる世界に精霊や妖精が隠れているとは言われていた」
「そうね。ルイドールが、“ルイード”が初めから言ってたのよね。“世界樹”が解決の鍵だと」
ユースローゼ姉上とナーイアウロ姉上はどこまで知っているのか。
「確かに世界樹は初めからこの問題に絡んでいる。否、巻き込まれたと言っていい。
姉上方が誕生する切っ掛けを作ったのがユグドラシルだ。
頼まれたから王女に手を貸したんだ」
実際は脅されて。だが、本人も興味からした事だ。
「ここに居る男型の妖精が世界樹本人。
そして後ろに立つ女性騎士ヴァロアは、私アウローレンスの前世の娘。この“世界樹”を祖に持つ血筋の末裔。」
二人の姉上はさすがにそこまでは考えていなかったのか、驚きを隠せない顔をしている。
「ならばそなたも、その魂に流るるは“世界樹の血脈”だと言うのだな?
どうしてそのような者が王家に“転生”して来たのだ?」
生まれ変わり。
初めての体験ではあるが当人である私の持論。“転生”とは、前世を記憶して生まれ変わる事。
“転生輪廻”とは、元の魂をそのまま引き継いで何度も生まれ変わる事。
「私の父が竜の血筋だったのです。」
そして、馬鹿な男の話を包み隠さず告白する。
同時に聖女とウィクルムの話も。
静かに聞き終わった姉上たちは、美麗な顏に大きな笑みを咲かせた。
「ーーーようやっと揃ったと言う事ね? ルイドール」
ナーイアウロ姉上が嬉しそうに伴侶に問う。
「ええ。念願叶いました。」
ルイドールが小さな笑みをこちらに向けた。
「私は未来を見通す力を持っています。」
それは紛れもない真実だと判る。
「ああ……貴方は“神の気紛れ”で加護を授かった人間だね」
それまで静かだったユグが声を上げた。
このユーラシフラン王国は竜と人の子孫から成る国。
他国と大きく異なるのは“神”を信仰していない事。
国名をユーラシフランと定めた時、崇めるのは国救いの王家の祖の黄金の竜と決まっていた。
現在まで、誰もが生まれた時からそう教えられて来た。それは十二分に国民へ浸透している。
要するに、王家の歴代の王が生き神様なのだ。
だから“神”と名の付く者は妖精並に物語の中の架空の存在。
語る事は禁止されてはいない。だが、見えない故に、その存在は曖昧。
神を信仰していた頃、神は気紛れに特定の人間に加護を与える事があった。
そうユグは説明した。
“先見の明”
焔を宿した瞳。
未来を見通す力だと。
「ルイドール。強く美しい魂だ。
それが神の目に留まったのだろう」
何とも不思議な国なのだと、周りが見えて来た今思う事。
エドガーの時はただ流れるままに生きて来た。それは当たり前の営みで、愛しい者が亡くなった時から私の世界は壊れた。
壊れてから解る事。壊れなければ判らなかった事。
全てが居て居ない神に操られているようで恐ろしさを覚えた。
まるで信仰を棄てた者たちへの報復であるような……
「この国はどことも違っているんだよ……竜の血と交わった時から……もう知る者は居ないだろう。ユーラシフラン王国となる前は神を信仰する国だったんだ。故に“神の気紛れ”を与えられた最後の人間なのだろう。
ルイドール。この男の、魂に刻まれた加護が“転生輪廻”を可能としたのだろう。
それと同じ原理でヴァロアとユグドラシルの子孫は世界樹の加護を受けているんだよ。だからエドガーの転生をユグドラシルが行使出来た。
ただ、祖の王女の輪廻は、“呪い”に近い。」
物騒な言葉が出て来た。
「それは、祖の竜アウローレンスが関係しているのか?」
「そうだな。“番の呪縛”と言った方が分かり易いか? そちらの番同士もそう言う理由で共に輪廻転生を繰り返しているんだろう」
「ユグドラシル様。発言をお許し下さい」
深く頭を垂れたユースローゼ姉上がユグの前へ進み出た。
「いいよ。それから、この姿の名は“ユグ”で」
「感謝致します。ユグ様。
私たちの事は恐らくはそうだろうと理解はしておりました。母様は、ユースセリアの輪廻は呪い。それもその通りだと思います。私たちはまるでユースセリアを見守るように輪廻していました。毎回歳上と輪廻していたユースセリアがこの度初めて歳下と生まれ来たのです。それに、アウローレンスの名を持つタマゴと生まれた者も初めて。だから私たちは期待していたのです」
そもそもが、姉上方の輪廻の理由がはっきりとしない。
「私たちの願いは“幸せな普通の営み”愛し愛され生きて行く事」
それは誰もが憧れる生き方。
「愛する人と共に穏やかに暮らす。それさえ初めから皆無でしたから……」
姉上方の、それは心からの願い。それが切々と感じられた。
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